日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

[S07P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S07P-05] Kirchhoff migrationでみる日本海北部域の660km地震波速度不連続周辺の特性

*久家 慶子1 (1. 京都大学大学院理学研究科地球物理学教室)

中国北東部では、レシーバ関数解析から、マントル遷移層底部に660km地震波速度不連続とともに、その下に少なくとももう1つ地震波速度不連続が存在することが示唆されている(Niu and Kawakatsu, JPE 1996; Sun et al., EPSL 2020)。久家(SSJ秋季大会2022, 2023)は、その地域の東方にあたる日本海北部の深さ660 km付近で屈折するP波を調べた結果、サハリン周辺の深発地震に対し日本で観測された地震計のデータにおいて、660km不連続によるP波のtriplicationのあとに、みかけ速度のはやい3つめの地震波の到来をみつけた。この3つめの地震波は、1次元地球モデルiasp91から計算される理論波形には存在せず、観測される場所は、特定の地域に限定されない。3つめの地震波は、アレイ解析による相対スローネスの値から、深部から伝播してきた波と思われる。iasp91の660km不連続面の一部を、もう一つの不連続面として数十km深くにおいた1次元地震波速度モデルを仮定すると、理論波形が3つめの地震波の特徴を説明できるようになることから、観測結果は2つの不連続面の存在と調和的であると、久家(SSJ秋季大会2023)は主張した。

久家(SSJ秋季大会2023)では、1次元モデルから計算した理論地震波形をもとにした議論から、2つの不連続面を主張した。その一方で、660km不連続のtriplicationの後にみつかった3つめの地震波が不連続面由来なのか散乱体由来なのかは自明ではない。そこで、本研究では、660km不連続のtriplicationに後続するP波を主たる対象にして、Kirchhoff migrationを適用することにより、散乱を仮定した場合にえられる結果を調べる。不連続面と散乱体の可能性について議論する。

本解析にはHinet観測網のデータを使用する。サハリンの深発地震からのP波では、距離12-14度において、各々の観測点の波形データでも、3つめの地震波がしばしば確認できる。この距離範囲では、iasp91はほぼ一定のみかけ速度の同じブランチのP波初動の到達を予測し、観測された地震波形を使ってvespagramを作成すると、初動P波にくらべて相対スローネスの小さい660km不連続の屈折P波とともに、さらに小さな相対スローネスをもつ3つめの地震波のエネルギーピークが観測できる。同じ波形データを用いて、3次元に分布する散乱仮想点に対してKirchhoff migration法(例えば、Shearer, 2019; Millet et al., JGR 2019)を適用すると、相対的に大きな値が、3つめのP波の到達時間に類似すると思われるような散乱仮想点でもみられる。

謝辞:本研究では、防災科学技術研究所MOWLAS(Hi-net およびF-net)のデータを使用している。記して感謝する。