14:30 〜 14:45
[S09-27] 日本列島周辺で発生したマグニチュード7級地震の余震域拡大速度とb値(b-positive):プレート境界地震の特性
本震後の余震数が経過時間のべき乗に従って減少する(e.g., Utsu, 1961)一方、余震の空間的範囲は経過時間の対数におよそ比例して拡大する(e.g., Peng and Zhao, 2009)ことが経験的に知られている。前者(大森-宇津則)については、多くの本震に関してパラメータの比較研究が行われてきたが、後者については、個別の本震に関しての研究がほとんどである。
本研究では、日本列島周辺で発生したマグニチュード7級地震を対象として、余震域の拡大速度(対数時間における)を評価し、比較する。拡大速度の定量的評価は、実は困難な問題である。我々は、余震域の時空間的上限を既存のスケーリング関係(Gardner and Knopoff, 1974)を用いて制約し、その範囲内で本震直後からの余震発生端の位置を対数時間に対して回帰する、という単純な手法を導入した。25個の本震に対して、同手法による推定を行った。
余震域拡大速度と比較するためのパラメータとして、余震のマグニチュード頻度分布におけるb値(Gutenberg and Richter, 1944)を推定した。b値の推定は、カットオフマグニチュードMcの影響を受けやすい。Mcが時間変化すると考えられる余震の場合、推定精度が大きな問題となる。そこで、マグニチュードの差の頻度分布に基づくb-positive法(van der Elst, 2021)を導入した。その結果、時間経過に伴う余震域内のb値変化が軽減されることを確認し、安定した推定が行えていると判断した。
余震域拡大速度とb値の推定結果を比較した。データが少なくなってしまう問題はあるが、本震をプレート境界地震に限った場合、両者の間に負相関が見られた。b値と背景差応力との間の負相関(e.g., Scholz, 2015)を仮定すると、余震域拡大速度と本震後の差応力との間に正相関があることが示唆される。この傾向は、プレート内部で発生した本震には見られなかった。なお、プレート境界地震の結果を詳細に見ると、b値が低く(差応力が高く)余震域拡大速度が速かったのは、マグニチュード8を超える大きなプレート境界地震(2003年十勝沖地震、2011年東北地震)の震源域周辺であった。これらの領域は、プレート境界上の他領域に比べ、高い差応力がかかっている可能性がある。
余震域の拡大速度は、差応力以外にも温度・圧力条件や間隙流体など様々な要因に影響され得ると考えられるが、それらをサポートする結果は本研究では得られなかった。
参考文献:
Mitsui Y. (2024) Earth Planets Space, https://doi.org/10.1186/s40623-024-02035-2
Mitsui Y. et al. (2024) Prog. Earth Planet. Sci., https://doi.org/10.1186/s40645-024-00638-7
本研究では、日本列島周辺で発生したマグニチュード7級地震を対象として、余震域の拡大速度(対数時間における)を評価し、比較する。拡大速度の定量的評価は、実は困難な問題である。我々は、余震域の時空間的上限を既存のスケーリング関係(Gardner and Knopoff, 1974)を用いて制約し、その範囲内で本震直後からの余震発生端の位置を対数時間に対して回帰する、という単純な手法を導入した。25個の本震に対して、同手法による推定を行った。
余震域拡大速度と比較するためのパラメータとして、余震のマグニチュード頻度分布におけるb値(Gutenberg and Richter, 1944)を推定した。b値の推定は、カットオフマグニチュードMcの影響を受けやすい。Mcが時間変化すると考えられる余震の場合、推定精度が大きな問題となる。そこで、マグニチュードの差の頻度分布に基づくb-positive法(van der Elst, 2021)を導入した。その結果、時間経過に伴う余震域内のb値変化が軽減されることを確認し、安定した推定が行えていると判断した。
余震域拡大速度とb値の推定結果を比較した。データが少なくなってしまう問題はあるが、本震をプレート境界地震に限った場合、両者の間に負相関が見られた。b値と背景差応力との間の負相関(e.g., Scholz, 2015)を仮定すると、余震域拡大速度と本震後の差応力との間に正相関があることが示唆される。この傾向は、プレート内部で発生した本震には見られなかった。なお、プレート境界地震の結果を詳細に見ると、b値が低く(差応力が高く)余震域拡大速度が速かったのは、マグニチュード8を超える大きなプレート境界地震(2003年十勝沖地震、2011年東北地震)の震源域周辺であった。これらの領域は、プレート境界上の他領域に比べ、高い差応力がかかっている可能性がある。
余震域の拡大速度は、差応力以外にも温度・圧力条件や間隙流体など様々な要因に影響され得ると考えられるが、それらをサポートする結果は本研究では得られなかった。
参考文献:
Mitsui Y. (2024) Earth Planets Space, https://doi.org/10.1186/s40623-024-02035-2
Mitsui Y. et al. (2024) Prog. Earth Planet. Sci., https://doi.org/10.1186/s40645-024-00638-7