10:30 AM - 10:45 AM
[S06-06] Configuration of the Philippine Sea plate subducting from the Sagami Trough estimated with three-dimensional seismic velocity structures
1. はじめに
関東地域の下には太平洋・フィリピン海スラブが沈み込み、三重会合点が東京の南東に位置する。陸域には多くの活断層も存在する。防災科学技術研究所(防災科研)の高感度地震観測網(Hi-net)や気象庁、国立大学等の定常観測網のデータや東京大学地震研究所(東大地震研)が設置し防災科研に移管した首都圏地震観測網(MeSO-net) (Hirata et al, 2009)のデータから地震波の到達時刻データを読み取り、トモグラフィー法を適用して三次元地震波速度構造を推定した。
2. データ・手法
解析対象領域は北緯 34~37°、東経138~142°である。データは148,763個の地震から798観測点への6,296,216個のP波、4,463,943個のS波到達時刻である。Zhao et al. (1992)の手法にスムージングと観測点補正値を導入したMatsubara et al. (2004)のトモグラフィー法を用いた。日本全国を対象としたMatsubara et al. (2022)ではグリッド間隔は0.1°、分解能0.2°であったが、本解析ではグリッド間隔は0.05°、分解能は0.1°と精度を目指した。19回のインバージョンで、残差の二乗平均平方根P波で0.405 sから0.139 sへ、S波で0.665 sから0.185 sへ減少した。
3. 結果・議論
沈み込む太平洋・フィリピン海スラブは低速度な海洋地殻と高速度な海洋マントルの組み合わせとしてイメージングされた。東京湾下では深さ20~25km付近にフィリピン海プレートの上面境界が位置する。本解析ではMeSO-netデータを用いることにより、Matsubara et al. (2022)よりも分解能が向上し、さらに相模トラフから沈み込むフィリピン海スラブと陸側のユーラシアプレートの地殻浅部(深さ0~10km)の構造が解明できた。深さ40~60km付近では、フィリピン海プレートの深部では、太平洋プレートと会合する。Uchida et al. (2010)ではフィリピン海プレートは霞ヶ浦の北側まで沈み込んでいると考えられていたが、Ishise et al. (2020)ではフィリピン海プレートは霞ヶ浦の南側までで、霞ヶ浦以北はオホーツクプレートのマントルウェッジの異方性を示すと指摘されている。本解析結果ではフィリピン海プレート最上部の海洋地殻の低速度域の先端に鉛直方向に約30km北東南西方向に幅約20kmの低速度領域が存在する。フィリピン海プレート上面付近の微小地震活動は霞ヶ浦の中ほどで微小地震活動は先の低速度域の南西側までである。Vp/Vsでは海洋地殻では高い値が見られるが、霞ヶ浦下の微小地震域から北東側ではやや高い程度である。フィリピン海プレートの北東端については、トラフから北東側へ沈み込むフィリピン海スラブが北西へ向かって沈み込んでいる場所でもあり、先端の形状を含め、発震機構解等を含めたさらなる解析が必要である。
References
Hirata, N; Sakai, S.; Sato, H.; Satake, K.; Koketsu, K., 2009. An Outline of the Special Project for Earthquake Disaster Mitigation in the Tokyo Metropolitan Area -subproject I: Characterization of the plate structure and source faults in and around the Tokyo Metropolitan area. Bull. Earthq. Res. Inst. 84, 41-56.
Matsubara M.; Hirata, N.; Sato, H.; Sakai, S. 2004. Lower crustal fluid distribution in the northeastern Japan arc revealed by high resolution 3D seismic tomography. Tectonophysics 388, 33-45, doi:10.1016/j.tecto.2004.07.046.
Matsubara, M., T. Ishiyama, T. No, K. Uehira, M. Mochizuki, T. Kanazawa, N. Takahashi, and S. Kamiya, Seismic velocity structure along the Sea of Japan with large events derived from seismic tomography for whole Japanese Islands including reflection survey data and NIED MOWLAS Hi-net and S-net data, Earth, Planets and Space (2022) 74:171, doi:10.1186/s40623-022-01724-0
関東地域の下には太平洋・フィリピン海スラブが沈み込み、三重会合点が東京の南東に位置する。陸域には多くの活断層も存在する。防災科学技術研究所(防災科研)の高感度地震観測網(Hi-net)や気象庁、国立大学等の定常観測網のデータや東京大学地震研究所(東大地震研)が設置し防災科研に移管した首都圏地震観測網(MeSO-net) (Hirata et al, 2009)のデータから地震波の到達時刻データを読み取り、トモグラフィー法を適用して三次元地震波速度構造を推定した。
2. データ・手法
解析対象領域は北緯 34~37°、東経138~142°である。データは148,763個の地震から798観測点への6,296,216個のP波、4,463,943個のS波到達時刻である。Zhao et al. (1992)の手法にスムージングと観測点補正値を導入したMatsubara et al. (2004)のトモグラフィー法を用いた。日本全国を対象としたMatsubara et al. (2022)ではグリッド間隔は0.1°、分解能0.2°であったが、本解析ではグリッド間隔は0.05°、分解能は0.1°と精度を目指した。19回のインバージョンで、残差の二乗平均平方根P波で0.405 sから0.139 sへ、S波で0.665 sから0.185 sへ減少した。
3. 結果・議論
沈み込む太平洋・フィリピン海スラブは低速度な海洋地殻と高速度な海洋マントルの組み合わせとしてイメージングされた。東京湾下では深さ20~25km付近にフィリピン海プレートの上面境界が位置する。本解析ではMeSO-netデータを用いることにより、Matsubara et al. (2022)よりも分解能が向上し、さらに相模トラフから沈み込むフィリピン海スラブと陸側のユーラシアプレートの地殻浅部(深さ0~10km)の構造が解明できた。深さ40~60km付近では、フィリピン海プレートの深部では、太平洋プレートと会合する。Uchida et al. (2010)ではフィリピン海プレートは霞ヶ浦の北側まで沈み込んでいると考えられていたが、Ishise et al. (2020)ではフィリピン海プレートは霞ヶ浦の南側までで、霞ヶ浦以北はオホーツクプレートのマントルウェッジの異方性を示すと指摘されている。本解析結果ではフィリピン海プレート最上部の海洋地殻の低速度域の先端に鉛直方向に約30km北東南西方向に幅約20kmの低速度領域が存在する。フィリピン海プレート上面付近の微小地震活動は霞ヶ浦の中ほどで微小地震活動は先の低速度域の南西側までである。Vp/Vsでは海洋地殻では高い値が見られるが、霞ヶ浦下の微小地震域から北東側ではやや高い程度である。フィリピン海プレートの北東端については、トラフから北東側へ沈み込むフィリピン海スラブが北西へ向かって沈み込んでいる場所でもあり、先端の形状を含め、発震機構解等を含めたさらなる解析が必要である。
References
Hirata, N; Sakai, S.; Sato, H.; Satake, K.; Koketsu, K., 2009. An Outline of the Special Project for Earthquake Disaster Mitigation in the Tokyo Metropolitan Area -subproject I: Characterization of the plate structure and source faults in and around the Tokyo Metropolitan area. Bull. Earthq. Res. Inst. 84, 41-56.
Matsubara M.; Hirata, N.; Sato, H.; Sakai, S. 2004. Lower crustal fluid distribution in the northeastern Japan arc revealed by high resolution 3D seismic tomography. Tectonophysics 388, 33-45, doi:10.1016/j.tecto.2004.07.046.
Matsubara, M., T. Ishiyama, T. No, K. Uehira, M. Mochizuki, T. Kanazawa, N. Takahashi, and S. Kamiya, Seismic velocity structure along the Sea of Japan with large events derived from seismic tomography for whole Japanese Islands including reflection survey data and NIED MOWLAS Hi-net and S-net data, Earth, Planets and Space (2022) 74:171, doi:10.1186/s40623-022-01724-0