[S07P-03] Polarization Anomaly of Long-period Teleseismic P-waves: Insights into Azimuthal Anisotropy in the Upper Mantle beneath Australia
地球内部の方位異方性は,マントルダイナミクスを解明する上で重要な情報を与えてくれる.一般に,方位異方性の推定には,表面波トモグラフィーやPKS/SKS(XKS)等を用いたS波splitting解析が用いられ,豪州大陸でも多くの研究がなされてきた.大陸の西部と中央北部,中央南部に太古代〜原生代のクラトンを有し,東部に顕生代の造山帯を有する豪州大陸では,それぞれ形成や変形過程に伴うテクトニクスと方位異方性との関連が議論されてきた(e.g., Fishwick et al., 2008, Tectonics; Ba et al., 2023, JGR; Eakin et al., 2023, G-cubed; de Laat et al., 2023, GJI).本研究では,表面波やXKS波の分裂とは独立な,遠地P波の粒子軌跡の偏向情報から豪州大陸下の方位異方性の解析を行った.
遠地実体波の伝播経路の大部分は,水平不均質が比較的小さい下部マントル深部を通過する.そのため,レシーバ関数やXKS splitting解析のように,観測点下の地震波速度構造の不均質や異方性を調べる上で有効である.本研究では,Mw 5.5–7.5,震央距離30°–90°の豪州大陸の定常観測点で観測された遠地P波の3成分変位波形(0.03–0.1 Hz)を使用し,Vidale (1986, BSSA)の偏向解析法を適用することで,多数のイベント波形のP波粒子軌跡からその偏向方向を推定した.その結果を基に,まず,豪州大陸の定常観測点の水平成分の設置方位角を決定し,その補正を加えた上で,P波の水平到来方向の偏差(大円経路からのずれ)を計測した.異方性推定には,Harmonic解析(Schulte-Pelkum et al., 2001, JGR; Fontaine et al., 2009, JGR)を使用した.到来方向偏差δφは,θを観測点から見た震源方位,境界面傾斜を含む横方向不均質の効果を1θ,方位異方性の効果を2θとすると,δφ=A1sinθ+A2cosθ+A3sin2θ+A4cos2θと表現できる.本研究では,震源方位角20°毎での偏向情報の中央値と理論値とのL2ノルムをベイズ最適化により最小化することでA1–A4の4パラメータを推定し,P波の高速方向(arctan(A3/A4)/2+π/4)を求めた.
得られた方位異方性分布は,西豪州クラトンや北豪州クラトン,大陸東縁部の多くの観測点で,プレートの絶対運動方向(APM; 豪州では北東方向に7cm/yr)と概ね調和的であった.南豪州クラトンの観測点はAPMとは調和的ではない一方,XKS splitting解析の結果(e.g., Ba et al., 2023; JGR; Eakin et al., 2023, G-cubed)とよい一致を示しており,上部マントル内部の異方性を反映していると考えられる.しかし,豪州の観測点で使用可能な遠地P波の震源は,大陸北西側のインドネシア付近から大陸東方沖のトンガ-ケルマディック海溝付近に限られ,震源分布の偏りによるバイアスが解析結果に影響している可能性がある.更なる結果の検証には,合成データを用いた解像度試験に加え,リソスフェア・アセノスフェア境界の空間分布との対応関係やRadial/Transverse成分の方位依存レシーバ関数との比較等が有効と考えられる.
遠地実体波の伝播経路の大部分は,水平不均質が比較的小さい下部マントル深部を通過する.そのため,レシーバ関数やXKS splitting解析のように,観測点下の地震波速度構造の不均質や異方性を調べる上で有効である.本研究では,Mw 5.5–7.5,震央距離30°–90°の豪州大陸の定常観測点で観測された遠地P波の3成分変位波形(0.03–0.1 Hz)を使用し,Vidale (1986, BSSA)の偏向解析法を適用することで,多数のイベント波形のP波粒子軌跡からその偏向方向を推定した.その結果を基に,まず,豪州大陸の定常観測点の水平成分の設置方位角を決定し,その補正を加えた上で,P波の水平到来方向の偏差(大円経路からのずれ)を計測した.異方性推定には,Harmonic解析(Schulte-Pelkum et al., 2001, JGR; Fontaine et al., 2009, JGR)を使用した.到来方向偏差δφは,θを観測点から見た震源方位,境界面傾斜を含む横方向不均質の効果を1θ,方位異方性の効果を2θとすると,δφ=A1sinθ+A2cosθ+A3sin2θ+A4cos2θと表現できる.本研究では,震源方位角20°毎での偏向情報の中央値と理論値とのL2ノルムをベイズ最適化により最小化することでA1–A4の4パラメータを推定し,P波の高速方向(arctan(A3/A4)/2+π/4)を求めた.
得られた方位異方性分布は,西豪州クラトンや北豪州クラトン,大陸東縁部の多くの観測点で,プレートの絶対運動方向(APM; 豪州では北東方向に7cm/yr)と概ね調和的であった.南豪州クラトンの観測点はAPMとは調和的ではない一方,XKS splitting解析の結果(e.g., Ba et al., 2023; JGR; Eakin et al., 2023, G-cubed)とよい一致を示しており,上部マントル内部の異方性を反映していると考えられる.しかし,豪州の観測点で使用可能な遠地P波の震源は,大陸北西側のインドネシア付近から大陸東方沖のトンガ-ケルマディック海溝付近に限られ,震源分布の偏りによるバイアスが解析結果に影響している可能性がある.更なる結果の検証には,合成データを用いた解像度試験に加え,リソスフェア・アセノスフェア境界の空間分布との対応関係やRadial/Transverse成分の方位依存レシーバ関数との比較等が有効と考えられる.