The 2024 SSJ Fall Meeting

Presentation information

Room D

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] AM-1

Wed. Oct 23, 2024 9:00 AM - 10:30 AM Room D (Medium-sized Conference room 201 (2F))

chairperson:Hiroe Miyake(The University of Tokyo), Nobuyuki Morikawa

9:00 AM - 9:15 AM

[S15-01] Verification of the crustal velocity structure model in the Kinki region using the measured phase velocity in the period (10-50 s) band

*Hirotoshi UEBAYASHI1, Takashi Akazawa2, Tomotaka Iwata3 (1. Institute for Integrated Radiation and Nuclear Science, Kyoto University, 2. Hanshin Consultants Co., LTD., 3. Prof. Emeritus, Kyoto University)

日本列島における地殻速度構造の推定が地震波トモグラフィー法(Zho et al., JGR,1994; Nakajima & Hasegawa, JGR, 2007; Matsubara et al., Tectonophysics, 2008),人工地震波探査法(伊藤他, 京大防災研年報, 2007),レシーバー関数法(Shiomi, et al., Tectonophysics, 2006)によって行われてきた。一方,表面波位相速度を用いた推定は1960年代にはじまり(Aki & Press, GJI, 1961; Kaminuma, BERI, 1966),近年において数多くの遠地地震記録によるレイリー波位相速度から,各地域の速度構造の推定が行われた(竹添ほか,JPGU予稿集, 2006)。後者ではF-net速度型強震計による記録が用いられ,観測点間隔に起因したと思われる周期40秒以上の帯域が対象とされた。強震動予測などへの利用を目的とした精度の高い地殻速度構造モデルの設定に際して,40秒より短周期の位相速度についても同定する必要があると考えられる。また,冒頭に記した幾つかの手法により推定された速度構造についても,表面波位相速度を用いた検証を行っておくことが望ましい。
 近畿地方では,大阪平野および京都,奈良盆地の内外に展開した関西地震観測研究協議会(CEORKA)が実施および記録収集している速度型強震計を用いたアレー観測が行われている。この観測網では,人口密集地である堆積層観測点での震動特性解明のために利用されているが,2009年より一部の地点で開始した連続観測(2011年以降,全地点へ展開)により,特に,遠地の大地震の表面波なども広帯域で高いSN比を持って記録されるようになってきた。そこで,我々はCEORKAに加えF-netおよび独自観測点(速度型強震計)の記録を用いて,近畿地方における周期約10~50秒帯域の表面波位相速度を同定し,冒頭に記した文献を参照して設定した1次元速度構造モデルによる位相速度との比較および検証を行った.
 本要旨では,CEORKAによる25観測点で得られた2011年東北地方太平洋沖地震記録へセンブランス解析を適用し,同定したレイリー波とラブ波の位相速度を示す。センブランス解析は9個の周波数帯域それぞれに対してcosine型のバンドパスフィルター(ピーク周波数0.020~0.126 Hz間に分布)波形を求め,各バンド幅に応じて変化させた時間窓ごとに行った。また,センブランス解析は,上下震動(VRT)成分(レイリー波)および仮定した伝播方位と平行する水平震動(PAR)成分(レイリー波と見なした)および同じく直交する水平震動(ORT)成分(ラブ波とみなした)の計3成分に対して行った。センブランス値が0.7以上となる位相速度と到来方位を採用し,この条件を満たした位相速度の平均と±標準偏差を図化した。
 大阪堆積盆地直下の地殻速度構造の基本モデル(Model-1)を前述のように設定した。さらに,基本モデルのS波とP波速度を±5%変動させたケース(Model-21,22),各層境界面を±10%変動させたケース(Model-31,32)および堆積層を考慮した二つのケース(Model-41,42)を設定した.以上の7通りのモデルについて、レイリー波とラブ波の位相速度を求め,観測位相速度と比較した。その結果,VRT成分とPAR成分はレイリー波,ORT成分はラブ波の理論位相速度によく馴染んだ.特に,高い分散性を示した0.05 Hz以下の位相速度において,VRTおよびORT成分は基本モデルにほぼ一致した。
 発表では,波の到来方位の違いや近畿地方の大まかな領域の違いによる位相速度の変化の結果についても述べる予定である。

謝辞)関西地震観測研究協議会の強震観測網,防災科学技術研究所の広帯域地震観測網および京都大学複合研による地震動観測記録を利用した。本研究は、東京大学地震研究所・京都大学防災研究所による拠点間連携共同研究プログラムの一つである「地震ハザードにおける地下構造の影響の定量的評価の研究」(代表者:三宅弘恵,申請者:吉田邦一)の援助を受けました。