9:15 AM - 9:30 AM
[S15-02] Toward ground motion modeling incorporating variability of source parameters
シナリオ地震の強震動予測において,震源や地震動の平均像を目指した予測だけでなく,多数回試行が積極的に公表されるようになってきた.例えば,地震調査研究推進本部地震調査委員会 (2016) による相模トラフ巨大地震の長周期地震動の検討,Maeda et al. (2016) による南海トラフ巨大地震の長周期地震動の検討,Iwaki et al. (2017) による内陸地殻内地震の広帯域地震動の検討などが挙げられる.その多くは地震内のばらつき(within-event variability)と呼ばれる,1つの地震シナリオを対象とした際の破壊開始点やアスペリティ位置の変化による地震動の空間分布の評価や,破壊伝播速度の変化による地震動強さの評価に留まっている.この理由は,入力とする各々の震源パラメータやスケーリングのばらつきと,出力となる地震動のばらつきは,両者とも地震内のばらつきに加えて地震間のばらつき(between-event variability)を含むため,入力と出力に対して1対1のばらつきの関係を得ることが困難であり,結果として震源パラメータのばらつきを重複カウントする可能性が高いためと考えらえる(例えば Cotton et al., 2013).一方,2016年熊本地震などを契機に,震源のばらつきを考慮した強震動予測が必要とされている.
最近,地震動のばらつきを分解して理解するため,震源特性・伝播経路特性・サイト特性の非エルゴード項を周期ごとに推定する研究が進んでいる(例えばBaltay et al., 2017; Lavrentiadis et al., 2023).非エルゴード解析は,各特性の残差(residual)だけでなく,そのばらつきも周期ごとに求めている特徴を有する.日本の強震記録への適用例はMorikawa and Fujiwara (2008),Rodriguez-Marek et al. (2011),Hikita and Tomozawa (2023),Sung et al. (2024) などがある.Morikawa et al. (2024) のK-NET/KiK-netフラットファイルを用いたSung et al. (2024) の非エルゴード解析では,ごく短周期側では震源起因の地震間のばらつきが最も大きく,長周期になるにつれてこのばらつきが半減し,伝播経路特性やサイト特性のばらつき,および地震動予測式のばらつきと似通う結果を得ている.
そこで本発表では,これまで発生した地震により得られている震源パラメータのばらつきが予測地震動に与える影響を検討することとした.具体的には,断層面積を固定して地震モーメントを変化させるケースを扱う.事前検討の結果,幅広い地震規模において震源のばらつきを導入するには,断層面積に対するアスペリティ面積比が一定となる仮定を導入しないと,多くの震源パラメータの物理的関係式を満たせないことが分かった.そのため,断層面積に対するアスペリティ面積比が一定値となる研究が増えている事例を踏まえ(例えば,田島・他 (2013),宮腰・他 (2015),長嶋・他 (2021)),以下の2つの案を検討する.1つ目は,地震調査研究推進本部の震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)において,地震モーメントと断層面積のスケーリングの経験式にばらつきを与えた場合に,地震モーメントと短周期レベルのスケーリングの経験式として,傾きを可変とする藤堂・他 (2022, 2023) などを適用する案である.2つ目は,地震モーメントの変化倍率に伴って,応力降下量と短周期レベルを同じ倍率で変化させ,地震動も同じ倍率となる案である.つまり,地震モーメントに対する断層面積のスケーリングと短周期レベルのスケーリングについて,1つ目の案は完全相関ではなく,2つ目の案は完全相関させる考え方である.1つ目の案は,地震動の面的分布の整合性にやや課題が生じる一方,2つ目の案は,非エルゴード地震動モデルにおける震源項と地震動特性項の偶然的ばらつきと比較的良い一致を示すことがわかった.
最近,地震動のばらつきを分解して理解するため,震源特性・伝播経路特性・サイト特性の非エルゴード項を周期ごとに推定する研究が進んでいる(例えばBaltay et al., 2017; Lavrentiadis et al., 2023).非エルゴード解析は,各特性の残差(residual)だけでなく,そのばらつきも周期ごとに求めている特徴を有する.日本の強震記録への適用例はMorikawa and Fujiwara (2008),Rodriguez-Marek et al. (2011),Hikita and Tomozawa (2023),Sung et al. (2024) などがある.Morikawa et al. (2024) のK-NET/KiK-netフラットファイルを用いたSung et al. (2024) の非エルゴード解析では,ごく短周期側では震源起因の地震間のばらつきが最も大きく,長周期になるにつれてこのばらつきが半減し,伝播経路特性やサイト特性のばらつき,および地震動予測式のばらつきと似通う結果を得ている.
そこで本発表では,これまで発生した地震により得られている震源パラメータのばらつきが予測地震動に与える影響を検討することとした.具体的には,断層面積を固定して地震モーメントを変化させるケースを扱う.事前検討の結果,幅広い地震規模において震源のばらつきを導入するには,断層面積に対するアスペリティ面積比が一定となる仮定を導入しないと,多くの震源パラメータの物理的関係式を満たせないことが分かった.そのため,断層面積に対するアスペリティ面積比が一定値となる研究が増えている事例を踏まえ(例えば,田島・他 (2013),宮腰・他 (2015),長嶋・他 (2021)),以下の2つの案を検討する.1つ目は,地震調査研究推進本部の震源断層を特定した地震の強震動予測手法(「レシピ」)において,地震モーメントと断層面積のスケーリングの経験式にばらつきを与えた場合に,地震モーメントと短周期レベルのスケーリングの経験式として,傾きを可変とする藤堂・他 (2022, 2023) などを適用する案である.2つ目は,地震モーメントの変化倍率に伴って,応力降下量と短周期レベルを同じ倍率で変化させ,地震動も同じ倍率となる案である.つまり,地震モーメントに対する断層面積のスケーリングと短周期レベルのスケーリングについて,1つ目の案は完全相関ではなく,2つ目の案は完全相関させる考え方である.1つ目の案は,地震動の面的分布の整合性にやや課題が生じる一方,2つ目の案は,非エルゴード地震動モデルにおける震源項と地震動特性項の偶然的ばらつきと比較的良い一致を示すことがわかった.