The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room A

Regular session » S08. Earthquake physics

[S08] AM-2

Wed. Oct 23, 2024 10:45 AM - 12:15 PM Room A (International Conference Hall (4F))

chairperson:Kenichi Tsuda(Institute of Technology, Shimizu corporation), Keisuke Ariyoshi(JAMSTEC)

11:15 AM - 11:30 AM

[S08-16] A physical explanation for an unusually long-duration slow slip event in the Nankai Trough

*Keisuke Ariyoshi1, Akira Nagano1, Takuya Hasegawa2, Iinuma Takeshi1, Masaru Nakano1, Demian Saffer3, Hiroyuki Matsumoto1, Shuichiro Yada1, Eiichiro Araki1, Narumi Takahashi4, Takane Hori1, Shuichi Kodaira1 (1. JAMSTEC, 2. Japan Meteorological Agency, 3. University of Texas, Austin, 4. NIED)

1944年東南海地震の震源域直上に設置された地震・津波観測監視システム(DONET)と長期孔内観測(LTBMS)により、海溝型巨大地震の浅部延長線上でスロースリップイベント (SSE) が繰り返し発生していることが明らかになった。しかし、(A)2012年2月のSSEの継続時間は、同程度のマグニチュードのSSEの予想よりも長かったこと、(B)掘削作業期間に伴う外部擾乱により2012年2月と12月のSSE間の断層すべり空間分布の関係が不明瞭、という2つの未解決問題が残されていた。これらの疑問を明らかにするために、SSEに関連する間隙水圧・海底水圧データを再分析した。その結果、2月のSSEは他のSSEに比べて伝播速度が遅く、継続時間が長かったが、12月のSSEは他のSSEと同程度であった。この期間と伝播速度の違いは、それぞれ外部応力擾乱と内部応力擾乱に関係していると解釈される。海洋モデルJCOPE(Japan Coastal Ocean Predictability Experiment)を用いると、黒潮蛇行の通過による海底圧力の低下と上昇が、2月のSSEの長周期化の後半と終息にそれぞれ一致することが確認された。このことは、黒潮蛇行がSSEの継続期間に影響を与えている可能性を示唆している。また,我々の改良した断層モデルは,2月のSSE発生前にはせん断応力の蓄積量が小さく,これが速度・状態依存の摩擦則に基づくゆっくりとした地震すべり伝播の引き金となったことを示している。これらの結果は、SSEの多様性について、断層セグメント間の相互作用だけでなく、海洋現象に起因する外力による応力擾乱の観点からも考慮する必要があることを示唆している。

参考文献
Ariyoshi et al. (2024) Physical understanding of a slow slip event longer than expected around the Nankai Trough, Tectonophysics, vol. 887, 230439. https://doi.org/10.1016/j.tecto.2024.230439