日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

一般セッション » S13. 地殻流体と地震

[S13P] PM-P

2024年10月21日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S13P-02] 東広島市周辺で発生する下部地殻深部地震の原因解明

*居樹 幸太朗1 (1. 兵庫県立大学大学院)

東広島市周辺で発生する下部地殻深部地震の原因解明
兵庫県立大学大学院 減災復興政策研究科 居樹幸太朗
1.はじめに
 中国地方では主に約20kmよりも浅い部分で地震が発生することが知られているが、東広島市周辺においては約30kmでの地震が集中的に発生している。(以下“クラスター”)今回の研究では、なぜこの地域のみ他と比較して深い部分で発生しているのかを調査した。
2.研究手法
 クラスター発生の要因として、先行研究において流体が流入して断層が小さな応力で動きやすくなった(Terakawa et al.,2013, Imanishi and Uchide,2023)という仮説が立てられている。また、断層に流体が流入すると本来ならば断層がほとんど動かない方向にほとんど動かないはずの小さな力で動く(Terakawa et al.,2013,Nakagomi et al.,2021)ことが分かっている。さらに、沈み込み帯で深部低周波地震があれば流体が存在している(Shiomi et al.,2021)と推測できる。したがって、GMT6で通常地震と深部低周波地震の震源およびその発震機構解の平面的・空間的な分布を可視化した。なお、震源データは気象庁(一元化カタログ)、発震機構解データは防災科学技術研究所(F-net)よりいただいた。
3.結果・考察
【震源分布】
 東広島市の地下約30km付近にてクラスターは、とがった部分が下に向いた円錐状に分布していることが分かった。また、クラスター内では主にM3未満の地震が多く発生しており、クラスターの真上では浅部の地震はほとんど発生していないことが分かった。このことは、先行研究における「流体があるならば、小さな地震が多く発生する」研究結果と整合的である。
【発震機構解】
 山陰の発震機構解は、ほとんどのもので角度が揃っていた。しかしクラスターのものは、2つが紙面に垂直な方向を軸として約90°ずれていることが分かった。このことは、先行研究における「流体があるならば、軸がさまざまな方向に向いている発震機構解が検出できる」研究結果と整合的である。
【深部低周波地震】
 深部低周波地震は低周波を発し、ずれ動く時間がとても長い地震のことであり、流体があると発生しやすい。しかし東広島市付近では深部低周波地震が発生していないにもかかわらず、クラスターが発生している(図)。海洋プレートは玄武岩が主であり、それが含水化すると蛇紋岩に変成する。蛇紋岩は約600℃以上となる40〜100km付近で脱水をすること、フィリピン海プレートは比較的新しく温かいことを踏まえると、クラスター周辺では、40km付近で脱水が起きていると考えられる。そして脱水した付近に断層の先端があり、そこから流体が流入しているのではないかと考えている。
4.参考文献
弘瀬冬樹,”プレート形状“,HIROSE Fuyuki’s HP,2022,https://www.mri-jma.go.jp/Dep/sei/fhirose/plate/PHS.html, (参照2023-11-28)Baba et al. (2002, PEPI) (参照2023-11-28)Nakajima and Hasegawa (2007, JGR) (参照2023-11-28)Hirose et al. (2008, JGR) (参照2023-11-28)
5.謝辞
 この研究を進めるにあたり、志藤あずさ先生から貴重なご指導とご助言をいただきました。謹んで御礼申し上げます。