[S09P-13] Exploring Classification Indicators of Seismic Signals Toward Understanding the Causes of Tectonic Tremors
プレート沈み込み帯浅部では、「普通地震」と「微動」の少なくとも二種類の地震イベントが発生する。二種類は観測される地震波形の特徴で区別されており、同程度のサイズの普通地震と比べて、微動のシグナルは①継続時間が長く、②立ち上がりが不明瞭で、③10Hz以上の高周波成分に枯渇することが知られている。更に、微動は④震央近傍における距離減衰が激しく、⑤しばしば超低周波シグナル(<0.1Hz)を伴う。大きなサイズの微動ではこれらの特徴は顕著で、普通地震との区別は容易である。他方、小さなサイズの微動では、観測点が少ない上にシグナル継続時間は普通地震のそれに近くなり、普通地震との区別が難しくなる。これらの小さな地震イベントを含めて分類を可能にする新しい指標を探索し確立することは、普通地震と微動の違いを生み出す成因の解明に向けた重要課題である。
本研究では、⑥似た波形の地震イベント発生の有無、⑦水平動の粒子軌跡の違い、の二つを新しい分類指標として検討する。これらの指標は、微動の震源近傍に地震波を強く散乱する短波長パッチ構造が局在するときに有効と期待される(Toh et al, 2023)。具体的には、震源近傍に強散乱構造がある時、小さな(e.g. 地震波長の1/3以下)震源位置のズレにより地震波形が大きく変化することが理論波形計算により示されている。従って、⑥について普通地震は互いに似た波形の地震イベントが見つかりやすいのに対し、微動はそうで無いことが期待される。また⑦について、微動の粒子軌跡は、震源近傍の強散乱構造を反映してあらゆる方向に振動することが期待される。
これまでに、南海トラフ浅部に展開されるDONETの記録を用いて、上述の⑥と⑦の有効性を検討した。2016年1年間の記録にエンベロープ相関法(Mizuno and Ide, 2019)を適用し、普通地震や微動を区別せずに約25000個の地震イベントを検出した。この結果には遠地地震やT相のイベントも含まれる。解析対象を、主に普通地震や小さな微動が含まれる、継続時間が15秒以下の13000個のイベントに絞った上で、Matched filter technique (Yamaguchi et al., 2019)を利用し、各地震イベント間の波形の相互相関係数を総当たりで求めた。これにより、13000個中に自身と似た波形(CC>0.7)の地震イベントが存在したグループと、存在しなかったグループに分けた。例えば、4月3日–29日にDONET下で微動が活発だった期間は、多くのイベントが後者に分類された。逆に4月1日三重県南東沖地震(M6.5)の余震は多くが前者に分類された。⑥は有効な指標となる可能性がある。⑦については、前者グループに線形な軌跡(普通地震)が多少多く見られるものの、それは震源から観測点が近い場合に限られる可能性がある。但し、⑦はT相イベントの特定には有用である。発表では、2016年1年間に検出された地震イベントに、複数の分類指標を適用した定量的な結果を議論する。
本研究では、⑥似た波形の地震イベント発生の有無、⑦水平動の粒子軌跡の違い、の二つを新しい分類指標として検討する。これらの指標は、微動の震源近傍に地震波を強く散乱する短波長パッチ構造が局在するときに有効と期待される(Toh et al, 2023)。具体的には、震源近傍に強散乱構造がある時、小さな(e.g. 地震波長の1/3以下)震源位置のズレにより地震波形が大きく変化することが理論波形計算により示されている。従って、⑥について普通地震は互いに似た波形の地震イベントが見つかりやすいのに対し、微動はそうで無いことが期待される。また⑦について、微動の粒子軌跡は、震源近傍の強散乱構造を反映してあらゆる方向に振動することが期待される。
これまでに、南海トラフ浅部に展開されるDONETの記録を用いて、上述の⑥と⑦の有効性を検討した。2016年1年間の記録にエンベロープ相関法(Mizuno and Ide, 2019)を適用し、普通地震や微動を区別せずに約25000個の地震イベントを検出した。この結果には遠地地震やT相のイベントも含まれる。解析対象を、主に普通地震や小さな微動が含まれる、継続時間が15秒以下の13000個のイベントに絞った上で、Matched filter technique (Yamaguchi et al., 2019)を利用し、各地震イベント間の波形の相互相関係数を総当たりで求めた。これにより、13000個中に自身と似た波形(CC>0.7)の地震イベントが存在したグループと、存在しなかったグループに分けた。例えば、4月3日–29日にDONET下で微動が活発だった期間は、多くのイベントが後者に分類された。逆に4月1日三重県南東沖地震(M6.5)の余震は多くが前者に分類された。⑥は有効な指標となる可能性がある。⑦については、前者グループに線形な軌跡(普通地震)が多少多く見られるものの、それは震源から観測点が近い場合に限られる可能性がある。但し、⑦はT相イベントの特定には有用である。発表では、2016年1年間に検出された地震イベントに、複数の分類指標を適用した定量的な結果を議論する。