2:30 PM - 2:45 PM
[S08-24] Emergence of Self-Organized Criticality and Phase Transition in the Olami-Feder-Christensen Model with a Single Defect
自己組織化臨界現象(SOC)は物理学, 地球惑星科学, 生物学, さらには社会科学において, 複雑系における挙動を理解するために提唱されている重要な概念である. Bak, Tang, Wiesenfeldが”SOC”という概念を提唱し(Bak et al. 1987), 地震がこの代表的な例であることを示した(Bak et al. 1989). SOCの概念は制御パラメータを外部から調整することなく, システムが臨界状態に向かって自発的に進化するというものである. さらに, この状態にある系の空間や時間の物理量はべき乗則に従うことが知られている. 実際に地震はいくつかのべき乗則を示す. 最も代表的なものはGutenberg-Richter則であり, 地震のサイズ頻度分布は放出されるエネルギーに対してべき乗則に従うことを主張する.
このGR則を再現するモデルとして提案されたモデルがOlami-Feder-Christensen(OFC)モデルである(Olami et al. 1992). OFCモデルはBurridge-Knopoffのバネブロックモデルを単純化したもので, 隣接するサイト間を破壊が伝播するセル・オートマトンモデルとして実装されている. OFCモデルでは境界条件がSOCの発現に重要な役割を果たす. これまでの研究により, openもしくはfreeの境界条件の場合にのみSOCが発現し, 周期的境界条件を課した場合にはSOCは発現しないことが明らかにされている(Socolar 1993, Grassberger 1994). これはopenもしくはfreeの境界条件によってシステムに不均質性が導入されているためであるとされている(Grassberger 1994). その後, SOC発現の根源的な起源を理解するために, 境界条件や不均質性を変更した様々なモデルが提案されてきたが, その統一的な理解は未だ得られていない.
OFCモデルは2次元正方格子のそれぞれのサイトにエネルギーが割り当てられている系であり, 瞬間的な緩和(toppling)と相対的に遅く均一なエネルギーの増加(loading)によって駆動される. それぞれのサイトではtopplingの度に分配ルールに従いエネルギーの散逸が発生する. 分配ルールには陽に示されていないが, 系の境界ではopen BCsもしくはfree BCsの効果により内部より強い散逸が起こっている. そして, この境界からクラスターが生成され(Middleton and Tang 1995), 系全体が自発的にSOCの状態へと移行する(Hergarten and Krenn 2011). 我々はSOC発現のより根源的な条件を明らかにするために, 最も単純な不均質性”Defect”を, 周期的境界条件のOFCモデルに導入する. すなわち, Defectが無ければ完全に均質な系となり, SOCを示さない. Defectは系のただ1つのサイトにのみ導入され, Defectからその再隣接サイトへの分配をバルクのそれと比べ小さくできるサイトである. すなわち, Defectではバルクよりも強いエネルギー散逸が発生し, その強さも調整できるということである.
Defectモデルを解析した結果, 散逸が強ければSOCになり, 散逸が弱いとSOCにならないことが明らかになった. そして, SOCの状態からほんのわずかに散逸が大きくなると, いくつかの状態が繰り返される, リミットサイクルを特徴とする新しい”秩序相”に転移することが新たに見出された. また, Defectの数を増やすとSOCの状態は徐々に壊れていくことが確かめられた. Defectモデルを用いることにより, SOC発現の条件が明らかになり, SOCからの新たな相転移が見出された. わずかなエネルギー散逸の違いがSOCと秩序相発現をコントロールするという本研究の発見は, 今後SOC発現の根源的な理解に重要な手掛かりを与えるであろう.
このGR則を再現するモデルとして提案されたモデルがOlami-Feder-Christensen(OFC)モデルである(Olami et al. 1992). OFCモデルはBurridge-Knopoffのバネブロックモデルを単純化したもので, 隣接するサイト間を破壊が伝播するセル・オートマトンモデルとして実装されている. OFCモデルでは境界条件がSOCの発現に重要な役割を果たす. これまでの研究により, openもしくはfreeの境界条件の場合にのみSOCが発現し, 周期的境界条件を課した場合にはSOCは発現しないことが明らかにされている(Socolar 1993, Grassberger 1994). これはopenもしくはfreeの境界条件によってシステムに不均質性が導入されているためであるとされている(Grassberger 1994). その後, SOC発現の根源的な起源を理解するために, 境界条件や不均質性を変更した様々なモデルが提案されてきたが, その統一的な理解は未だ得られていない.
OFCモデルは2次元正方格子のそれぞれのサイトにエネルギーが割り当てられている系であり, 瞬間的な緩和(toppling)と相対的に遅く均一なエネルギーの増加(loading)によって駆動される. それぞれのサイトではtopplingの度に分配ルールに従いエネルギーの散逸が発生する. 分配ルールには陽に示されていないが, 系の境界ではopen BCsもしくはfree BCsの効果により内部より強い散逸が起こっている. そして, この境界からクラスターが生成され(Middleton and Tang 1995), 系全体が自発的にSOCの状態へと移行する(Hergarten and Krenn 2011). 我々はSOC発現のより根源的な条件を明らかにするために, 最も単純な不均質性”Defect”を, 周期的境界条件のOFCモデルに導入する. すなわち, Defectが無ければ完全に均質な系となり, SOCを示さない. Defectは系のただ1つのサイトにのみ導入され, Defectからその再隣接サイトへの分配をバルクのそれと比べ小さくできるサイトである. すなわち, Defectではバルクよりも強いエネルギー散逸が発生し, その強さも調整できるということである.
Defectモデルを解析した結果, 散逸が強ければSOCになり, 散逸が弱いとSOCにならないことが明らかになった. そして, SOCの状態からほんのわずかに散逸が大きくなると, いくつかの状態が繰り返される, リミットサイクルを特徴とする新しい”秩序相”に転移することが新たに見出された. また, Defectの数を増やすとSOCの状態は徐々に壊れていくことが確かめられた. Defectモデルを用いることにより, SOC発現の条件が明らかになり, SOCからの新たな相転移が見出された. わずかなエネルギー散逸の違いがSOCと秩序相発現をコントロールするという本研究の発見は, 今後SOC発現の根源的な理解に重要な手掛かりを与えるであろう.