日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(2日目)

一般セッション » S08. 地震発生の物理

[S08P] PM-P

2024年10月22日(火) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S08P-10] 近地強震動波形から得られた1968年日向灘地震の震源過程

*藤井 俊一郎1、小林 励司1 (1. 鹿児島大学)

1. はじめに
1968年4月1日9時42分に日向灘を震源とするMJMA7.5の地震が発生した。渡辺 (1998)によると、この地震により宮崎県の延岡と高知県の宿毛で震度5が観測されている。これまでに同地震の震源過程が求められた研究として、八木・他 (1998)が挙げられる。この研究では、遠地地震波形が解析データとして使用されているため、震源過程の全体像を把握することができるが、震源過程の時空間の分解能が近地の強震動波形解析によって得られるそれに比べて劣る可能性がある。そこで本研究では、近地の強震動波形を解析データとして同地震の震源過程の推定を行い、遠地地震波形から求められた震源過程と比較し検証する。

2. データと手法
データは消防庁消防大学校消防研究センターによる気象庁1倍強震計記録の数値化データ公開システムよりダウンロードした。そこから、延岡・大分・熊本・鹿児島・福岡の計5観測点で記録された水平動成分及び上下動成分を使用した。変位波形記録に対して、円弧補正および時間幅の戻りの補正を施した後、サンプリング間隔0.5秒の等間隔の波形に変換し、微分することで速度波形記録を得た。これらの速度波形記録に3秒~20秒のバンドパスフィルタをかけ、P波到達1秒前から65秒間を切り出し解析データとした。
断層モデルは八木・他 (1998)のものを採用した。ただし、破壊開始点の緯度・経度は、気象庁によって改訂された値を使用した。震源の深さは、気象庁によって改訂された値ではなく、フィリピン海プレートの形状の数値データのプロットにより得られた17 kmを採用した。各小断層におけるすべり速度関数は、一定の速度で同心円状に広がる破壊フロントが到達した時刻から3.2秒幅の三角形関数を1.6秒ずらして6個並べることにより表現した。
グリーン関数はZhu and Rivera (2002)の方法で計算した。地下構造モデルは全国1次地下構造モデルの各観測点直下の情報を抽出して使用した。インバージョンの手法はHikima and Koketsu (2005)を使用した。

3. 結果と考察
暫定的な結果を図に示す。破壊開始点から約27 (km)北西の領域に大きくすべった領域が復元された。最大すべり量は4.1 (m)で、全体の地震モーメントは3.1×1020 (Nm)、Mwは7.6である。地震モーメントは八木・他 (1998)が求めた2.5×1020 (Nm)を上回る結果となった。波形の一致は全体的に悪くはないが、鹿児島観測点の南北動成分は、観測波形の大振幅を再現できていない。これは、1次元速度構造では説明ができないローカルサイト効果を受けて地震波が増幅した可能性が示唆される。