The 2024 SSJ Fall Meeting

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Room D

Regular session » S15. Strong ground motion and earthquake disaster

[S15] AM-2

Wed. Oct 23, 2024 10:45 AM - 12:00 PM Room D (Medium-sized Conference room 201 (2F))

chairperson:Yasumaro Kakehi, Shinichi Matsushima(DPRI, Kyoto University)

10:45 AM - 11:00 AM

[S15-07] Strong ground motions from earthquakes with different focal depths ocurring in Kyushu arc

*Yasumaro KAKEHI1 (1. Kobe University)

九州弧で発生した深さの異なる3つの地震による強震動を比較した。比較したのは,2006年6月12日の大分県西部のスラブ内地震(MW 6.4,深さ145.17 km,以下イベント1),2024年7月30日の日向灘のスラブ内地震(MW 5.2,深さ48.2 km,以下イベント2),2019年5月10日の日向灘のプレート境界地震(MW 6.2,深さ25.46 km,以下イベント3)で,図(a)に示すように,この3地震の震央はほぼ一直線に並ぶ。解析には防災科学技術研究所の高密度強震観測網K-NET,KiK-netの強震記録を使った。図(b),(c),(d)に各地震による最大加速度振幅(PGA)の空間分布を示す。震源深さが145.17 kmと非常に深いイベント1の場合,九州弧の前弧側と背弧側で加速度振幅に明瞭なコントラストが見られる(前弧側で大きく,背弧側で著しく小さい)。これは島弧の前弧側で媒質のQ値が高く,背弧側で低いという減衰構造を反映し,高周波地震波の振幅に明瞭なコントラストが生じたものと考えられる。また,九州弧の前弧側の浅部側延長に位置する中国地方や四国で,振幅の大きい領域が遠方まで広がっている様子が明瞭に見てとれる。これは高Q値のスラブに高周波地震波がトラップされ,あまり減衰を受けずに遠方まで伝播したことによると推定される。震源深さが48.2 kmとイベント1に比べてかなり浅いイベント2の場合,九州弧の前弧側と背弧側での振幅のコトントラストが見られるが,イベント1の場合ほど明瞭ではない。さらに震源の浅い(25.46 km)イベント3の場合,背弧側での高周波地震波の減衰は明瞭に見られず,振幅の大きい領域が背弧側にまで広がっている。またイベント2と3では,イベント1で見られた中国地方や四国での大振幅の広がりは見られない。高周波地震波の前弧側と背弧側の振幅のコントラストの見え方の違いが震源の深さによって異なることは,震源が深い地震の場合,高Q値の前弧側媒質と低Q値の背弧側媒質を伝播する距離が長く,高周波地震波の減衰の差が大きくなるために前弧側と背弧側のコントラストが明瞭となるのに対し,震源が浅い地震の場合は伝播距離が短くコントラストが不明瞭となると解釈できる。さらにそれに加えて,震源が深い地震の場合,震源距離が大きくなることに伴い,地表面での幾何減衰項の空間変化がゆるやかなのに対し,震源が浅い地震の場合,震源距離が小さく地表面での幾何減衰項の空間変化が急で,震央付近の振幅大の領域が強調されてしまうことになる。後者の場合,震央距離の大きい遠方での地震波の振幅分布は急激に値が減少する幾何減衰項によりマスクされ,結果的に震央付近の振幅分布のみ強調されることになる。即ち,震源の浅い地震の場合,島弧全体の減衰構造を反映した振幅分布がこの幾何減衰項によるマスク効果で震央付近を除く領域ではマスクされてしまうことになる。以上の2つの効果の合わせ技により,高周波地震波の振幅の前弧側と背弧側のコントラストは,深い震源の場合は明瞭に,浅い震源の場合は不明瞭になると解釈できる。震源の浅いイベント2と3では,震源の深いイベント3と異なり中国地方と四国での振幅が小さい。中国地方に関してはそもそもイベント2と3の震源位置から離れていることから別としても,四国でのPGAの空間分布からは,イベント2と3では高Q値スラブのトラップ効果がほとんど現れていないように見受けられる。これを高周波地震波が高Q値スラブにトラップされる伝播距離の違いだけで説明するのは困難で,単純な解釈は難しいと考えられる。