The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] AM-1

Wed. Oct 23, 2024 9:00 AM - 10:30 AM Room D (Medium-sized Conference room 201 (2F))

chairperson:Hiroe Miyake(The University of Tokyo), Nobuyuki Morikawa

9:45 AM - 10:00 AM

[S15-04] Epistemic uncertainties related to ground motion models

*Nobuyuki MORIKAWA1, Asako IWAKI1, Hiroyuki FUJIWARA1 (1. National Research Institute for Earth Science and Disaster Resilience)

日本の強震観測は70年以上の歴史があり、強震動記録に基づいて経験的に求められるいわゆる「距離減衰式」に関する研究も多く行われてきた。特に、1995年兵庫県南部地震以後に整備された震度情報ネットワークなどの高密度に整備された強震観測網によって、現在では質、量ともに世界最大級の強震動記録が得られており。その豊富なデータに基づいて、最近では従来の回帰式によるモデルだけでなくAIを用いた「地震動予測モデル」の開発が多く行われるようになってきた。また、マグニチュード5程度以下の中小規模の地震記録の活用によって、非エルゴード的なモデルの構築が試みられるようになってきている。これらにより、データが充実しているマグニチュード5程度以下で震源までの距離が数10kmから200km程度の範囲における地震動の予測精度は確実に高まっている。

一方で、震源断層から数km以内の「断層ごく近傍」やマグニチュード8クラス以上の巨大地震による記録は現状でもきわめて少なく、地域も限定される。すなわち、震源断層ごく近傍や巨大地震を対象とした強震動予測にはまさしく「認識論的不確定性」が存在している。内陸部や沿岸海域に多数の活断層が存在し、南海トラフにおいてマグニチュード9クラスの地震の発生可能性が示されている日本の地震ハザード評価を行うためには、地震動予測モデルを外挿して適用することとなり、これらの強震動予測における「認識論的不確定性」を適切に考慮する必要がある。そのためには、1つの地震動予測モデルのみで評価することは不可能であり、共通のデータセットから求められた複数の地震動予測モデルを用いることが必須である。ここで、モデルの外挿範囲においても偶然的ばらつきは存在するので、認識論的不確定性を考慮するためには、複数のモデル間でばらつきの考え方(各要因が認識論的不確定性、偶然的ばらつきのどちらに分類されるか)についても共通となっていなければならない。偶然的ばらつきにはモデルの説明能力不足に起因するものも含むことから、特に非エルゴード的な地震動予測モデルの構築ではこの点に留意する必要がある。アメリカではNGAプロジェクトによって構築された複数の地震動予測モデルをもとにUSGSによる全米の地震ハザードマップが作成されており、日本においても同様な枠組みによる地震動予測モデルの構築と認識論的不確定性を考慮した地震ハザード評価が必要である。

なお、将来的に断層ごく近傍や巨大地震の記録が蓄積されていくことが、認識論的不確定性の低減、地震動予測精度向上に直接つながることは言うまでもない。したがって、海域を含めた高密度な強震観測網運用の継続はきわめて重要である。

謝辞:本検討は防災科学技術研究所の「自然災害のハザード・リスクに関する研究開発」として実施した。