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[S09-18] 中米沈み込み帯における群発地震検出:地震活動とスロースリップイベントの関係に関する示唆
スロースリップイベント(SSE)は、主にプレート境界で発生する、低速で過渡的な断層すべり現象である。SSEは、ときに大地震の発生や、小中規模の地震の群発活動を伴う(例えば、Nishikawa et al., 2023)。中米沈み込み帯では、SSEがメキシコのゲレロ州、オアハカ州、コスタリカのニコヤ半島等で観測されており、同沈み込み帯で発生する大地震(M 7以上)との関連性が、盛んに研究されてきた (例えば、Voss et al., 2018; Cruz-Atienza et al., 2021)。それに対して、中米沈み込み帯で発生する中規模地震(M4からM6程度)の活動とSSEとの関係については、未だわかっていないことが多い。この関係の解明は、中米沈み込み帯における地震活動を支配するメカニズムの解明や、同沈み込み帯の地震活動確率予測の精度向上に不可欠である。そこで、本研究は、2001年から2024年までのANSS地震カタログを使用し、中米沈み込み帯における中規模地震の群発活動を網羅的に検出した。そして、群発地震活動とSSEの時空間的関係や、群発地震発生期間に周囲のGNSS観測点で記録された過渡的変位を調べた。
群発地震の検出には、時空間ETASモデル(Zhuang et al., 2002)に基づくNishikawa & Ide (2018) の方法を用いた。まず、中米沈み込み帯を、海溝軸に沿って、(1)メキシコ・コリマ州からオアハカ州、(2)オアハカ州からグアテマラ、(3)エルサルバドルからニカラグア、(4)ニカラグアからパナマの4領域に分割し、各領域内のM 4.3以上の地震活動に対して、時空間ETASモデルの8つのパラメータ(K, α, c, p, d, γ, q, ν)を推定した。ETASパラメータの推定には、Omi et al. (2015)のベイズ的アプローチを採用した。マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)によって、事後確率分布をサンプリングし、事後確率を最大化するパラメータセットを得た。パラメータの事前確率分布には、十分に広い区間で一様な確率分布を、各パラメータに対して仮定した。そして、各領域において、半径30 kmの検出円を、緯度・経度方向に15 kmの間隔で配置し、推定したETASパラメータを用いて、各検出円内における地震発生数のETASモデルによる予測値を計算した。最後に、実際に観測された地震発生数と予測値を比較することで、ETASモデルが説明できない地震活動の活発化を、群発地震として検出した。活発化の検出基準は、Nishikawa & Ide (2018)と同一の基準を用いた。
次に、検出された群発地震活動を、先行研究 (Cruz-Atienza et al., 2021; Xie et al., 2020など) で報告されているSSEの活動と比較した。SSEが未報告の地域では、群発地震活動の震央付近のGNSS観測点の日座標値を確認し、未報告のSSEに起因する可能性のある過渡的な変位の有無を調べた。ゲレロ州におけるGNSS日座標値はCruz-Atienza et al. (2021) に、他の地域の日座標値はNevada Geodetic Laboratory (Blewitt et al., 2018)による。また、小さな過渡的な変位の検出には、Nishimura et al. (2013)の方法を用いた。
解析の結果、2001年から2024年の間に、中米沈み込み帯全域では、合計59の群発地震系列が検出された。ゲレロ地震空白域、メキシコ・チアパス州の沖合、コスタリカとパナマの国境のブリカ半島付近では、同一の検出円において、群発地震系列が4回または5回繰り返して検出された。59の群発地震系列のうち4系列は、2002年、2006年のゲレロSSEと、2014年のニコヤ半島SSEの発生期間と時空間的に近接して発生していた。これらの群発地震活動は、SSEによって誘発された可能性がある。加えて、未報告のSSE候補もいくつか見つかった。ニコヤ半島では、2022年に発生した群発地震系列の期間中に、付近の複数のGNSS観測点で数センチメートルの南向きの変位が観測された。同様に、ブリカ半島付近では、群発地震活動に伴い、付近の複数のGNSS観測点で約1 cmの南向き変位が観測された。また、チアパス州の沖合では、5つの群発地震系列が同じ地域で繰り返し検出され、そのうち4系列では、沿岸のGNSS観測点で数ミリメートルの南向き変位が観測された。本研究の結果は、中米沈み込み帯において、SSEが中規模地震の群発活動を誘発している可能性と、群発地震活動を伴う未報告のSSEが存在する可能性を示唆する。
群発地震の検出には、時空間ETASモデル(Zhuang et al., 2002)に基づくNishikawa & Ide (2018) の方法を用いた。まず、中米沈み込み帯を、海溝軸に沿って、(1)メキシコ・コリマ州からオアハカ州、(2)オアハカ州からグアテマラ、(3)エルサルバドルからニカラグア、(4)ニカラグアからパナマの4領域に分割し、各領域内のM 4.3以上の地震活動に対して、時空間ETASモデルの8つのパラメータ(K, α, c, p, d, γ, q, ν)を推定した。ETASパラメータの推定には、Omi et al. (2015)のベイズ的アプローチを採用した。マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC法)によって、事後確率分布をサンプリングし、事後確率を最大化するパラメータセットを得た。パラメータの事前確率分布には、十分に広い区間で一様な確率分布を、各パラメータに対して仮定した。そして、各領域において、半径30 kmの検出円を、緯度・経度方向に15 kmの間隔で配置し、推定したETASパラメータを用いて、各検出円内における地震発生数のETASモデルによる予測値を計算した。最後に、実際に観測された地震発生数と予測値を比較することで、ETASモデルが説明できない地震活動の活発化を、群発地震として検出した。活発化の検出基準は、Nishikawa & Ide (2018)と同一の基準を用いた。
次に、検出された群発地震活動を、先行研究 (Cruz-Atienza et al., 2021; Xie et al., 2020など) で報告されているSSEの活動と比較した。SSEが未報告の地域では、群発地震活動の震央付近のGNSS観測点の日座標値を確認し、未報告のSSEに起因する可能性のある過渡的な変位の有無を調べた。ゲレロ州におけるGNSS日座標値はCruz-Atienza et al. (2021) に、他の地域の日座標値はNevada Geodetic Laboratory (Blewitt et al., 2018)による。また、小さな過渡的な変位の検出には、Nishimura et al. (2013)の方法を用いた。
解析の結果、2001年から2024年の間に、中米沈み込み帯全域では、合計59の群発地震系列が検出された。ゲレロ地震空白域、メキシコ・チアパス州の沖合、コスタリカとパナマの国境のブリカ半島付近では、同一の検出円において、群発地震系列が4回または5回繰り返して検出された。59の群発地震系列のうち4系列は、2002年、2006年のゲレロSSEと、2014年のニコヤ半島SSEの発生期間と時空間的に近接して発生していた。これらの群発地震活動は、SSEによって誘発された可能性がある。加えて、未報告のSSE候補もいくつか見つかった。ニコヤ半島では、2022年に発生した群発地震系列の期間中に、付近の複数のGNSS観測点で数センチメートルの南向きの変位が観測された。同様に、ブリカ半島付近では、群発地震活動に伴い、付近の複数のGNSS観測点で約1 cmの南向き変位が観測された。また、チアパス州の沖合では、5つの群発地震系列が同じ地域で繰り返し検出され、そのうち4系列では、沿岸のGNSS観測点で数ミリメートルの南向き変位が観測された。本研究の結果は、中米沈み込み帯において、SSEが中規模地震の群発活動を誘発している可能性と、群発地震活動を伴う未報告のSSEが存在する可能性を示唆する。