[S08P-11] Observation of earthquake-induced rotational ground motions by broadband seismometer array: Part 2
地面の動きを捉えることは地震学の基本であるが、これまで長年に渡り観測されてきたのは地震計による並進3成分であり、変位の空間微分量であるひずみや回転成分の観測は限られている。しかし、地震波帯域のひずみや回転成分(以後、ひずみ地震動、回転地震動と呼ぶ)は、震源過程や地下構造の詳細を解明するために非常に重要な観測量であり、並進成分と組合わせた解析が期待されている(Takeo and Ito, 1997; Igel et al., 2005)。
ひずみ地震動は、伸縮計やひずみ計の高サンプリング観測により観測可能であり(Kasahara, 1976; Okubo et al., 2004)、モーメントテンソル解析にも有効な観測量できることが示されている(矢部・今西, 2022)。一方、回転地震動の観測については、光ファイバジャイロによる可搬型の広帯域回転地震計が販売され始めているが(例えば、イクスブルー社のblueSeis-3A)、我々が独自に行った試験観測の結果、長周期成分に関しては、広帯域地震計に比べて機器ノイズがかなり大きいことがわかった(Yabe et al., 2022)。
そこで我々は、アレイデータの空間微分から長周期帯域のひずみと回転地震動を抽出することを目的とし、2023年2月から愛媛県新居浜市の北東沖にある大島で、口径約1kmの範囲に広帯域地震計(Trillium compact)4台を配置したアレイ観測を実施している。昨年の地震学会では、2023年5月18日に豊後水道のプレート内で発生したMj4.5の地震について、Spudich et al. (1995) の方法でひずみと回転地震動を抽出した結果を報告した(今西・矢部, 2023)。抽出されたひずみ地震動は、アレイ中心から2kmほど南西側に位置する産総研のボアホールひずみ計(設置深度482m)の記録とよく一致していることから、同時に抽出される回転地震動も正確に推定されていると判断できる。アレイ観測は現在も継続中で、今年の7月上旬のデータ回収時点で、豊後水道や日向灘地域において発生したM4以上の地震記録が12イベント取得されている。
本発表では、これらの地震について同様に解析した結果について報告する。特に、2024年4月17日に豊後水道で発生したプレート内地震(Mj6.6)は、広帯域にわたりSNの良好な記録を得ることができた。周期10~50秒の帯域のデータに対して抽出された回転地震動は、水平2軸周りが10-8rad/sのオーダーであるのに対して、鉛直軸周りは一桁大きく10-7rad/sのオーダーであった。使っている周期帯から地下構造の影響は小さいと考えられるため、この回転地震動の違いは、震源に起因している可能性が高い。当日の発表では、ひずみ及び回転地震動を使ったモーメントテンソル解析のほか、2024年8月8日の日向灘の地震(Mj7.1)の解析結果についても報告予定である。
引用文献:
Igel et al. (2005) GRL, doi:10.1029/2004GL022336.
Kasahara (1976)測地学会誌, https://doi.org/10.11366/sokuchi1954.22.292.
Okubo et al. (2004) EPS, https://doi.org/10.1186/BF03352567.
Spudich et al. (1995) JGR, https://doi.org/10.1029/94JB02477.
Takeo and Ito (1997) GJI, https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.1997.tb01585.x.
Yabe et al. (2022) JpGU meeting 2022, SCG44-14.
矢部・今西 (2022) 日本地震学会2022年度秋季大会, S08-13.
今西・矢部 (2023) 日本地震学会2023年度秋季大会, S08-12.
謝辞:本研究はJSPS科研費23H01279,22H05317, 21H04505, 21K14022, 21H05203の助成を受けたものです。アレイ解析では、strainz17 (https://www.usgs.gov/node/27941
ひずみ地震動は、伸縮計やひずみ計の高サンプリング観測により観測可能であり(Kasahara, 1976; Okubo et al., 2004)、モーメントテンソル解析にも有効な観測量できることが示されている(矢部・今西, 2022)。一方、回転地震動の観測については、光ファイバジャイロによる可搬型の広帯域回転地震計が販売され始めているが(例えば、イクスブルー社のblueSeis-3A)、我々が独自に行った試験観測の結果、長周期成分に関しては、広帯域地震計に比べて機器ノイズがかなり大きいことがわかった(Yabe et al., 2022)。
そこで我々は、アレイデータの空間微分から長周期帯域のひずみと回転地震動を抽出することを目的とし、2023年2月から愛媛県新居浜市の北東沖にある大島で、口径約1kmの範囲に広帯域地震計(Trillium compact)4台を配置したアレイ観測を実施している。昨年の地震学会では、2023年5月18日に豊後水道のプレート内で発生したMj4.5の地震について、Spudich et al. (1995) の方法でひずみと回転地震動を抽出した結果を報告した(今西・矢部, 2023)。抽出されたひずみ地震動は、アレイ中心から2kmほど南西側に位置する産総研のボアホールひずみ計(設置深度482m)の記録とよく一致していることから、同時に抽出される回転地震動も正確に推定されていると判断できる。アレイ観測は現在も継続中で、今年の7月上旬のデータ回収時点で、豊後水道や日向灘地域において発生したM4以上の地震記録が12イベント取得されている。
本発表では、これらの地震について同様に解析した結果について報告する。特に、2024年4月17日に豊後水道で発生したプレート内地震(Mj6.6)は、広帯域にわたりSNの良好な記録を得ることができた。周期10~50秒の帯域のデータに対して抽出された回転地震動は、水平2軸周りが10-8rad/sのオーダーであるのに対して、鉛直軸周りは一桁大きく10-7rad/sのオーダーであった。使っている周期帯から地下構造の影響は小さいと考えられるため、この回転地震動の違いは、震源に起因している可能性が高い。当日の発表では、ひずみ及び回転地震動を使ったモーメントテンソル解析のほか、2024年8月8日の日向灘の地震(Mj7.1)の解析結果についても報告予定である。
引用文献:
Igel et al. (2005) GRL, doi:10.1029/2004GL022336.
Kasahara (1976)測地学会誌, https://doi.org/10.11366/sokuchi1954.22.292.
Okubo et al. (2004) EPS, https://doi.org/10.1186/BF03352567.
Spudich et al. (1995) JGR, https://doi.org/10.1029/94JB02477.
Takeo and Ito (1997) GJI, https://doi.org/10.1111/j.1365-246X.1997.tb01585.x.
Yabe et al. (2022) JpGU meeting 2022, SCG44-14.
矢部・今西 (2022) 日本地震学会2022年度秋季大会, S08-13.
今西・矢部 (2023) 日本地震学会2023年度秋季大会, S08-12.
謝辞:本研究はJSPS科研費23H01279,22H05317, 21H04505, 21K14022, 21H05203の助成を受けたものです。アレイ解析では、strainz17 (https://www.usgs.gov/node/27941