[S09] AM-2

[S09-17] Seismicity of similar earthquakes in Ogasawara Ioto

*Genki OIKAWA¹, Hideki UEDA¹ (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience (NIED) )

小笠原諸島に位置する硫黄島では、高い地熱や噴火といった火山活動に伴う様々な現象が見られる。なかでも火山性地震活動は特に活発であり、防災科学技術研究所（防災科研）では日常的に多くの火山性地震を検出し、その震源カタログを作成している。防災科研が作成した火山性地震カタログの中には、互いに類似した波形を持つ相似地震がしばしば発生していることが分かった。相似地震の典型的な例として、プレート境界で観測される繰り返し地震がある。繰り返し地震は、背景にあるプレート運動と関連があることから直接推定が難しいすべり速度や固着状態の推定に用いられている（e.g., Igarashi et al. 2003）。硫黄島でもプレート境界と似たように、背景の地殻変動と地震活動に相関があることが知られており(e.g., Ueda et al. 2018)、相似地震は火山内部の情報を知る手掛かりになる可能性がある。そこで本研究では、硫黄島で発生する火山性地震についてクラスタリングおよびクラスターごとの発生位置の推定を行った。
硫黄島には防災科研の定常観測点3点と気象庁の観測点2つの合計5点の3成分速度地震計が置かれており、本解析ではこれらを用いた。2022-2023年のカタログを用いて、5つの3成分観測点の相互相関係数の和からDBSCANクラスタリング(Ester et al. 1996)を行い火山性地震の分類を行った。その結果、火山性地震は19個のクラスタに分類された。次に、クラスターごとに波形をスタックしクラスターのテンプレート波形を作成した。硫黄島では観測点の数が少ないため、テンプレート波形の読み取り走時、振動軌跡、振幅の3つの情報を用い、理論値と観測値の2乗残差が最小となる位置をグリッドサーチによって決定した。観測点のカバー率が低いため震源の特定精度は低いが、地殻変動の激しい阿蘇台断層付近に多くの地震を含むクラスターが分布していることがわかった。 また、マグマだまりの存在が示唆されているカルデラ再生ドームの直下ではなく、その周辺に相似地震クラスターが分布していることがわかった。この結果は、硫黄島で観測される相似地震が、地殻変動に伴うstick-slip現象によって引き起こされた可能性を示唆している。