3:30 PM - 3:45 PM
[S08-27] Source process of the 2016 off-Fukushima earthquake deduced from ocean-bottom and onshore seismograms together with tsunami source data
2016年11月22日、福島県沖において気象庁マグニチュード7.4の地震が発生した。防災科学技術研究所(防災科研)によるF-net モーメントテンソル(MT)解と気象庁による一元化震源カタログの余震分布から、この地震は北東-南西に走向を持つ正断層型の地震と考えられる。この地震の断層滑り分布は強震波形や海底水圧記録などを用いて推定されている。強震波形を用いた解析(防災科研, 2016)では断層破壊の時空間発展(震源過程)を推定することができる一方、海域の地震に対して陸上観測点のみを利用すると観測点カバレージが悪いという問題がある。他方、津波波形を用いた解析は、グリーン関数が地震波のものよりも安定して求められるという利点や、総滑り分布の拘束が良いという利点がある一方で、M7級の地震で破壊伝播過程まで推定することは難しい。本研究では前者の制約を軽減するため、Shibata and Aso(2024 submitted to BSSA)において開発した、放射パターンの補正を加えた経験的グリーン関数(EGF)を利用した波形インバージョン手法を海底のS-netと陸域のKiK-net(地中)の強震波形に適用することで、陸海の地震波形を同時に説明可能な震源過程の推定を試みた。また、Kubota et al.(2021)によりS-net水圧波形を用いて推定された、津波を励起した海底の上下変位(津波波源)をあわせてインバージョンすることにより、滑り量の空間分布のより安定的な拘束を図った。
強震波形解析においては、0.04–0.4 Hzのバンドパスフィルタを用い、S波走時の0.5秒前から50秒間の波形を用いた。EGFとして用いる地震としては2016年12月20日に発生した気象庁マグニチュード5.5の地震を採用した。気象庁によるEGFの震源深さは32.5 kmである一方、F-net MT解のセントロイド深さは5 kmと推定されている。海域の地震に対する震源決定の不確実性を考慮し、低周波数帯の地震波により推定されたF-net MT解の5 kmをEGFの震源深さとした。また、本震の破壊開始点の深さも気象庁震源(24.5 km)とF-net MT解(11 km)の間で乖離がある。Kubota et al.(2021)とKubo et al.(2023)の結果はこの地震の主な滑り領域の深さは、気象庁震源よりもF-net MT 解の深さに近いかそれよりも浅いことを示唆している。本解析では震源断層の震央位置は気象庁震央とし、震源深さに関してはF-net MT解の11 kmと設定した。震源断層として32 km × 60 kmの断層面を仮定し、8 km × 8 km の小断層をハーフオーバーラップさせて配置した。時間方向には小断層ごとに1.8秒幅の三角形関数をハーフオーバーラップさせて6個並べ、6.3秒間滑りを許した。各小断層の破壊開始時刻は震源から同心円上に1.6 km/sで伝播するように設定した。グリーン関数における放射パターンの補正に必要なレイパラメタは、全国1次地下構造モデルJIVSM(Koketsu et al., 2012)を仮定し、TauPパッケージ(Crotwell et al., 1999)により計算した。津波波源については、Kubota et al.(2021)で推定された津波波源のうち、特に海底変位が大きかった領域において緯度、経度ともに0.02度ごとの上下変位を用いた。ここではOkada(1985)に従い計算された、断層滑りによる理論静的変位をグリーン関数として適用した。地震波形と津波波源の重みづけはトライアンドエラーにより決定した。
強震波形と津波波源のジョイントインバージョンの結果、震源域南西部において最大7 m程度の滑り分布が推定された。大滑り領域は走向方向に16 km程伸びており、滑り方向はほぼ -90ºから変化しなかった。すなわち破壊はほぼユニラテラルに伝播していた。観測された地震波形に関して、S-netでは解析周波数帯の高周波側において振幅が大きかった一方、KiK-netでは低周波側の波が卓越していた。本解析では、そのどちらの波形も概ねフェーズの特徴を中心に再現された。これはEGFを用いることにより適切に地下構造の影響を考慮できているためと考えられる。津波波源データに関しては、その分布はほぼ再現された一方、振幅は元データと比較すると若干小さかった。防災科研(2016)と比較すると、本研究の滑り分布はより浅い領域に集中している様子が見られた。これは津波波源データを用いることで、総滑り量に対する拘束が良くなったためと考えられる。
強震波形解析においては、0.04–0.4 Hzのバンドパスフィルタを用い、S波走時の0.5秒前から50秒間の波形を用いた。EGFとして用いる地震としては2016年12月20日に発生した気象庁マグニチュード5.5の地震を採用した。気象庁によるEGFの震源深さは32.5 kmである一方、F-net MT解のセントロイド深さは5 kmと推定されている。海域の地震に対する震源決定の不確実性を考慮し、低周波数帯の地震波により推定されたF-net MT解の5 kmをEGFの震源深さとした。また、本震の破壊開始点の深さも気象庁震源(24.5 km)とF-net MT解(11 km)の間で乖離がある。Kubota et al.(2021)とKubo et al.(2023)の結果はこの地震の主な滑り領域の深さは、気象庁震源よりもF-net MT 解の深さに近いかそれよりも浅いことを示唆している。本解析では震源断層の震央位置は気象庁震央とし、震源深さに関してはF-net MT解の11 kmと設定した。震源断層として32 km × 60 kmの断層面を仮定し、8 km × 8 km の小断層をハーフオーバーラップさせて配置した。時間方向には小断層ごとに1.8秒幅の三角形関数をハーフオーバーラップさせて6個並べ、6.3秒間滑りを許した。各小断層の破壊開始時刻は震源から同心円上に1.6 km/sで伝播するように設定した。グリーン関数における放射パターンの補正に必要なレイパラメタは、全国1次地下構造モデルJIVSM(Koketsu et al., 2012)を仮定し、TauPパッケージ(Crotwell et al., 1999)により計算した。津波波源については、Kubota et al.(2021)で推定された津波波源のうち、特に海底変位が大きかった領域において緯度、経度ともに0.02度ごとの上下変位を用いた。ここではOkada(1985)に従い計算された、断層滑りによる理論静的変位をグリーン関数として適用した。地震波形と津波波源の重みづけはトライアンドエラーにより決定した。
強震波形と津波波源のジョイントインバージョンの結果、震源域南西部において最大7 m程度の滑り分布が推定された。大滑り領域は走向方向に16 km程伸びており、滑り方向はほぼ -90ºから変化しなかった。すなわち破壊はほぼユニラテラルに伝播していた。観測された地震波形に関して、S-netでは解析周波数帯の高周波側において振幅が大きかった一方、KiK-netでは低周波側の波が卓越していた。本解析では、そのどちらの波形も概ねフェーズの特徴を中心に再現された。これはEGFを用いることにより適切に地下構造の影響を考慮できているためと考えられる。津波波源データに関しては、その分布はほぼ再現された一方、振幅は元データと比較すると若干小さかった。防災科研(2016)と比較すると、本研究の滑り分布はより浅い領域に集中している様子が見られた。これは津波波源データを用いることで、総滑り量に対する拘束が良くなったためと考えられる。