The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] AM-1

Wed. Oct 23, 2024 9:00 AM - 10:30 AM Room B (Medium-sized Conference room 301 (3F))

chairperson:Kurama OKUBO(NIED), Daisuke Sato(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

10:00 AM - 10:15 AM

[S08-12] Apparent scale dependence of frictional property of metagabbro gouge due to stress heterogeneity on a laboratory fault

*Futoshi Yamashita1, Kazuo Mizoguchi2, Eiichi Fukuyama3,1, Sachiko Iizuka4 (1. NIED, 2. CRIEPI, 3. Graduate School of Engineering, Kyoto University, 4. CERES Inc.)

地震の数値モデリングをおこなう上で岩石の摩擦特性は不可欠な情報であるが,実験室スケールの岩石試料で得られる摩擦特性を大きなスケールギャップのある実大断層に直接適用できるかはまだ議論が続いている.定常摩擦係数に関しては,メートルスケール試料を用いた摩擦実験やそれに基づく解析を通じ,断層面で自発的に成長する応力不均質が原因となり,摩擦係数の急減する臨界すべり速度が断層スケールに依存すると指摘されている(Yamashita et al., 2015, Nature; Noda, 2023, EPS).速度-状態依存摩擦則(以下,RSF)のパラメタについても,変はんれい岩粉末を挟んだセンチメートルスケール模擬断層(長さ10 cm×幅5 cm)とメートルスケール模擬断層(長さ1.5 m×幅0.1 m)において,共通の条件(垂直応力:3.4および6.7 MPa,初期層厚:3 mm)で実施した速度ステップ実験から推定されたDcが,それぞれ9.9±4.9 µmおよび23.9±10.2 µmと,断層スケールとともに大きくなる傾向が示されている(Yamashita et al., 2022, JpGU meeting).さらにこの先行研究では,局所ひずみの測定により,メートルスケール断層面上に応力不均質が存在すると指摘されている.そこで,この応力不均質が断層スケールによるDcの違いを生んでいる可能性を考慮して,追加のセンチメートルスケール実験を実施し検討をおこなった.

追加実験で使用した試験機は電力中央研究所が所有する二軸摩擦試験機(Mizoguchi et al., 2021, EPS)であり,先行研究のセンチメートルスケール実験で使用されたものと同一である.また,模擬ガウジも同様に変はんれい岩を粉砕したもの(平均粒径12 µm,最大粒径75 µm)を使用し,初期層厚を3 mmとした.平均の垂直応力を3.4および6.7 MPaに設定した断層面上に応力集中が存在した場合を想定し,10および20 MPaの垂直応力を載荷して0.1-1.0-10.0-100.0 µm/s間で速度ステップ変化を与えた.さらにその応答がSlip law (Ruina, 1983, JGR)に従うと仮定し,Skarbek and Savage (2019, Geosphere)によるプログラムを利用してRSFパラメタを推定した.その結果,10および20 MPaの垂直応力でのDcはそれぞれ17.4±7.7 µm,22.4±8.4 µmとなり,垂直応力が大きくなるにつれDcも大きくなる傾向が確認された.一方,他の摩擦パラメタaおよびbは垂直応力が3.4および6.7 MPaにおける値とほぼ同等であった.

次に,断層面上で垂直応力が空間的に不均質であり,それに応じてDcも不均質な状態で速度ステップ変化が与えられた際の巨視的な応答を簡単な数値計算で確認した.Urata et al. (2017, PAGEOPH)を参考にしてメートルスケール実験を想定したバネ-ブロックモデルを構築し,ブロックの摩擦がRSFのSlip lawに従うと仮定した.ただしブロック部は高応力と低応力の領域から構成され,両者の支える力の合計が巨視的な力に等しいと考えた.高応力領域は断層の3分の1を占めると仮定し,巨視的な垂直応力が6.7 MPaの場合に高応力領域の垂直応力(σH)が10, 15, 20 MPaとなる3つのパターンで計算をおこなった.a, bは垂直応力に寄らず,それぞれ0.0051,0.0063で一定とした.また,高応力領域のDcは垂直応力に対し線形に増加すると仮定し,垂直応力が6.7, 10, 20 MPaでのセンチメートル実験のDcから求めた線形関係を用いて各垂直応力でのDcを設定した.計算の結果,σHが大きくなるにつれ巨視的なDcが高応力領域のDcに近づいていき,σHが20 MPaの条件では巨視的なDcは高応力領域のDcとほぼ一致した.これらのことから,メートルスケール実験で推定された大きなDcは,断層面上に高応力領域が生じていたことと,変はんれい岩ガウジのDcが垂直応力に対し正の依存性を持つことから引き起こされていたと考えられる.

メートルスケールの速度ステップ実験で観察された断層面上の応力不均質は,散布した模擬ガウジの量が空間的に不均質であったことに由来する大きなスケールの摩擦実験に特有なものである可能性が高い.一方で,メートルスケール実験で400 mmまでの長距離変位を与えた際に,応力分布が一度均質化した後,すべりとともに再度不均質化する様子が確認されていることから,自然界においても断層すべりにともなう応力の不均質化が発生し,それにより巨視的なDcが変化する可能性がある.