日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S02. 地震計測・処理システム

[S02P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S02P-05] 大型振動試験装置を用いたDASの強震動応答性の検討

*片上 智史1 (1. (公財)鉄道総合技術研究所 鉄道地震工学研究センター 地震解析)

序章
 多くの地震が鉄道に大きな影響を及ぼしており、その影響は鉄道の一部で運行が制限・停止されるものから、広範囲で極端な被害を受け、脱線するものまで様々ある。比較的規模の小さい地震において、特に都市部では点検に時間を要し、運転再開に多大な時間を要した事例がある(例: 2018年大阪府北部地震(M6.1)、2021年千葉県北西部地震(M5.9))。鉄道の場合、地震発生直後は早期の地震動検知、地震動到達後は早期の沿線の揺れ具合の把握(構造物の被害推定)が重要である。 Distributed Acoustic Sensing(DAS)は、光ファイバーケーブル(以下、光ケーブル)内を進む後方散乱レーザーパルスの位相の変化を利用して、光ケーブルに沿った歪み変化を計測する。本技術は数m毎にデータを計測できるため、鉄道沿線の光ケーブルを用いた高密度強震動観測網を構築することが目的である。本研究では、強震動に対するDASの応答性を評価するため、鉄道総合技術研究所(以下、鉄道総研)が保有する大型振動試験装置を活用し、強震動波形を入力した結果を紹介する。

観測
 鉄道総研が保有する大型振動試験装置は、兵庫県南部地震や新潟県中越地震における鉄道構造物の被害、新幹線の脱線等を踏まえ構築された大型の振動台であり、水平2方向に加振することが可能である。振動台は、7m×5mであり、X軸方向に±1000gal、Y軸方向に±2000gal、周波数は0.1~20Hzで加振することが可能である。本試験では、振動台に直接光ケーブル(パッチコード)を振動台の長手方向(X軸)に養生テープで3~4列接着させ加振波形を記録した。加振した波形は、20~1000galまでの0.2~10Hzの正弦波と、K-netで過去実際に観測された数種類の地震波形を入力した。正弦波はX軸方向のみ、地震波形は両方向に加振した。DASはAP Sensing社とSintela社のものを使用し、AP Sensing社のGLは3.75、Sintela社は0.53 mに設定した。また、振動台にMEMSの加速度センサーを複数設置し、加速度波形との比較を行った。

結果・考察
 本試験において、入力した加振波形の周波数が卓越するひずみ速度波形を観測することができた。振動台と完全固着し剛体として動く場合は、ひずみは観測されないが、本試験では、振動台を構成する物質の微細なひずみ変化、もしくは光ケーブルと振動台のカップリングの不均質性によって生じたみかけ上のひずみ変化を計測していると考えられる。一方、振動台の端部と中央部に接着したパッチコード間で計測されたひずみの値に差があった。これは、加振装置が加振装置が振動台の中央部に一機あるため、加振装置に近い箇所が最もひずみ値が大きくなった可能性が示唆される。また、入力加速度に対するひずみ速度値の推移は、加振周波数によって異なることがわかった。波長とGLの比率は、記録される波形の振幅値に影響を与えることが報告されており(Hubbard et al., 2022)、それらの結果と整合的であった。また、計測に使用した光ケーブルがパッチコードであったため、被覆とファイバー間の緩み等から小さい加速度の際に正確な波形が記録できていない可能性が示唆された。