日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S07. 地球及び惑星の内部構造と物性

[S07P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S07P-04] 雑微動解析による日本海およびその周辺域の位相速度分布

*手塚 登万1、吉澤 和範1,2、仲田 典弘3,4、西田 究5 (1. 北海道大学理学院自然史科学専攻、2. 北海道大学大学院理学研究院地球惑星科学部門、3. Energy Geosciences Division, Lawrence Berkeley National Laboratory, Berkeley, CA, USA、4. Department of Earth, Atmospheric and Planetary Sciences, Massachusetts Institute of Technology, Cambridge, MA, USA、5. 東京大学地震研究所)

日本海は,主に日本海盆,大和海盆,対馬海盆の3つの海盆とそれらに囲まれる大和堆・北大和堆から構成される.日本海のような背弧海盆の詳細な地震学的構造は,大陸辺縁部でのプレートの沈み込みと,それに伴う背弧拡大プロセスの解明や,日本列島周辺のテクトニクスやマントル内部のダイナミクスを理解する上で重要な情報である.日本海では,海底掘削や物理探査により,様々な調査研究が行われてきた(e.g., Tamaki et al., 1992, Hirata et al., 1989).これらの調査を通じ,日本海盆が海底磁気縞模様を持つ厚さ7km程度の薄い海洋地殻を有すること,大和海盆や対馬海盆では15km程度の厚い地殻を持つことなどが明らかになっている.しかし,複雑な海底磁気縞模様が示唆する日本海の拡大過程や,大和海盆の地殻構造に対する解釈など,未だに議論の余地が多い.近年では,広帯域海底地震計が大和海盆,大和堆,日本海盆等に複数設置され,更なる研究も行われている(e.g., Nakahigashi et al., 2015, Akuhara et al., 2021, Ai et al., 2023).
 日本海の内部では,浅い地震の発生や観測点が限られている.これまでに,日本海全域の上部マントルの地震波速度構造の推定には,ユーラシア大陸内の観測点と日本列島の観測点の2点間を伝播する表面波の解析が用いられている(e.g., Yoshizawa et al., 2010).本研究では,中国北東部に2009-2011にわたって展開された臨時観測網 (NECESSArray: NorthEast China Extended Seismic Array)と,日本の広帯域地震観測網(F-net, 防災科研)の雑微動のCCF (Cross Correlation Function) を用いて,日本海をまたぐ観測点ペアを多数含めて,表面波の位相速度解析を行った.データは,NECESSArrayとF-netの計200点以上の観測点から得られる約20000の観測点ペアに対し,周期20-60秒の帯域のCCF (Nakata & Nishida, 2019) を用いた.それぞれの観測点の3成分のうち,Z成分同士の相関がレイリー波,T成分同士の相関がラブ波にあたる.CCFは,地震による表面波よりも短周期側のレイリー波・ラブ波の情報を得やすく,より浅部の地殻まで含めた構造推定が期待できる.位相速度計測では,CCFのフーリエ変換により抽出した位相に対し,ベッセル関数遠方近似による補正項を考慮している(e.g., Lin et al., 2008).計測した位相速度の分散曲線は,観測点間の距離や波線の通過する領域によってグループ化され,それぞれの平均や閾値から異常値を除去する.これにより,周期20s-40s程度までのレイリー波およびラブ波の位相速度を測定した.表面波の伝播経路は大円で近似し,球面三角グリッド(Wang & Dahlen, 1995) による線形インバージョン法により,中国大陸北東部から日本列島にかけての日本海を含む広域な領域の位相速度分布を得た.
 推定された位相速度分布は,チェッカーボードテストから,約200km以上のスケールの日本海下の水平不均質構造に対し,十分な解像度を持つことが示唆されるが,利用した観測点配置による波線分布の偏りにより,北西-南東方向へのsmearingの影響がみられる.推定された周期20秒前後の位相速度モデルには,特に顕著な高速異常が日本海盆の全域に見られる一方,大陸縁辺部や日本列島に沿って,顕著な低速異常が見られるなど,日本海盆下の海洋リソスフェアや周辺の大陸・島弧内の地殻構造を反映した速度分布が得られた.今後,地震表面波から得られる,より長周期側の表面波位相速度情報と合わせて,S波の鉛直構造へのインバージョンを行うことで,日本海下の地殻〜上部マントルの3次元S波速度構造推定への活用が期待される.