1:30 PM - 1:45 PM
[S07-01] Does the thermal structure of the oceanic plate depend on spreading rate?
海洋プレートはプレートテクトニクスにおける最も重要な要素の1つであり、その進化を詳しく知ることは海洋リソスフェア-アセノスフェア境界や沈み込み帯における地震・火山活動などを理解する上で必要不可欠である。半無限体冷却モデルなどに代表されるように、これまで海洋プレートの温度構造は主にその年代に依存することが知られてきた。しかし最近の研究によれば、同じ年代でも海洋プレート毎に系統的な差が見られる。たとえば太平洋では、大西洋に比べてレイリー波の位相速度と海洋底地形がより若いプレート年代で半無限体冷却モデルによる予測からずれ始める。本発表ではその原因の1つとして、マントル構成鉱物の結晶選択配向による熱伝導率の異方性の影響を考えた。つまり海洋プレートの拡大速度が大きいとマントル構成鉱物がよりある特定の方向にそろうように回転し、熱伝導率の異方性が大きくなる。その結果海洋プレートの温度構造は拡大速度に依存するようになる。
この考えを検証するために中央海嶺近傍を対象とした水平方向、鉛直方向ともに600 kmの長さを持つ2次元箱型のモデル領域でマントル流動の数値計算を行った。マントルの変形メカニズムとして転位クリープを仮定した。拡大速度として地表面に1、3、8 cm/yrを与えた。また得られた温度構造は1次元非定常熱伝導方程式を用いることでより古いプレート年代へと外挿した。
その結果拡大速度が1、3、8 cm/yrの場合、熱伝導率が等方的である場合と比較してプレート年代が6千万年のときマントル温度が最大約23、31、39K上昇することが明らかになった。これは拡大速度が大きいほど粘性率が低下し、海洋プレート底部における小規模対流の発生が早くなることを示唆している。上で述べたような太平洋と大西洋の違いは、この考えで説明できる可能性がある。また熱伝導率の異方性が熱流量や海洋底地形に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。
中央海嶺近傍で水がメルトに移動した後のマントル(枯渇マントル)は溶ける前のマントルよりも粘性率が高くなる可能性が指摘されている。それを踏まえて地表面から深さ60 kmまでのマントルの粘性率を高くした場合の計算も行った。枯渇マントルの存在が温度構造へ及ぼす影響は限定的であった一方、予測される地震波速度異方性は大きく変化した。具体的には深さ60 km近傍で方位異方性と鉛直異方性の急な増加が見られ、この特徴はプレート年代にほとんど依存しない。この結果は観測された鉛直異方性やSS先駆波の解析によって得られた不連続面深さと整合的である。
この考えを検証するために中央海嶺近傍を対象とした水平方向、鉛直方向ともに600 kmの長さを持つ2次元箱型のモデル領域でマントル流動の数値計算を行った。マントルの変形メカニズムとして転位クリープを仮定した。拡大速度として地表面に1、3、8 cm/yrを与えた。また得られた温度構造は1次元非定常熱伝導方程式を用いることでより古いプレート年代へと外挿した。
その結果拡大速度が1、3、8 cm/yrの場合、熱伝導率が等方的である場合と比較してプレート年代が6千万年のときマントル温度が最大約23、31、39K上昇することが明らかになった。これは拡大速度が大きいほど粘性率が低下し、海洋プレート底部における小規模対流の発生が早くなることを示唆している。上で述べたような太平洋と大西洋の違いは、この考えで説明できる可能性がある。また熱伝導率の異方性が熱流量や海洋底地形に及ぼす影響は小さいことが明らかになった。
中央海嶺近傍で水がメルトに移動した後のマントル(枯渇マントル)は溶ける前のマントルよりも粘性率が高くなる可能性が指摘されている。それを踏まえて地表面から深さ60 kmまでのマントルの粘性率を高くした場合の計算も行った。枯渇マントルの存在が温度構造へ及ぼす影響は限定的であった一方、予測される地震波速度異方性は大きく変化した。具体的には深さ60 km近傍で方位異方性と鉛直異方性の急な増加が見られ、この特徴はプレート年代にほとんど依存しない。この結果は観測された鉛直異方性やSS先駆波の解析によって得られた不連続面深さと整合的である。