日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S09. 地震活動とその物理

[S09P] PM-P

2024年10月21日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S09P-07] 能登半島地域の地震活動の時空間発展を理解するための長期連続波形解析 -10年超の連続波形と数万のテンプレート波形を用いて-

*佐々木 萌香1、川方 裕則1、平野 史朗2 (1. 立命館大学、2. 弘前大学)

能登半島地域は日本のここ20年間の地震活動の中で最も地震活動が活発な地域の1つである.能登半島北西部では,2007年にMw 6.7の地震が発生した(2007年能登半島地震,図a,Eq. 1).その後2020年3月に2007年能登半島地震の震源の東端側でMw 5.3 のイベントが発生した(図a,Eq. 2).能登半島北東部では,2020年12月頃から地震活動が活発化し,2023年にはMw 6.2 のイベントが発生した(図a,Eq. 3). さらに2024年1月1日に,余震域が長さ約150kmの範囲に広がるイベント(Mw 7.5)が発生した(2024年能登半島地震,図a,Eq. 4).
能登半島地域での地震活動について,微小地震の検出を利用した時空間的な発展についてのこれまで発生したイベントごとの解析が行われてきた.2007年能登半島地震について,Doi and Kawakata (2013, EPS)は本震発生の12分前から本震近傍で互いに同じような波形を持つ前震が4つ発生していたことを示し,前震の時空間的な発生パターンが2008年の岩手・宮城内陸地震と類似していることを明らかにした.また,Kato and Obara (2014, GRL)は, 余震域の広がり方が段階的であることを明らかにした. 2023年のMw 6.2のイベントについて,Kato (2023, GRL)は,余震活動の時空間的なマイグレーションに地殻流体の湧昇が関係している可能性を示した.
気象庁カタログに記載されていない微小な地震を検出することは,地域的な地震活動の詳細を理解するための方法として有用である.微小地震の検出には,連続波形記録とテンプレート波形(テンプレート波形には既知のイベントの波形を使用する)との相互相関係数(Cross-correlation Coefficient; CC)やそれらを足し合わせたNCC(Network Correlation Coefficient)の計算が利用される(Gibbons and Ringdal,2006, GJI).本研究では,能登半島地域の長期的な地震活動の背景について理解するために,10年超の連続波形記録を使用して,能登半島地域の長期間の時空間的な特徴について検討する.
解析期間はEq. 1からEq. 4までを含む2007年1月から2024年1月上旬とし,連続波形記録は能登半島に位置する防災科学技術研究所高感度地震観測網(Hi-net)と気象庁(JMA)の観測点(図1)の3成分連続波形記録を使用した.また,テンプレート波形を切り出す微小地震は気象庁一元化震源地震カタログを使用して選定した.今回,10年超の連続波形と数万のテンプレート波形が必要であるため,波形相関の計算を行うには計算処理に膨大な時間を必要とする.この問題を解決するために,NCC計算には,最新のFortranコードであるDallelXを採用した(Hirano & Naoi 2024, JpGU).
能登半島北西部から能登半島北東部に位置する全観測点の連続波形記録を使用してNCCを計算するには地震活動の活発な地域が広範囲であり,遠方の観測点では極微小地震の信号がノイズに埋もれてしまうことを考慮し,能登半島の北西側の3観測点と能登半島の北東側の3観測点の2つのネットワークに分けて解析を行った.図bと図cは,2つのネットワークで計算したNCC(本研究では9成分のCCの平均として定義)の結果の一部例を示す.この結果から,図cの示すように,2021年には2020年3月に発生したMw 5.3 のイベント(Eq. 2)と高いNCCを示すイベント候補が検出された.本発表では,能登半島に位置する観測点の10年超の連続波形記録を使用したNCCの計算結果を解析し,能登半島地域の長期間の時空間的な特徴について報告する.