[S09P-02] Recent seismic activity off Fukushima and Ibaraki using S-net data
福島県沖から茨城県沖にかけては,プレート境界で発生する地震に加えて,陸側プレート内や沈み込む太平洋プレート内で発生する地震がしばしば大きな被害をもたらす.特に1938年にはM7クラスの逆断層および正断層型の地震が集中的に複数発生するなど,この領域の地震活動の詳細な実像を明らかにする必要がある.今回は,S-net(Seafloor observation network for earthquakes and tsunamis along the Japan Trench:日本海溝海底地震津波観測網)データを用いて,2016年4月1日以降およそ8年間の福島から茨城沖における領域の震源再決定を実施し,福島県沖の2016年11月22日の地震(Mj 7.4,Mw 7.0)及び茨城県沖のM7クラスの地震がおよそ20年間隔で発生する領域とその周辺の地震活動について報告する.震源決定のコードはNonLinLoc(Lomax et al., 2000,2014)を使用し,S-netの各観測点に対してマルチチャネル反射法地震断面図から求めた堆積層厚に基づく補正(西澤ほか,2022)を行った.速度構造モデルは,各地域において実施された構造探査結果を参照し,沈み込む太平洋プレート(Iwasaki et al. (2015)及びLindquist et al. (2004))を考慮した2.5次元構造を用いた.
福島県沖における2016年4月以降の顕著な地震活動の一つである2016年11月22日の地震は,北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型で,陸のプレートの地殻内において南東方向に傾斜する断層面で発生した地震であった.この地震により津波が発生し,また海底地形調査や潜航調査からも海底活断層の存在が示唆された(例えばJAMSTEC, 2017).再決定により得られた地震発生後24時間の震源分布から,本震はその近傍で傾斜40-45度で南東方向に傾斜している断層面の最浅部の深さ6 km付近に位置していることがわかった.震源分布の浅部延長は海底面調査から検出された断層地形の位置にほぼ一致する.一方,余震の震源の深さ分布は北東と南西では異なり,南西ではばらつきが大きく,より深く20kmまで達しており,15km付近には活動の低い領域がある.この分布の特徴は2024年3月まで継続している.
茨城県沖では群発的な地震活動が時々発生するほか,前震活動を伴ったM7クラスのプレート間地震が概ね20年に1度発生している.前回は2008年5月8日Mj7.0を含む地震活動であり,Mj6.3を含む活発な前震活動がその東側で発生していた.2016年4月以降の地震活動を見ると,東北沖地震の最大余震である2011年3月11日15時15分に発生した茨城沖地震(Mj7.6)のすべり域では地震活動が低い.このすべり域の北東では,2021年8月4日Mj 6.0,最大震度3の地震を含む活発な地震活動があり,震源の再決定の結果,地震発生後1ヶ月間の震源分布は海溝軸近傍で陸側プレート下に沈み込みつつある第1鹿島海山の西方の既に海底下に沈み込んだ海山の陸側に集中していた.2016年4月以降の震源分布は,この沈み込んだ海山の麓から西北西方向に地震活動の高い帯状の領域があり,1982年(Mj7.0),2008年(Mj7.0)の地震活動はこの帯状領域のプレート境界で発生していたことを示す.
福島県沖における2016年4月以降の顕著な地震活動の一つである2016年11月22日の地震は,北西-南東方向に張力軸を持つ正断層型で,陸のプレートの地殻内において南東方向に傾斜する断層面で発生した地震であった.この地震により津波が発生し,また海底地形調査や潜航調査からも海底活断層の存在が示唆された(例えばJAMSTEC, 2017).再決定により得られた地震発生後24時間の震源分布から,本震はその近傍で傾斜40-45度で南東方向に傾斜している断層面の最浅部の深さ6 km付近に位置していることがわかった.震源分布の浅部延長は海底面調査から検出された断層地形の位置にほぼ一致する.一方,余震の震源の深さ分布は北東と南西では異なり,南西ではばらつきが大きく,より深く20kmまで達しており,15km付近には活動の低い領域がある.この分布の特徴は2024年3月まで継続している.
茨城県沖では群発的な地震活動が時々発生するほか,前震活動を伴ったM7クラスのプレート間地震が概ね20年に1度発生している.前回は2008年5月8日Mj7.0を含む地震活動であり,Mj6.3を含む活発な前震活動がその東側で発生していた.2016年4月以降の地震活動を見ると,東北沖地震の最大余震である2011年3月11日15時15分に発生した茨城沖地震(Mj7.6)のすべり域では地震活動が低い.このすべり域の北東では,2021年8月4日Mj 6.0,最大震度3の地震を含む活発な地震活動があり,震源の再決定の結果,地震発生後1ヶ月間の震源分布は海溝軸近傍で陸側プレート下に沈み込みつつある第1鹿島海山の西方の既に海底下に沈み込んだ海山の陸側に集中していた.2016年4月以降の震源分布は,この沈み込んだ海山の麓から西北西方向に地震活動の高い帯状の領域があり,1982年(Mj7.0),2008年(Mj7.0)の地震活動はこの帯状領域のプレート境界で発生していたことを示す.