[S09P-03] Characteristics of the M5.4 earthquake that occurred in western Kanagawa Prefecture, Japan, on August 9, 2024
2024年8月9日19時57分ごろ神奈川県西部を中心に最大震度5弱を記録する地震(以降、本地震)が発生した(気象庁地震情報による)。神奈川県温泉地学研究所(以降、温地研)は、本地震について、防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、気象庁、および温地研の地震観測網で得られた波形記録から読み取ったP波S波の到達時刻をもとに震源および発震時刻を推定した(震源:北緯35.4094度、東経139.1564度、深さ12.6 km、発震時刻:19時57分38.4秒)。また、各観測点の上下動振幅と震源からの距離に基づきマグニチュードを5.4と推定した。初動の押し引きの分布から推定したメカニズム解は、震源が北向きに26度あるいは南向きに64度で傾斜した断層面で発生した断層運動(逆断層)であり、北傾斜の断層面を仮定した場合は上盤が南向きに運動したことを示す。
本地震の震源は、弘瀬ほか(2008, 地震)および Nakajima et al. (2009, JGR)が推定したフィリピン海プレート上面付近に位置する。震源断層として北向きに26度で傾斜する面を仮定すると、断層面とプレート境界面とは傾斜が似ているが、フィリピン海プレートが北西方向に沈み込んでいる地域である(Seno et al., 1993, JGR)ことを考慮すると、下盤側の運動はそれに比べて北向き成分が大きい。本地震がプレート境界で発生した可能性はあるが、震源付近は沈み込みから衝突へと収束様式が変化しプレート境界面形状が複雑な地域であり、その判断は難しい。
また、本地震について前震と思われる地震活動を検出した。2009年以降本地震発生までの間に、温地研は本地震の震源から半径2 km以内の領域に30回の地震(マグニチュードは最小で0.4)を検出している。検出頻度は1年に約2回である。一方、本地震発生から約1時間前の18時53分から56分にかけて3回の地震(マグニチュード2.2, 2.4, 0.9)が検出されており、本地震発生直前に震源付近では地震活動が普段の状況から急激に高まっていたことがわかる。
本地震の震源付近は、プレートの収束過程や過去の被害地震の地震像が未解明であり(本多ほか, 2021, 温研報告)、本地震及び余震活動の詳細な調査から、応力場や断層面形状を正確に明らかにしてテクトニクスの理解につなげたい。また、本地震の震源は1923年の関東地震の震源(Kanamori & Miyamura, 1970, 地震研彙報)に近く、本地震と関東地震とは震源断層を共有している可能性もある。テクトニクスの理解に加え、本地震と前震との関連を明らかにすることや今後の地震活動の進展を注視することも重要であると考えられる。
本研究では、防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、気象庁の地震観測データを使用させていただきました。記して感謝いたします。
本地震の震源は、弘瀬ほか(2008, 地震)および Nakajima et al. (2009, JGR)が推定したフィリピン海プレート上面付近に位置する。震源断層として北向きに26度で傾斜する面を仮定すると、断層面とプレート境界面とは傾斜が似ているが、フィリピン海プレートが北西方向に沈み込んでいる地域である(Seno et al., 1993, JGR)ことを考慮すると、下盤側の運動はそれに比べて北向き成分が大きい。本地震がプレート境界で発生した可能性はあるが、震源付近は沈み込みから衝突へと収束様式が変化しプレート境界面形状が複雑な地域であり、その判断は難しい。
また、本地震について前震と思われる地震活動を検出した。2009年以降本地震発生までの間に、温地研は本地震の震源から半径2 km以内の領域に30回の地震(マグニチュードは最小で0.4)を検出している。検出頻度は1年に約2回である。一方、本地震発生から約1時間前の18時53分から56分にかけて3回の地震(マグニチュード2.2, 2.4, 0.9)が検出されており、本地震発生直前に震源付近では地震活動が普段の状況から急激に高まっていたことがわかる。
本地震の震源付近は、プレートの収束過程や過去の被害地震の地震像が未解明であり(本多ほか, 2021, 温研報告)、本地震及び余震活動の詳細な調査から、応力場や断層面形状を正確に明らかにしてテクトニクスの理解につなげたい。また、本地震の震源は1923年の関東地震の震源(Kanamori & Miyamura, 1970, 地震研彙報)に近く、本地震と関東地震とは震源断層を共有している可能性もある。テクトニクスの理解に加え、本地震と前震との関連を明らかにすることや今後の地震活動の進展を注視することも重要であると考えられる。
本研究では、防災科学技術研究所、東京大学地震研究所、気象庁の地震観測データを使用させていただきました。記して感謝いたします。