10:45 〜 11:00
[S17-01] 韓国東海岸における日本海東縁部の海底活断層からの津波
2024年1月の能登半島地震(M 7.6)による津波は,韓国東海岸やロシア沿海州でも記録された.韓国江原道南部のMukho(墨湖)の検潮所では,地震発生から約4時間後に振幅80㎝の津波が記録されている.過去にも,日本海東縁部の地震からの津波は韓国東海岸に達し,被害を生じたこともある.1983年の日本海中部地震(M 7.7)の津波は高さ2~5m となり,江原道のDonghae(東海)で死者1名, Imwon(臨院)で行方不明2名を含む大きな被害が出た(都司ほか,1985,防災科学技術研究資料).また,1993年北海道南西沖地震(M 7.8)の津波も韓国東海岸で2mを超えた.
日本海東縁部の海域活断層については,国土交通省・文部科学省・内閣府による「日本海における大規模地震に関する調査検討会」(以下,MLITと呼ぶ)(2014)や「日本海地震・津波調査プロジェクト」(2013-2020)によって,断層モデルが提案されている.また,地震調査委員会による海域活断層の評価も進められているが,これまでに日本海南西部(2022)と兵庫県北方沖~新潟県上越地方沖(2024)のみが公表されている.そこで今回は, MLITによる60断層の地震による韓国東海岸での津波波形・高さを計算し,韓国に最も大きな影響を与える断層の位置・形状を調べた.
MLITでは既存の地震反射法データなどに基づいて,北海道北西沖から九州北部沖までの60個の断層について,位置・走向・傾斜・すべり角・長さ・幅・平均すべり量のパラメーターを推定している.すべり量は,入倉・三宅(2001,地学雑誌;2011,Pageoph)のスケーリング則に基づき,ばらつきを考慮して1.5mを足している.最大すべり量は4.5 mとしている.60個の断層のMw は6.2~7.9である.
津波計算にはJAGURS(馬場ほか,本学会技術開発賞受賞記念講演)を利用し,海底地形データはGEBCOから9秒(約270m)メッシュのデータを作成した.日本海における多重反射を考慮して,地震発生から12時間後までの津波伝播を計算し,韓国東海岸における主な港湾(25か所)での波形を計算するとともに,沿岸での最大高を記録した.
MLITの60断層のうち,韓国東海岸の多くの地点で津波の高さが最大となるのは,F24断層(Mw 7.9, 1983年日本海中部地震に相当)であり,これに続き,F17断層(Mw 7.8, 北海道南西沖地震の震源域付近)や秋田・山形県沖のF28断層(Mw 7.7)やF30断層(Mw 7.8)からの津波高さが大きかった.1940年積丹半島沖地震を含む北海道西方沖や1964年新潟地震の震源域(F34断層),能登半島沖の断層(F43)からの津波は,相対的に小さかった.地震発生後2~3時間で最大波が出現するが,その後も長時間(10時間程度)継続する.これは,断層の走向(直交する方角で津波が大きくなる)や,伝播経路にある大和堆(水深が浅く,津波を屈折させる)の影響と考えられる.ただし,韓国南部の釜山付近では,島根県沖のF57断層(Mw 7.5)や福岡県沖の西山断層の延長であるF60断層(Mw 7.6)からの津波が最大となり,これらの断層からの津波第1波は地震発生後1時間程度で到達する.
日本海東縁部の海域活断層については,国土交通省・文部科学省・内閣府による「日本海における大規模地震に関する調査検討会」(以下,MLITと呼ぶ)(2014)や「日本海地震・津波調査プロジェクト」(2013-2020)によって,断層モデルが提案されている.また,地震調査委員会による海域活断層の評価も進められているが,これまでに日本海南西部(2022)と兵庫県北方沖~新潟県上越地方沖(2024)のみが公表されている.そこで今回は, MLITによる60断層の地震による韓国東海岸での津波波形・高さを計算し,韓国に最も大きな影響を与える断層の位置・形状を調べた.
MLITでは既存の地震反射法データなどに基づいて,北海道北西沖から九州北部沖までの60個の断層について,位置・走向・傾斜・すべり角・長さ・幅・平均すべり量のパラメーターを推定している.すべり量は,入倉・三宅(2001,地学雑誌;2011,Pageoph)のスケーリング則に基づき,ばらつきを考慮して1.5mを足している.最大すべり量は4.5 mとしている.60個の断層のMw は6.2~7.9である.
津波計算にはJAGURS(馬場ほか,本学会技術開発賞受賞記念講演)を利用し,海底地形データはGEBCOから9秒(約270m)メッシュのデータを作成した.日本海における多重反射を考慮して,地震発生から12時間後までの津波伝播を計算し,韓国東海岸における主な港湾(25か所)での波形を計算するとともに,沿岸での最大高を記録した.
MLITの60断層のうち,韓国東海岸の多くの地点で津波の高さが最大となるのは,F24断層(Mw 7.9, 1983年日本海中部地震に相当)であり,これに続き,F17断層(Mw 7.8, 北海道南西沖地震の震源域付近)や秋田・山形県沖のF28断層(Mw 7.7)やF30断層(Mw 7.8)からの津波高さが大きかった.1940年積丹半島沖地震を含む北海道西方沖や1964年新潟地震の震源域(F34断層),能登半島沖の断層(F43)からの津波は,相対的に小さかった.地震発生後2~3時間で最大波が出現するが,その後も長時間(10時間程度)継続する.これは,断層の走向(直交する方角で津波が大きくなる)や,伝播経路にある大和堆(水深が浅く,津波を屈折させる)の影響と考えられる.ただし,韓国南部の釜山付近では,島根県沖のF57断層(Mw 7.5)や福岡県沖の西山断層の延長であるF60断層(Mw 7.6)からの津波が最大となり,これらの断層からの津波第1波は地震発生後1時間程度で到達する.