[S09P-06] Comparison of 2008-2009 seismic activity and aftershocks in the northern end of the aftershock region of the 2024 Noto Peninsula earthquake
日本海東縁部等のひずみ集中帯において、2024年1月1日に能登半島地震(Mj=7.6)が発生した。この地震は2020年12月頃から群発地震が活発に発生しており、これら一連の中で発生したと考えられている。またこの地震は能登半島の沿岸部で発生し、その余震域は上越沖まで発生しているが、この上越沖は海底における定常的な地震観測網がないため、本震が発生する以前の定常的な地震活動を高精度に把握することが困難な領域と考えられる。東京大学地震研究所では2007年中越沖地震などが発生したひずみ集中帯を含むより広範囲での定常的な地震活動の正確な把握を目的として上越沖に長期観測型海底地震計を設置し、2008年12月から2009年10月までの詳細な地震活動の把握を試みた(町田・他2024)。その結果2007年中越沖地震の北西側沿岸では深さ8-13kmにおいて比較的地震活動が活発であり、それより北西側である富山トラフ下では地震活動は低調であるなど上越沖においては定常的な地震は一様に発生していないことがわかった。さらに長期観測型海底地震計による観測を行った期間中、富山トラフの北西側において深さ18km付近で地震活動が局所的に活発な領域があり、周辺で実施した構造探査(Nakahigashi et al., 2011)と比較するとこの深さは下部地殻に相当する。その間上部地殻では地震活動はほとんど見られなかった。その後令和6年1月1日に能登半島地震が発生したが、地震発生直後より実施された海底地震計を用いた緊急海底観測により能登半島地震における詳細な余震活動分布が求められた(篠原・他, 2024)。その結果、本研究で示された深さ18km付近においても余震が多く発生しており、さらに余震観測期間においては2008年から2009年の間には見られなかったそれより浅い12km周辺においても地震活動が活発化していることが示され、深さ方向において地震活動が変化したことが考えられる。能登半島において2020年から発生した群発地震の発生では、下部地殻から上部地殻へ供給される流体の関与が示唆されているが(Nakajima et al., 2022)、令和6年能登半島地震の余震域においても余震域北端部で見られる深さ方向の地震活動の変化から、流体による寄与等の影響等がこの領域における地震発生の場に変化を与えることが示唆される。