2:45 PM - 3:00 PM
[S08-25] Recurrence of large earthquake using multiscale circular patch model in quasi-dynamic simulation of earthquake generation cycle
【はじめに】本研究では、地震サイクルを通した大地震発生過程を理解するために、日本海溝沿いの三陸沖で発生する幅広いマグニチュードの地震に、マルチスケール円形パッチモデル [Ide and Aochi, 2005; Aochi and Ide, 2009; Ide and Aochi, 2013]を適用して、準動的な地震発生サイクルシミュレーションを行った。
【手法】マルチスケール円形パッチモデルは、Ide and Aochi [2013]では、2011年東北地方太平洋沖地震の複雑な動的破壊過程を説明するために用いられたものを参考にした。彼らは、気象庁カタログを基に、過去に発生したM>6.5の地震を規模別にグループ分けし、各グループの地震の震源域を同じ半径の円で近似した。各地震の震源位置に配置した円形パッチでは、すべり弱化距離Dcを円の半径に比例して変化させることで、空間的に不均質な階層構造を与えていた。本研究では、Ide and Aochi [2013]でモデル化した地震のうち、三陸沖にのみ着目する。従って、最大規模の地震は、1896年明治三陸地震 (M = 8)である。2番目に大きな規模のグループは、Mj = 7.1~7.6の6地震、3番目はMj = 6.6~7.2の9地震である。さらに、気象庁カタログから、1923年1月~2023年3月に発生した、震源深さ60 km以浅・Mj = 5.6~6.5の362地震を、4番目のグループとして追加した。これらの地震の震央には、グループ1・2・3・4でそれぞれ半径80・40・20・10 kmの円形パッチを配置するが、本研究では、ほぼ同じ場所で同規模の地震が繰り返し発生しているという仮定の下、グループ2の地震を3つに減らした。またグループ4の地震は、近くで発生しているものをまとめて28パッチを配置した。地震発生サイクルシミュレーションの数値計算は、先行研究 [Nakata et al., 2016; 2021; 2023]と同様の物理法則・初期値・境界条件・プレート境界面形状等で実施した。ただし、M5クラスの地震まで再現するために、プレート境界面を先行研究よりも細かく分割した。そこで、計算規模を小さくするために、モデル領域は先行研究よりも狭い三陸沖のみとした。本手法では、Dcは特徴的すべり量Lに相当する。A-Bはモデル領域全体で一様に、すべり速度弱化とした。
【結果・議論】2600年分を計算したところ、M8.15~8.29の地震が43回発生した。平均繰り返し間隔は約61年であった。M>8地震のセントロイドは43地震でほぼ同じ位置であったが、破壊開始点はそれぞれ異なっており、グループ1のパッチ内ではなく、グループ2, 3, 4のパッチのいずれかであった。これは、M>8地震が、小さいパッチから始まるcascade-up過程であることを意味している。また、多くのケースで、破壊開始点付近で発生したM<8地震の余効すべりがトリガーとなっていた。余震は、M>8地震のすべり域周辺に位置するグループ4のパッチで多く発生していた。本研究の結果は、動的破壊過程だけではなく、地震サイクルにおいても、階層構造モデルが本質的に重要であることを示唆している。
【謝辞】本研究のシミュレーション結果は、東北大学サイバーサイエンスセンターの大規模科学計算システムおよびJAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を利用して得られたものです。
【手法】マルチスケール円形パッチモデルは、Ide and Aochi [2013]では、2011年東北地方太平洋沖地震の複雑な動的破壊過程を説明するために用いられたものを参考にした。彼らは、気象庁カタログを基に、過去に発生したM>6.5の地震を規模別にグループ分けし、各グループの地震の震源域を同じ半径の円で近似した。各地震の震源位置に配置した円形パッチでは、すべり弱化距離Dcを円の半径に比例して変化させることで、空間的に不均質な階層構造を与えていた。本研究では、Ide and Aochi [2013]でモデル化した地震のうち、三陸沖にのみ着目する。従って、最大規模の地震は、1896年明治三陸地震 (M = 8)である。2番目に大きな規模のグループは、Mj = 7.1~7.6の6地震、3番目はMj = 6.6~7.2の9地震である。さらに、気象庁カタログから、1923年1月~2023年3月に発生した、震源深さ60 km以浅・Mj = 5.6~6.5の362地震を、4番目のグループとして追加した。これらの地震の震央には、グループ1・2・3・4でそれぞれ半径80・40・20・10 kmの円形パッチを配置するが、本研究では、ほぼ同じ場所で同規模の地震が繰り返し発生しているという仮定の下、グループ2の地震を3つに減らした。またグループ4の地震は、近くで発生しているものをまとめて28パッチを配置した。地震発生サイクルシミュレーションの数値計算は、先行研究 [Nakata et al., 2016; 2021; 2023]と同様の物理法則・初期値・境界条件・プレート境界面形状等で実施した。ただし、M5クラスの地震まで再現するために、プレート境界面を先行研究よりも細かく分割した。そこで、計算規模を小さくするために、モデル領域は先行研究よりも狭い三陸沖のみとした。本手法では、Dcは特徴的すべり量Lに相当する。A-Bはモデル領域全体で一様に、すべり速度弱化とした。
【結果・議論】2600年分を計算したところ、M8.15~8.29の地震が43回発生した。平均繰り返し間隔は約61年であった。M>8地震のセントロイドは43地震でほぼ同じ位置であったが、破壊開始点はそれぞれ異なっており、グループ1のパッチ内ではなく、グループ2, 3, 4のパッチのいずれかであった。これは、M>8地震が、小さいパッチから始まるcascade-up過程であることを意味している。また、多くのケースで、破壊開始点付近で発生したM<8地震の余効すべりがトリガーとなっていた。余震は、M>8地震のすべり域周辺に位置するグループ4のパッチで多く発生していた。本研究の結果は、動的破壊過程だけではなく、地震サイクルにおいても、階層構造モデルが本質的に重要であることを示唆している。
【謝辞】本研究のシミュレーション結果は、東北大学サイバーサイエンスセンターの大規模科学計算システムおよびJAMSTECのスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を利用して得られたものです。