[S06P-10] 地震波トモグラフィー解析による霧島火山の3次元速度構造の推定
九州南部に位置する霧島火山は20あまりの火山からなる第四紀の複合火山である。霧島新燃岳では2011年1月に準プリニー式噴火が発生し、2017年から2018年にかけて再びマグマ噴火が発生、また2018年4月には霧島硫黄山で水蒸気噴火が観測されるなど近年活発な火山活動が続いている。霧島火山でのマグマ供給過程を理解するうえで、火山内部の地殻構造を推定することが重要となる。霧島火山ではAizawa et al (2014)により3次元比抵抗構造の推定が行われ、新燃岳の北側に深さ10km付近から浅部にかけて鉛直に伸びるマグマ供給経路を示唆する低比抵抗帯の存在が明らかになった。さらに、Nagaoka (2020)は常時微動を用いた地震波速度トモグラフィーにより新燃岳の下深さ10km付近にマグマ溜りの存在を示唆する低速度域を検出した。また霧島火山南部に位置する御鉢の下深さ25km付近に発生する深部低周波地震活動について、浅部の火山活動に先行して活発化するため火山深部へのマグマ供給を反映していると解釈されている (Kurihara et al., 2019)。しかしながら、火山深部から浅部にかけてのマグマ供給経路については十分に理解がされていない。そこで本研究では自然地震を用いた3次元速度トモグラフィーを実施し、火山内部深さ20km以浅の地震波速度構造の推定を行った。本研究では、2011年1月末から2013年12月末までに霧島火山およびその周辺地域で発生した1666イベントを用いた。該当地域において東京大学地震研究所、九州大学、気象庁、防災科学技術研究所により設置された124点の定常地震観測点データに加えて、同期間に京都大学により霧島火山北部域に設置された9点の機動地震観測点の波形データを使用した。気象庁一元地震カタログおよび気象庁火山地震カタログの発震時刻を基準に、波形記録を切り出し、P波およびS波の到達時刻をPhaseNet (Zhu and Beroza 2019)コードを用いて読み取った。さらに気象庁一元化カタログの手動検測値も使用した。3次元速度構造の推定にはDouble-differenceトモグラフィー法 (Zhang and Thurber, 2003)を用いた。初期構造として三ヶ田 (1996)による霧島火山地域の1次元速度構造を用いた。霧島火山地域で水平方向に4km間隔、深さ20kmまでは鉛直方向に3km間隔のグリットを設定した。推定された速度構造では、新燃岳から硫黄山にかけての領域の下深さ6km~9kmにかけて顕著な低Vpおよび低Vs領域が検出された。この低速度領域の上部は高いVp/Vsを示しておりマグマたまりの存在を反映している可能性がある。また御鉢の下深さ25km付近の深部低周波地震発生域上部から新燃岳直下にかけて低Vpの領域が確認でき、火山深部から浅部へのマグマ供給経路を示唆している可能性がある。今後、別期間の検測データの整備及び解像度の検証を進めていく。
謝辞
本研究では、東京大学地震研究所、京都大学、九州大学、防災科学技術研究所、気象庁の地震観測点のデータを使用しました。気象庁一元一元化震源カタログおよび火山地震カタログを使用しました。本研究はJSPS科研費22K03752及び文部科学省「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」の助成を受けたものです。
謝辞
本研究では、東京大学地震研究所、京都大学、九州大学、防災科学技術研究所、気象庁の地震観測点のデータを使用しました。気象庁一元一元化震源カタログおよび火山地震カタログを使用しました。本研究はJSPS科研費22K03752及び文部科学省「次世代火山研究・人材育成総合プロジェクト」の助成を受けたものです。