The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room B

Regular session » S09. Statistical seismology and underlying physical processes

[S09] AM-2

Tue. Oct 22, 2024 10:45 AM - 12:15 PM Room B (Medium-sized Conference room 301 (3F))

chairperson:Tsukasa Mitogawa(Pacific Consultants Co., LTD.), Genki OIKAWA(National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience (NIED))

11:15 AM - 11:30 AM

[S09-19] A Hawkes Process Model for Tectonic Tremors Considering Spatial Interactions and Long-Term Periodicity

*Seiya Yano1, Satoshi Ide1, Shunichi Nomura2 (1. Department of Earth and Planetary Science, The University of Tokyo, 2. Graduate School of Accountancy, Faculty of Commerce, Waseda University)

スロー地震は, 通常の地震に比べて非常にゆっくりとした滑りや変形を伴う現象であり, 各地のプレート境界で観測されている. その発生パターンはプレート境界の応力変化や環境変化を反映していると考えられており, 巨大地震との関連性も指摘されている (e.g., Obara & Kato, 2016; Warren-Smith et al., 2019). したがって, スロー地震の発生パターンをモデル化することは, スロー地震と通常の地震との関係を解明し, プレート境界の状態をリアルタイムにモニタリングするための重要な基礎情報となる. 特に, 地震学的手法によって2-10 Hz程度の帯域で観測されるテクトニック微動や低周波地震は, 他のスロー地震と比べて検出頻度が高く, 震源決定精度も優れているため, スロー地震の詳細な時空間発展を明らかにし, プレート境界の不均一性を議論するための手掛かりとなる (e.g., Bartlow et al., 2011; Yabe & Ide, 2014; Frank et al., 2015).
 テクトニック微動は時空間的に密集して発生する傾向があり, さらにそのクラスターが準周期的に現れることが知られている. Ide & Nomura (2022) やNishikawa (2024) は, 地域ごとのテクトニック微動の準周期的な発生様式を, 数十秒から1日程度の周期を持つ短期的な繰り返しと, 数十から百日程度の周期を持つ長期的な繰り返しの双方を組み込んだ更新過程を用いてモデル化した.
 一方で, テクトニック微動の空間分布は一般に不均一であり, 数kmから数十km, 数十分から1ヶ月程度にまで及ぶ多様な時空間スケールでの移動現象も報告されている. また, その移動方向や速度も完全にランダムではなく, 地域や時間スケールに依存する (e.g., Shelly et al., 2007; Ghosh et al., 2010; Ide, 2010). 地域ごとの特徴に加えて,このような特徴的な時空間スケールでの移動現象をモデルに取り組むことで,時空間発展の予測可能性が向上することが期待される. そこで本研究では, テクトニック微動の時間的特徴と空間的特徴を同時に表現するために, 周辺領域で発生したイベントの影響も考慮したホークス過程を用いることで, テクトニック微動の活動をモデル化した.
 テクトニック微動のカタログはYano & Ide (2024) の手法を用いて構築した. この手法は, 従来のエンベロープ相互相関法に, 教師なし学習のクラスタリング手法を組み合わせることで, より客観的なテクトニック微動の検出を可能にした手法である. 解析対象は2004年4月から2013年12月までの約10年間で西日本において発生したテクトニック微動とし, Hi-netのデータを用いて検出を行った.
 検出したテクトニック微動を, 平面で近似したフィリピン海プレートに投影し, その平面上を半径2.5 kmの円に内接する正六角形のグリッドで分割した. それぞれの正六角形領域では, 1. 領域内のランダムな偶発的効果, 2. 領域内で発生したイベントによる誘発効果, 3. 隣接領域で発生したイベントによる誘発効果, 4. 領域内の長期的なローディングによる効果, のいずれかによって微動が発生すると仮定した. これら1から4の効果をすべて組み込んだ強度関数に従うホークス過程モデルをFull Modelとする. さらに, 効果1のみのモデル (Random Model), 効果1と2のモデル (Simple Hawkes Model), 効果1, 2, 3のモデル (Interactive Hawkes Model), 効果1, 2, 4のモデル (Loading Model) のように, パラメータ数の異なるモデルを用意した. 各モデルに対して最尤パラメータを推定するとともに, 赤池情報量基準 (AIC) に基づいて比較を行った.
 周辺領域からの影響を考慮しない場合, 長期的な繰り返しの効果を含むモデル (Loading Model) は, シンプルなホークス過程モデル (Simple Hawkes Model) と比較して, AICが10程度小さかった. これは, テクトニック微動の時間発展をモデリングする際に, 長期的な繰り返しを考慮することの有効性を示した先行研究 (Ide & Nomura, 2022; Nishikawa, 2024) と整合的である. 長期的な繰り返しの時定数は100から300日程度であった.
 さらに, 一部の領域では, 周辺からの効果を考慮したモデル (Interactive Hawkes Model) や, すべての効果を取り込んだモデル (Full Model) のAICが, Simple ModelやLoading Modelのそれに比べて200程度と大幅に改善した. そのような領域は, 10から30 km程度の比較的小規模な移動現象が頻繁に観測される領域と一致していた. また, 周辺領域から受ける影響の大小には, 空間不均一性や非対称性が存在し, それらはテクトニック微動の小規模なクラスター分布や移動方向と調和的な場合も見られた.
 本研究のモデルを用いることで, テクトニック微動の時間的, 空間的な特徴を同時にモデル化し, 数km程度の空間スケールまで考慮した予測モデルを構築することができるかもしれない.