[S02P-06] The quality of data from seismographs and pressure gauges in the N-net offshore system
本発表では、南海トラフ海底地震津波観測網(N-net)において整備が完了した沖合システムの地震計および水圧計のデータ品質について報告する。N-netは、南海トラフ巨大地震の想定震源域の西側において観測空白域となっている高知沖から日向灘沖にかけて2019年より整備が進められており、現在、N-netの半分に当たる沖合システムの整備が完了し、2024年7月より試験運用が開始している。N-netは、沖合システムと沿岸システムの2つのサブシステムから構成され、それぞれ18台の観測装置が光海底ケーブルに数珠つなぎの状態で接続される計画である。観測装置は、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)などと同じくインライン方式を採用しており、地震計(速度計と加速度計)や水圧計などのセンサが、長さ226㎝、直径34㎝の円筒状の金属筐体の中に格納されている。なお、速度計、加速度計、水圧計は、冗長構成のためにそれぞれ2セットずつある。
N-netの地震計は、速度計にGeospace Tecnologies社製Omni2400(固有周期15Hz)、加速度計に日本航空電子工業社製JA-5(計測範囲±5G)を採用し、それらのデータは100Hzサンプリングで収録されている。7月からの試験運用開始後、すべての観測装置においてデータの欠測は確認されておらず、2024年8月8日日向灘の地震(Mj7.1)を含む地震活動(図参照)のデータが取得できており、データに明らかな異常は認められていない。地震計のデータは、パワースペクトル密度関数(PSD)を用いて2セットあるセンサの比較を行った。両者はよく一致しており、3Hz~30Hzの帯域ではコヒーレンスがおおむね0.7を超えていることを確認している。但し、海底下では非常にバックグラウンドノイズレベルが低く、バックグラウンドノイズレベルがランダムなシステムノイズレベルまで下がっている場合には、コヒーレンスの低下がみられる。
今回N-netでは筐体が円筒であるために筐体が回転することを抑制するための回転低減装置を埋設の1観測点(N.NAE18)を除いた17観測点で装備しているが、日向灘の地震の際には回転低減装置を装備した観測点では最大0.01度(速報値)の回転しかなかったのに対して、回転低減装置が装備されていないN.NAE18観測点では1.8度(速報値)の回転が確認された。今後、観測点での揺れ等のデータと照査する必要があるが、回転低減装置が機能して筐体の回転が抑制されたかもしれない。
N-netの水圧計は、津波変動による水圧観測を目的とし、新規開発したシリコン振動式の水圧計を2セット搭載している。この水圧計は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems;微小電子機械システム)技術を用いたセンサを搭載しており、S-netの際の水圧計(ブルドン管方式)で不得意であった地震時の振動や姿勢変動のデータへの影響を軽減し、震動に強い水圧計を実現している。また、水圧センサ保護筐体の新規設計や、海底における水圧を水圧センサに伝達するオイルであるポリブテンの粘度の変更など、圧力伝達系の開発も行った(青井・他、 JpGU2024)。7月からの試験運用開始後、全水圧計センサから連続データが取得できていることに加えて、2組のセンサで時刻歴データに矛盾がないこと、敷設時に得た水深相当の圧力値を示すこと、潮汐の変動をとらえていることを確認した。津波観測に重要な1分~1時間の帯域での水圧計のノイズレベルは0.046~0.14hPa(水深換算で約0.5~1.4mm)である。これらに加えて、長期的に2組の水圧記録のトレンド、ノイズの混入等についてモニタリングを進めている。なお、2024年8月8日日向灘の地震ではサブセンチの津波を捉えることができており、津波変動による水圧観測の実効性が確認できた。なお、この地震における津波データ解析については久保田・他(地震学会秋季大会2024)にて報告される。
N-netの地震計は、速度計にGeospace Tecnologies社製Omni2400(固有周期15Hz)、加速度計に日本航空電子工業社製JA-5(計測範囲±5G)を採用し、それらのデータは100Hzサンプリングで収録されている。7月からの試験運用開始後、すべての観測装置においてデータの欠測は確認されておらず、2024年8月8日日向灘の地震(Mj7.1)を含む地震活動(図参照)のデータが取得できており、データに明らかな異常は認められていない。地震計のデータは、パワースペクトル密度関数(PSD)を用いて2セットあるセンサの比較を行った。両者はよく一致しており、3Hz~30Hzの帯域ではコヒーレンスがおおむね0.7を超えていることを確認している。但し、海底下では非常にバックグラウンドノイズレベルが低く、バックグラウンドノイズレベルがランダムなシステムノイズレベルまで下がっている場合には、コヒーレンスの低下がみられる。
今回N-netでは筐体が円筒であるために筐体が回転することを抑制するための回転低減装置を埋設の1観測点(N.NAE18)を除いた17観測点で装備しているが、日向灘の地震の際には回転低減装置を装備した観測点では最大0.01度(速報値)の回転しかなかったのに対して、回転低減装置が装備されていないN.NAE18観測点では1.8度(速報値)の回転が確認された。今後、観測点での揺れ等のデータと照査する必要があるが、回転低減装置が機能して筐体の回転が抑制されたかもしれない。
N-netの水圧計は、津波変動による水圧観測を目的とし、新規開発したシリコン振動式の水圧計を2セット搭載している。この水圧計は、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems;微小電子機械システム)技術を用いたセンサを搭載しており、S-netの際の水圧計(ブルドン管方式)で不得意であった地震時の振動や姿勢変動のデータへの影響を軽減し、震動に強い水圧計を実現している。また、水圧センサ保護筐体の新規設計や、海底における水圧を水圧センサに伝達するオイルであるポリブテンの粘度の変更など、圧力伝達系の開発も行った(青井・他、 JpGU2024)。7月からの試験運用開始後、全水圧計センサから連続データが取得できていることに加えて、2組のセンサで時刻歴データに矛盾がないこと、敷設時に得た水深相当の圧力値を示すこと、潮汐の変動をとらえていることを確認した。津波観測に重要な1分~1時間の帯域での水圧計のノイズレベルは0.046~0.14hPa(水深換算で約0.5~1.4mm)である。これらに加えて、長期的に2組の水圧記録のトレンド、ノイズの混入等についてモニタリングを進めている。なお、2024年8月8日日向灘の地震ではサブセンチの津波を捉えることができており、津波変動による水圧観測の実効性が確認できた。なお、この地震における津波データ解析については久保田・他(地震学会秋季大会2024)にて報告される。