The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S02. Seismometry and monitoring system

[S02] AM-2

Tue. Oct 22, 2024 10:45 AM - 12:15 PM Room D (Medium-sized Conference room 201 (2F))

chairperson:Shuhei Tsuji, Aki Ito(JAMSTEC)

10:45 AM - 11:00 AM

[S02-07] Recent progress of in-situ measurements for seafloor deformation using absolute pressure gauges in the Nankai Trough subduction zone

*Hiroyuki MATSUMOTO1, Eiichiro ARAKI1, Keisuke ARIYOSHI1, Takashi YOKOBIKI1, Shuhei NISHIDA1, Yuya MACHIDA1, Shuhei TSUJI1 (1. JAMSTEC)

海洋研究開発機構(JAMSTEC)では、南海トラフに設置した地震・津波観測監視システム(DONET)や長期孔内観測システム(LTBMS)などにより、地震発生帯での広域海底地殻変動やスロースリップイベント(SSE)を観測して、巨大地震発生までの過程を理解する取り組みを行っている。2023年11月に紀伊水道沖にLTBMSを設置して、2024年1月にDONET2に接続した。海底下500 mの孔内間隙水圧と海底水圧のリアルタイム連続観測を開始した(Araki et al., 2024)。さらに2024年2月には、海底地殻変動の上下成分を計測するために熊野灘に海底圧力計を設置して、DONET1に接続してリアルタイム連続観測を開始した。2024年に観測を開始したLTBMSと地殻変動観測点の呼称はそれぞれ9038Bと1B-S1で、設置場所を図1に示す。すべての圧力計は、水晶振動タイプの絶対圧力計(APG)を採用している。海底への設置前に重錘形圧力天びんで階段型圧力校正と一定圧力を約1ヶ月を目安に加圧して安定性評価(ドリフト評価)を行っている。本研究では、2024年に観測を開始したLBBMSと地殻変動観測点の水圧計の初期観測データをレビューするとともに、室内実験との整合性について考察する。
 C9038Bに設置したLTBMSには、孔内間隙水圧を計測する2式の圧力計と海底の水圧を計測する1式の圧力計が、坑口装置(CORK head)に設置してある(図2)。孔内間隙水圧と海底圧力の観測は、事前の室内実験のドリフト評価にもとづいて圧力計を配置した。LTBMSは、2023年11月に地球深部探査船「ちきゅう」で設置して、2024年1月に無人探査機「ハイパードルフィン」でオンライン化した。LTBMSの観測データはDONETを経由して陸上局へ伝送されており、JAMSTECでアーカイブされている。観測開始直後の2024年1月14日に、孔内を計測している圧力計1式の圧力ポートを孔内から海底に一時的に切り替える操作をして、海底圧力と一致して、海底から孔内に切り替える操作で圧力が戻ることを確認した(図3)。したがって圧力計は、孔内間隙水圧を計測していることを検証できた。孔内間隙水圧は、潮汐応答を補正して海底圧力に対する相対的な圧力変化を監視してSSEの検出に利用している(例えば、Ariyoshi et al., 2021)。熊野灘に設置した3基のLTBMSに比べて、C9038Bは設置からオンライン化までが短期間だったため、圧力計の観測データには初期応答が重畳されている可能性があるが、既設のLTBMSと同等の観測ができていることを確認している。C9038Bの孔内間隙水圧の監視データは、2024年3月から政府の地震調査委員会や気象庁の南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会へ提供している。
 一方、1B-S1に設置した海底圧力計は、海底広域研究船「かいめい」で運用される無人探査機「KM-ROV」で設置して、DONETインターフェースに接続した(図4)。2024年2月4日の設置以降、連続データを取得している。1B-S1の水圧観測記録に潮汐解析プログラムBAYTAP-G(Tamura et al., 1991)を適用して、潮汐成分と非潮汐成分を分離した(図5)。2024年7月までの約6ヶ月間の観測データで、指数関数と線形関数を組み合わせたモデル(Polster et al., 2009)にフィットするようにパラメータを決定すると、現在の非潮汐成分は年間-1.4 cmのレートで動いている結果となった。1B-S1に設置した圧力計は、事前に重錘形圧力天びんで海底に相当する圧力20 MPaを20日間連続加圧して、標準圧力との偏差を計測している。現場観測における設置から20日間の非潮汐成分と室内実験の圧力偏差を比較した(図6)。現場観測の非潮汐成分には海洋変動が含まれるが、概ね指数成分が減衰して線形成分が卓越する2 cm程度低下する変化が観測されている。一方、室内実験では直前に階段型圧力校正を行ったため当初3日程度の観測には履歴が残っていると考えられる。その後の圧力偏差は連続加圧が終了する20日間に2 hPa程度低下している。室内実験では線形成分が卓越していることが観測されたが、圧力変化の振幅は現場観測と室内実験とで調和的であった。