9:45 AM - 10:00 AM
[S08-11] Effect of friction on the formation of faults in a dynamical system
剪断集中帯がどのような地質にどのような外的条件が加わったときに形成されるのか、また形成された複数の剪断面がどのように相互作用して時間発展するのかは未解決の興味深い問題である。しかし、実際の断層面は地下深くに形成され粉体や液体を含んだ複雑な構造を持つため、直接観察することや断層を模擬した実験を行うことは難しい。また断層面のすべり挙動を調べる室内実験や発生する地震の規模の分布を力学モデルで再現する先行研究では、多くの場合あらかじめ1つの断層面を想定している。そこで本研究では、図1のようにすべり面を複数もち、岩盤をせん断変形に対するバネ要素として単純化した力学モデルを作成し数値シミュレーションで調べることにより、断層構造の発達について理論的に研究した。各隣接要素の間のすべり面には、速度に依存する摩擦法則を設定し、図2a)に示す速度状態依存摩擦法則が働く場合と図2b)に示す速度に対してより急激に摩擦力が小さくなる動的弱化則が働く場合の2つを適用した。本発表では、異なる摩擦則から得られた数値計算の結果と力学的解析の結果を比較することで、摩擦則の性質がすべり挙動や剪断集中帯の形成にもたらす効果を報告したい。
このモデルでは、2つの無次元パラメータによりすべり挙動やすべり面の発達過程が決まる。1つは岩盤の剛性率に対する垂直抗力の比から決まるパラメータであり、もう一つは系に与えられたせん断変形速度で決まるパラメータである。数値計算の結果、2つのパラメータの値により、すべり挙動に定性的に異なるいくつかのパターンを発見した。
どちらの摩擦則でも、すべり速度も垂直抗力も小さい場合には全時空間で速いすべりは発生せず一様な変形(クリープ)のみが起きる。これは一様定常解に対応し、線形安定性解析から摩擦則が速度強化的である範囲でのみ線形安定である。すべり速度または垂直抗力が大きくなると、一様定常解は不安定になり、図3に示すような定性的に異なるいくつかのすべりパターンが現れる。図3a)に示す剪断集中帯の形成に対応していると考えられる局所的なすべり面が発達するパターンは、どちらの摩擦則の場合もすべり速度が大きいときに現れた。この場合の各すべり面のすべり速度の時間変化を図4に示す。高速すべりするすべり面で競合が起こり、高速すべりする面が選択される。このような競合プロセスを複数回くり返すことで高速すべり面が次第に少数になり、局所的なすべり面が発達する。一方、一様定常解との境界付近でかつ剛性率が小さいと、摩擦則に依らず、図3b)のように全てのすべり面で短時間の高速すべりが生じ、局所的なすべり面が発達しない。
一方、摩擦則によって異なる傾向やすべりパターンも見られた。速度状態依存摩擦法則を適用した場合は、動的弱化則を適用した場合と比べて局所的なすべり面が発達しやすい。その中でも、図3c)に示す主なすべり面と副次的なすべり面が発達するパターンは速度状態依存摩擦法則を適用した場合にのみ現れた。実際の断層でも複数の断層が近接して平行に存在していることがあり、このパターンは主な剪断集中帯とそれに平行する副次的な剪断集中帯の形成に対応していると考えられる。
さらに、実際の断層帯の状況を想定して2つの無次元パラメータの典型的な値を見積もってみると、すべり速度に依ってすべり面が局在するかしないかが切り替わるパラメータ領域に対応していることがわかった。以上の結果は、各すべり面の摩擦特性がすべり面や断層構造の発達に寄与し、実際の断層でもすべり速度に応じて定性的に異なるすべり挙動が生じることを示唆している。
このモデルでは、2つの無次元パラメータによりすべり挙動やすべり面の発達過程が決まる。1つは岩盤の剛性率に対する垂直抗力の比から決まるパラメータであり、もう一つは系に与えられたせん断変形速度で決まるパラメータである。数値計算の結果、2つのパラメータの値により、すべり挙動に定性的に異なるいくつかのパターンを発見した。
どちらの摩擦則でも、すべり速度も垂直抗力も小さい場合には全時空間で速いすべりは発生せず一様な変形(クリープ)のみが起きる。これは一様定常解に対応し、線形安定性解析から摩擦則が速度強化的である範囲でのみ線形安定である。すべり速度または垂直抗力が大きくなると、一様定常解は不安定になり、図3に示すような定性的に異なるいくつかのすべりパターンが現れる。図3a)に示す剪断集中帯の形成に対応していると考えられる局所的なすべり面が発達するパターンは、どちらの摩擦則の場合もすべり速度が大きいときに現れた。この場合の各すべり面のすべり速度の時間変化を図4に示す。高速すべりするすべり面で競合が起こり、高速すべりする面が選択される。このような競合プロセスを複数回くり返すことで高速すべり面が次第に少数になり、局所的なすべり面が発達する。一方、一様定常解との境界付近でかつ剛性率が小さいと、摩擦則に依らず、図3b)のように全てのすべり面で短時間の高速すべりが生じ、局所的なすべり面が発達しない。
一方、摩擦則によって異なる傾向やすべりパターンも見られた。速度状態依存摩擦法則を適用した場合は、動的弱化則を適用した場合と比べて局所的なすべり面が発達しやすい。その中でも、図3c)に示す主なすべり面と副次的なすべり面が発達するパターンは速度状態依存摩擦法則を適用した場合にのみ現れた。実際の断層でも複数の断層が近接して平行に存在していることがあり、このパターンは主な剪断集中帯とそれに平行する副次的な剪断集中帯の形成に対応していると考えられる。
さらに、実際の断層帯の状況を想定して2つの無次元パラメータの典型的な値を見積もってみると、すべり速度に依ってすべり面が局在するかしないかが切り替わるパラメータ領域に対応していることがわかった。以上の結果は、各すべり面の摩擦特性がすべり面や断層構造の発達に寄与し、実際の断層でもすべり速度に応じて定性的に異なるすべり挙動が生じることを示唆している。