The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] AM-1

Wed. Oct 23, 2024 9:00 AM - 10:30 AM Room B (Medium-sized Conference room 301 (3F))

chairperson:Kurama OKUBO(NIED), Daisuke Sato(Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)

9:30 AM - 9:45 AM

[S08-10] Segmentation of slow slip events on planar uniform faults controlled by their relative strength to the surroundings

*Kento Nishikiori1,2, Makiko Ohtani1, Kazuro Hirahara3,4 (1. Kyoto University, 2. Kyoritsu Electric Corporation, 3. Institute of Education, Research and Regional Cooperation for Crisis Management Shikoku at Kagawa University, 4. RIKEN Center for Advanced Intelligence Project (AIP))

スロースリップイベント (SSE)はプレート境界面で発生するゆっくりとした不安定すべりである。SSEは世界各地の沈み込み帯で観測されており、走向方向に複数のセグメントに分かれて発生している。各セグメントでは再来間隔、すべり量等の異なるSSEが発生し、セグメント間をまたぐSSE伝播が見られる (Takagi et al., 2019)。
 実際に観測されているセグメント境界が時空間的に変化しない「持続的な」SSEセグメンテーションの要因として、これまで走向方向の不均質性が考えられてきた。例えば有効法線応力 (Liu, 2014)、プレート収束速度、SSE発生域の幅 (Perez-Silva et al., 2022)等の不均質性である。一方、これらの不均質性を排した一様平面断層モデルでも、自発的に応力の不均質が生じることでSSEセグメンテーションが発生することが知られている。自発的SSEセグメンテーションは、その境界が現れたり消えたりする場合 (Liu, 2014; Li et al., 2018)と、持続する場合 (大畠, 2023)が報告されている。我々は、自発的SSEセグメント境界の持続性の違いが、速度弱化 (VW)域と周囲の速度強化 (VS)域の「強度」 (Luo & Ampuero, 2018)のコントラストに起因することを見出した。本研究ではVW・VS域の強度比に着目し、走向方向に長い一様なVW域で発生するSSEセグメンテーションの性質を系統的に調べる数値実験を行った。
 本研究では、全無限均質等方弾性体中に埋め込まれた平面断層を設定する。この断層は一様なVS域に囲まれた、走向方向に長い一様なVW域をもつ (図a)。摩擦力は速度状態依存摩擦則、状態変数の発展則はAging則に従うとする (Dieterich, 1979; Ruina, 1983)。VW・VS域で摩擦パラメタa, bの差の絶対値|a-b|とdcを同じ値に揃え、VW域の有効法線応力σvwを5 MPaに固定した上で、VS域の有効法線応力σvsのみを変化させた。強度をσeff|a-b|(σeffは有効法線応力)と定義する (Luo & Ampuero, 2018)と、上記の設定ではσvwvsがVW/VS域の強度比となる。
 図b, c, dに、断層中心を通る走向方向に沿った直線 (図aの黄線)上のすべり速度の時間発展を示す。大畠 (2023)と同様に、VW・VS域の強度を同程度 (σvw≃σvs)に設定すると、持続的なSSEセグメンテーションが形成された (図b)。強度比が小さくなるとSSEのピーク速度は小さくなり、遂にはVW域を含めた断層全体が安定すべりとなってSSEが発生しなくなった (図c)。更に強度比が小さくなると、再びVW域でSSEが発生するようになった (図d)。つまり、すべり様式は強度比に関して非単調に変化する。Luo & Ampuero (2018)において、VW域のすべりの安定性は、VW域の摩擦特性だけでなく、VW域に隣接するVS域との強度比にも大きく依存することが指摘されている。モデル設定や可変パラメタ等が異なるものの、本研究の結果はLuo & Ampuero (2018)の結果と調和的である。
 VW/VS強度比~1で現れる持続的なSSEのセグメンテーション様式は、大畠 (2023)で見られたものと同様である (図b)。一方、強度比が小さい場合のSSEのセグメンテーション様式は強度比~1の場合のそれとは対照的で、セグメント境界の位置が時間的に変化し、出現したり消滅したりする (図d)。これはLiu (2014)やArnulf et al. (2021)で見られたセグメント境界の性質と一致する。本研究では、VW/VS強度比が同程度である場合にのみ持続的なセグメンテーションが現れることを明らかにした。強度比が同程度の場合にはSSEがVW域からVS域へ染み出し、強度比が小さくなるとSSEはVW域に留まることが観測された。これが自発的で永続的なセグメンテーションを生み出している要因と考えられるが、そのメカニズムの解明のために更なる研究が必要である。
 σvw≃σvsの場合に見られる自発的セグメンテーションは、持続的なセグメンテーション要因の新たな候補となる。その性質について述べる。第一に、セグメントのサイズがVW域の一様な摩擦特性を反映する。大畠 (2023)は、セグメントのサイズが概ね震源核形成サイズh* (Ruina, 1983; Rice, 1993)に比例すると主張した。本研究で追試したところ、かなりのばらつきがあるものの、この主張を支持する結果を得た。第二に、応力擾乱によってセグメントの個数が変化する。不均質性によるセグメンテーションと異なり、自発的なセグメンテーションは複数の安定状態をもち、例えば巨大地震による応力擾乱によりセグメント境界が変化するといった現象が起こるだろう。