[S16P-01] Temporary Observation of Strong Motions in the Kanazawa Plain.
石川県の金沢平野は日本海に面した堆積平野である。河北郡津幡町から白山市にかけて、南東側の宝達丘陵の境には、主要活断層帯の一つである森本・富樫断層帯が位置している。金沢平野の下には、新第三紀中新世の火山岩から第四紀堆積物が3～4 km程度の厚さで堆積している。京都大学防災研究所では、文部科学省科学技術基礎調査等委託「森本・富樫断層帯における重点的な調査観測」の一環として、金沢平野内の地震動増幅・伝播特性の詳細な把握のため、2022年9月より、金沢市8地点及び白山市3地点の計11地点での臨時強震観測を開始した。
臨時強震観測点は、既存の強震観測点・震度観測点（図1の□印）の分布を考慮して、既存観測点のない地域に重点的に配置した（図１の○印）。観測点の地表地質は、観測点によって異なり、沖積層、手取川扇状地堆積物、崖錐堆積物、中位段丘堆積物（小立野面）、朝ヶ屋泥岩層である。このうち、9地点には旧アカシ製加速度計JEP-6A3及び白山工業製LS-8800、2地点（MTSV10とMTSV11）には東京測振製速度型強震計VSE-355G3及び白山工業製LT-7700を設置している。いずれもオフラインでの連続観測であり、約3ヶ月に1回の頻度でデータ回収及びバッテリ交換を行っている。2024年6月初め時点で、約200 の地震記録が得られている。
現在までで、最も大きな震度を観測した地震は、2024年1月1日16時10分に発生した2024年能登半島地震（M7.6）であった。この地震では、金沢地方気象台で震度5弱（計測震度5.0）、白山市役所で震度4（計測震度4.2）が観測されている。臨時強震観測点での計測震度相当値は4.1～5.4であり、震度階級で4～5強の範囲で違いが見られた（図1）。金沢市内の平野部の観測点では、震源からのS波以降も、振幅の大きな後続動が比較的長時間継続する傾向が見られた。特に、河北潟南岸に位置するMTSV11では、最大地動加速度166 cm/s2、最大地動速度42 cm/sの地震動が観測された。水平動で最大加速度を記録した時刻付近以降から、短周期成分が少なくなる傾向が認められ、観測点近傍で地盤変状が生じたことも合わせると、浅部地盤の非線形化が生じたと考えられる。一方で、手取川扇状地に位置する観測点では、後続動は顕著ではなかった。平野内の観測点での擬似速度応答スペクトルには、深部地盤による増幅に対応する周期約5～7秒での振幅の増幅が見られた。
また、金沢地方気象台での震度計の波形記録が公開されている46地震（M4.1～7.6）について、各臨時強震観測点での計測震度相当値と気象台での計測震度の差を調べた。その結果、手取川扇状地及びその周辺に位置するMTSM01～04では震度が相対的に小さかった。海岸に近い沖積平野に位置するMTSM05、MTSM08、MTSV11は気象台とほぼ同程度、MTSM06やMTSM07もやや小さめ、MTSM09やMTSV10では、気象台の震度よりもやや大きめとなるなど、空間的な特徴を掴むことができた。このほか、スペクトル比によるサイト特性の周波数特性の違いについても検討を進めている。
以上のように、臨時強震観測を行うことで、従来よりも空間的に詳細な地震動分布やその特徴を把握することができている。臨時強震観測は2024年度末まで継続する予定である。
臨時強震観測の実施にあたり、石川県危機管理監室、金沢市教育委員会、白山市教育委員会、白山市立笠間中学校、白山市立北辰中学校、白山市立光野中学校、金沢市立額中学校、金沢市立緑中学校、金沢市立高岡中学校、金沢市立紫錦台中学校、金沢市立港中学校、金沢市立森本中学校、金沢市立内川小中学校、石川県消防学校のお世話になっている。また、国立研究開発法人防災科学技術研究所、気象庁、石川県震度情報ネットワークシステム、港湾地域強震観測の強震記録を使用した。以上、記して感謝いたします。
臨時強震観測点は、既存の強震観測点・震度観測点（図1の□印）の分布を考慮して、既存観測点のない地域に重点的に配置した（図１の○印）。観測点の地表地質は、観測点によって異なり、沖積層、手取川扇状地堆積物、崖錐堆積物、中位段丘堆積物（小立野面）、朝ヶ屋泥岩層である。このうち、9地点には旧アカシ製加速度計JEP-6A3及び白山工業製LS-8800、2地点（MTSV10とMTSV11）には東京測振製速度型強震計VSE-355G3及び白山工業製LT-7700を設置している。いずれもオフラインでの連続観測であり、約3ヶ月に1回の頻度でデータ回収及びバッテリ交換を行っている。2024年6月初め時点で、約200 の地震記録が得られている。
現在までで、最も大きな震度を観測した地震は、2024年1月1日16時10分に発生した2024年能登半島地震（M7.6）であった。この地震では、金沢地方気象台で震度5弱（計測震度5.0）、白山市役所で震度4（計測震度4.2）が観測されている。臨時強震観測点での計測震度相当値は4.1～5.4であり、震度階級で4～5強の範囲で違いが見られた（図1）。金沢市内の平野部の観測点では、震源からのS波以降も、振幅の大きな後続動が比較的長時間継続する傾向が見られた。特に、河北潟南岸に位置するMTSV11では、最大地動加速度166 cm/s2、最大地動速度42 cm/sの地震動が観測された。水平動で最大加速度を記録した時刻付近以降から、短周期成分が少なくなる傾向が認められ、観測点近傍で地盤変状が生じたことも合わせると、浅部地盤の非線形化が生じたと考えられる。一方で、手取川扇状地に位置する観測点では、後続動は顕著ではなかった。平野内の観測点での擬似速度応答スペクトルには、深部地盤による増幅に対応する周期約5～7秒での振幅の増幅が見られた。
また、金沢地方気象台での震度計の波形記録が公開されている46地震（M4.1～7.6）について、各臨時強震観測点での計測震度相当値と気象台での計測震度の差を調べた。その結果、手取川扇状地及びその周辺に位置するMTSM01～04では震度が相対的に小さかった。海岸に近い沖積平野に位置するMTSM05、MTSM08、MTSV11は気象台とほぼ同程度、MTSM06やMTSM07もやや小さめ、MTSM09やMTSV10では、気象台の震度よりもやや大きめとなるなど、空間的な特徴を掴むことができた。このほか、スペクトル比によるサイト特性の周波数特性の違いについても検討を進めている。
以上のように、臨時強震観測を行うことで、従来よりも空間的に詳細な地震動分布やその特徴を把握することができている。臨時強震観測は2024年度末まで継続する予定である。
臨時強震観測の実施にあたり、石川県危機管理監室、金沢市教育委員会、白山市教育委員会、白山市立笠間中学校、白山市立北辰中学校、白山市立光野中学校、金沢市立額中学校、金沢市立緑中学校、金沢市立高岡中学校、金沢市立紫錦台中学校、金沢市立港中学校、金沢市立森本中学校、金沢市立内川小中学校、石川県消防学校のお世話になっている。また、国立研究開発法人防災科学技術研究所、気象庁、石川県震度情報ネットワークシステム、港湾地域強震観測の強震記録を使用した。以上、記して感謝いたします。