[S08P-16] Hypocenter relocations of the 2016 central Oita earthquakes with station corrections obtained from FAMT solutions
2016年熊本地震(Mj 7.3)の発生から約32秒後に大分県中部を震源とする地震(Mj 5.7,以下この地震を誘発地震と呼ぶ) が誘発され,由布から別府湾にかけて地震活動が活発化した.小割・他(2020, JpGU)は,誘発地震の余震と考えられる14イベントの近地の強震波形記録に対して3次元地下構造モデルを適用したFAMT(First-motion Augmented Moment Tensor)解析(Okamoto et al., 2017, EPS)を行い,得られたセントロイド震源は気象庁一元化処理震源と比較して概ね浅く,大分県中部では地震発生層の下限が非常に浅い(例えば,Matsumoto et al., 2016, EPS)ことと整合的であったことを示した.3次元地下構造モデルを適用したFAMT解を用いた研究事例として小松・他(2022, SSJ)がある.彼らはセントロイド震源の位置情報を基に得た観測点間補正値(2つの観測点の組における観測点補正値同士の差)を用いることで,沖縄本島南東沖で発生した地震について規模の小さい地震まで含めて震源再決定を行い,フィリピン海プレートの沈み込みに沿って(海溝から沖縄本島に向かって)震源が深くなる分布が得られたことから,セントロイド震源の位置情報を使用することの有効性を示した.
本研究では,大分県中部の地震において小松・他(2022)の手法を適用し,震源再決定を試みたので報告する.解析対象は,誘発地震が発生した2016年4月16日から2ヶ月以内に大分県中部で発生したMj 2.0以上の地震610イベントである.これには誘発地震自体も含まれる.リファレンスに採用したセントロイド震源の位置情報は,小割・他 (2020)の14イベントのうち,セントロイド震源を三次元的に探索した9イベントである.震源再決定は,予め観測点間補正値を計算し,グリッドサーチによって各観測点間の観測走時差と理論走時差のRMSが最小となる点を探索した.この手法は観測点間の走時差を使用するため,発震時の情報を必要としない.グリッドサーチの探索範囲は,水平方向は気象庁一元化処理震源の震央を中心に南北・東西方向にそれぞれ±0.1度,鉛直方向は深さ0~20 kmとした.観測走時は検測値データから計算し,理論走時は気象庁の走時表JMA2001 (上野・他, 2002,験震時報)から得た.
震源再決定を行った結果を図1に示す.活火山の直下で震源分布の下限が浅くなる傾向は気象庁一元化処理震源やDD法によって再決定した今西・他(2017, 別府‐万年山重点)と同様である.本研究で再決定した震源は気象庁一元化処理震源と比較して全体的に浅く求まり,特に震源域西側の由布盆地周辺において顕著であった.本研究で再決定した震源の深さから計算される地震発生層の下限(D95)はおよそ7 kmであり,今西・他(2017)の震源分布やMatsumoto et al.(2016)が示した地震発生層の下限(D95)と整合的である.誘発地震の震源の深さは4.2 km(地表から4.7 km)と推定され,震央位置,深さともにUchide et al.(2016, EPS)の推定と整合的である.4月16日7時11分に発生した最大余震(Mj 5.4)の震源の深さは1.2 km(地表から2.0 km)と推定され,今西・他(2017)が再決定した震源分布図から読み取った最大余震の震央位置,深さともに良い一致を示した.一方で,4月29日15時9分に発生した二番目に規模が大きい余震(Mj 4.5)の震源の深さは0.6 km(地表から1.1 km)と特に浅く求まった.このイベントはリファレンスに用いたセントロイド震源の深さが1 kmと特に浅かったことによる可能性がある.
謝辞 本研究では,気象庁一元化処理震源ならびに検測値データを使用しました.
本研究では,大分県中部の地震において小松・他(2022)の手法を適用し,震源再決定を試みたので報告する.解析対象は,誘発地震が発生した2016年4月16日から2ヶ月以内に大分県中部で発生したMj 2.0以上の地震610イベントである.これには誘発地震自体も含まれる.リファレンスに採用したセントロイド震源の位置情報は,小割・他 (2020)の14イベントのうち,セントロイド震源を三次元的に探索した9イベントである.震源再決定は,予め観測点間補正値を計算し,グリッドサーチによって各観測点間の観測走時差と理論走時差のRMSが最小となる点を探索した.この手法は観測点間の走時差を使用するため,発震時の情報を必要としない.グリッドサーチの探索範囲は,水平方向は気象庁一元化処理震源の震央を中心に南北・東西方向にそれぞれ±0.1度,鉛直方向は深さ0~20 kmとした.観測走時は検測値データから計算し,理論走時は気象庁の走時表JMA2001 (上野・他, 2002,験震時報)から得た.
震源再決定を行った結果を図1に示す.活火山の直下で震源分布の下限が浅くなる傾向は気象庁一元化処理震源やDD法によって再決定した今西・他(2017, 別府‐万年山重点)と同様である.本研究で再決定した震源は気象庁一元化処理震源と比較して全体的に浅く求まり,特に震源域西側の由布盆地周辺において顕著であった.本研究で再決定した震源の深さから計算される地震発生層の下限(D95)はおよそ7 kmであり,今西・他(2017)の震源分布やMatsumoto et al.(2016)が示した地震発生層の下限(D95)と整合的である.誘発地震の震源の深さは4.2 km(地表から4.7 km)と推定され,震央位置,深さともにUchide et al.(2016, EPS)の推定と整合的である.4月16日7時11分に発生した最大余震(Mj 5.4)の震源の深さは1.2 km(地表から2.0 km)と推定され,今西・他(2017)が再決定した震源分布図から読み取った最大余震の震央位置,深さともに良い一致を示した.一方で,4月29日15時9分に発生した二番目に規模が大きい余震(Mj 4.5)の震源の深さは0.6 km(地表から1.1 km)と特に浅く求まった.このイベントはリファレンスに用いたセントロイド震源の深さが1 kmと特に浅かったことによる可能性がある.
謝辞 本研究では,気象庁一元化処理震源ならびに検測値データを使用しました.