14:45 〜 15:00
[S09-28] 余震数と断層面積の関係
(1)余震数と断層面積の関係の定式化
地震の断層の広がりを余震分布から求めると,その面積が広いほど余震数が多いことに気づく.これに関しては,清野(1977)やYamanaka & Shimazaki(1990)などで研究されている.ここでは,断層面積と余震数の関係について,最近の地震を含めて,定式化を検討した.マグニチュード(M)と断層面積(S,km2)の関係については,次式で示される.
M=logS+4.01・・・【A式】
Kanamori(1977)による地震モーメント(Mo)はモーメントマグニチュード(Mw)との関係はlogMo=1.5Mw+9.1【①】,ここではMw=Mとする.一方,Moは弾性定数μ,平均すべり量D,断層面積SとしMo=μDSであり,ストレスドロップΔσ,係数cとしてD=Δσ/(cμ)S1/2なので,Mo=(Δσ/c)S3/2【②】となる.②を①に代入してM=logS+2/3(log(Δσ/c)-9.1)【③】となる.Δσ=3MPa,c=2.5とすると,A式を得る.次に,新たに定式化した余震数と断層面積の関係式
N(Mth)=10-b(ΔM+Mth-4.01)・Sb・・・【B式】
を示す.マグニチュードの下限Mth以上の積算余震数N(Mth),余震のb値,及び本震マグニチュードMx,最大余震MaでΔM=Mx-Maとする.余震のG-R式はN(Mth)=10A-bMth【④】であり,Shcherbakov et al. (2004)に倣って,最大余震に④を適用すると1=10A-bMa.MxとΔMを用いると1=10A-b(Mx-ΔM)と書け,対数をとって整理するとMx=A/b+ΔM【⑤】となる.ここで,新たな定式化として,M=Mxとして⑤を③に代入・整理すると,A=logSb-b(ΔM-2/3(log(Δσ/c)-9.1)【⑥】,⑥を④に代入・整理すると,N(Mth)=10-b(ΔM+Mth-2/3(log(Δσ/c)-9.1)・Sb【⑦】となる.⑦にΔσとcの値を代入して,B式が得られる.余震数は断層面積のb乗に比例することが分かる.なお、A式とB式から,N(Mth)とMの関係は
N(Mth)=10b(M-ΔM-Mth)・・・・【C式】
となる.
(2)解析事例
気象庁の震源カタログを利用して,本震発生から24時間以内のM3.5以上の余震分布から,断層面積を推定した.ここでは,単純化して,横ずれ断層は,余震の走向方向の長さと深さ分布からの矩形形状,それ以外は,上から見た余震分布を矩形として,面積を与えた.余震数は30日間としたものを表示する.平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東北地震と呼ぶ)では,Mth=M4.5とみえ,それぞれの余震活動の比較にはこの値を用いた.ここでは,プレート間地震と内陸地震やスラブ内地震をプレート内地震として分けて解析した.プレート間地震は全体的に活動が低調で,プレート内地震は,それに比べて活発で,ばらつきも大きい.最小二乗法で求めると,プレート間とプレート内では,それぞれN=10-3.003S1.138=0.00099S1.138[127.8](紺),N=10-0.5576S0.626=0.2787S0.626 [172.1](橙)([]内はAIC)となった.一方,単純に比例するとすると,それぞれN=0.00685S[119.6](水色),N=0.00887S[173.7](紫紅)なり,プレート間では比例の方が,AICが小さくなる.プレート内では,b値を入れたものの方がよくなる.
(3)考察
定式化したモデルのプレート間とプレート内で,b値は1.138と0.625であり,B式の10のべき数(-b(ΔM+Mth-4.01)は,それぞれ-3.003と-0.5246で,Mthが4.5なので,ΔMは2.14と0.38となり,非現実的な値とはなっておらず,実解析においても,定式化されたモデルは概ね妥当なものと考えられる.今回の解析で,Hokkaido1994やChuetsu2004あるいはHamadohri2011やFukushima2016は回帰式から2~3倍程度ずれており,ばらつきとも言えるが,後者の2つの活動は東北地震の影響で,それぞれの断層面積で生じるべき活動以上に余震数が著しく増加していると考えるといいかもしれない.単位面積当たりの余震の生産性がよくなっているわけで,Sbに余震活動のb値が関わっているとも考えたが,Hamadohri2011の余震活動ではb値が0.766(Mth=0.2)で,小さい地震で数を稼いでいるのではなかった.G-R式のA値5.09であり,他の地震に比べて,やや大きな値となっている.今後,個別の余震活動のΔσの検討や,それ以外に大森・宇津公式の余震の時間的減衰についても検討する.
地震の断層の広がりを余震分布から求めると,その面積が広いほど余震数が多いことに気づく.これに関しては,清野(1977)やYamanaka & Shimazaki(1990)などで研究されている.ここでは,断層面積と余震数の関係について,最近の地震を含めて,定式化を検討した.マグニチュード(M)と断層面積(S,km2)の関係については,次式で示される.
M=logS+4.01・・・【A式】
Kanamori(1977)による地震モーメント(Mo)はモーメントマグニチュード(Mw)との関係はlogMo=1.5Mw+9.1【①】,ここではMw=Mとする.一方,Moは弾性定数μ,平均すべり量D,断層面積SとしMo=μDSであり,ストレスドロップΔσ,係数cとしてD=Δσ/(cμ)S1/2なので,Mo=(Δσ/c)S3/2【②】となる.②を①に代入してM=logS+2/3(log(Δσ/c)-9.1)【③】となる.Δσ=3MPa,c=2.5とすると,A式を得る.次に,新たに定式化した余震数と断層面積の関係式
N(Mth)=10-b(ΔM+Mth-4.01)・Sb・・・【B式】
を示す.マグニチュードの下限Mth以上の積算余震数N(Mth),余震のb値,及び本震マグニチュードMx,最大余震MaでΔM=Mx-Maとする.余震のG-R式はN(Mth)=10A-bMth【④】であり,Shcherbakov et al. (2004)に倣って,最大余震に④を適用すると1=10A-bMa.MxとΔMを用いると1=10A-b(Mx-ΔM)と書け,対数をとって整理するとMx=A/b+ΔM【⑤】となる.ここで,新たな定式化として,M=Mxとして⑤を③に代入・整理すると,A=logSb-b(ΔM-2/3(log(Δσ/c)-9.1)【⑥】,⑥を④に代入・整理すると,N(Mth)=10-b(ΔM+Mth-2/3(log(Δσ/c)-9.1)・Sb【⑦】となる.⑦にΔσとcの値を代入して,B式が得られる.余震数は断層面積のb乗に比例することが分かる.なお、A式とB式から,N(Mth)とMの関係は
N(Mth)=10b(M-ΔM-Mth)・・・・【C式】
となる.
(2)解析事例
気象庁の震源カタログを利用して,本震発生から24時間以内のM3.5以上の余震分布から,断層面積を推定した.ここでは,単純化して,横ずれ断層は,余震の走向方向の長さと深さ分布からの矩形形状,それ以外は,上から見た余震分布を矩形として,面積を与えた.余震数は30日間としたものを表示する.平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震(東北地震と呼ぶ)では,Mth=M4.5とみえ,それぞれの余震活動の比較にはこの値を用いた.ここでは,プレート間地震と内陸地震やスラブ内地震をプレート内地震として分けて解析した.プレート間地震は全体的に活動が低調で,プレート内地震は,それに比べて活発で,ばらつきも大きい.最小二乗法で求めると,プレート間とプレート内では,それぞれN=10-3.003S1.138=0.00099S1.138[127.8](紺),N=10-0.5576S0.626=0.2787S0.626 [172.1](橙)([]内はAIC)となった.一方,単純に比例するとすると,それぞれN=0.00685S[119.6](水色),N=0.00887S[173.7](紫紅)なり,プレート間では比例の方が,AICが小さくなる.プレート内では,b値を入れたものの方がよくなる.
(3)考察
定式化したモデルのプレート間とプレート内で,b値は1.138と0.625であり,B式の10のべき数(-b(ΔM+Mth-4.01)は,それぞれ-3.003と-0.5246で,Mthが4.5なので,ΔMは2.14と0.38となり,非現実的な値とはなっておらず,実解析においても,定式化されたモデルは概ね妥当なものと考えられる.今回の解析で,Hokkaido1994やChuetsu2004あるいはHamadohri2011やFukushima2016は回帰式から2~3倍程度ずれており,ばらつきとも言えるが,後者の2つの活動は東北地震の影響で,それぞれの断層面積で生じるべき活動以上に余震数が著しく増加していると考えるといいかもしれない.単位面積当たりの余震の生産性がよくなっているわけで,Sbに余震活動のb値が関わっているとも考えたが,Hamadohri2011の余震活動ではb値が0.766(Mth=0.2)で,小さい地震で数を稼いでいるのではなかった.G-R式のA値5.09であり,他の地震に比べて,やや大きな値となっている.今後,個別の余震活動のΔσの検討や,それ以外に大森・宇津公式の余震の時間的減衰についても検討する.