11:00 AM - 11:15 AM
[S17-02] Uncertainty and advance in linear waveform inversion using nearshore tsunami waveforms
沿岸域の検潮所で観測された津波波形(検潮記録)を用いた線形インバージョン手法は,沖合津波観測網が開発される以前に発生した地震の震源過程推定に多く適用されてきた.しかしながら,沿岸域を伝播する津波はその規模や地形特性に応じて非線形特性を発現するため,検潮記録が必ずしも線形インバージョンの枠組みで扱うことが可能な観測波形であるとは限らない.検潮記録を用いた線形インバージョンは,津波の非線形特性が微小であることを前提として実施でき,その前提が成立しない場合において推定される震源特性については未だ検討が不十分である.線形インバージョンにおいて津波の⾮線形特性が無視できない検潮記録が用いられるとき,その非線形特性がどのような不確実性をもたらすのかを明らかにし,その結果を踏まえて⾮線形特性を考慮した新たなインバージョン手法を構築することを本研究の目的とする.本発表はYamanaka and Tanioka (2024: EPS) で得られた成果と,追加で実施した解析の結果に基づき構成する.
本研究では2003年に発生した十勝沖地震・津波を対象としてケーススタディを実施した.まず従来の手法に基づき,検潮記録を用いた線形インバージョンを津波の非線形特性を考慮せずに行い,断層モデルを構築した.この断層モデルを用いて,津波の伝播計算を線形長波方程式および非線形長波方程式を用いて行い,推定波形を各検潮所地点で比較したところ,一部の検潮所地点では第一波目の津波の水位が非線形特性により低下することがわかった.したがって,非線形特性を考慮せずに線形インバージョンを行うと,地震規模が過少に評価されることがわかった.また,非線形特性のうち,津波の移流効果が最も大きく推定水位の低下に影響していることがわかった.
上述した結果を踏まえ,津波の移流効果を線形近似して線形インバージョンに取り込む手法を開発し,線形インバージョンで構築された断層モデルを津波の移流効果を反映させた断層モデルに修正することに成功した.修正された断層モデルを用いた津波の予測を非線形長波方程式に基づき行い,観測された津波波形の再現性がより向上することを確認した.さらに,インバージョンには使用していない沖合で観測された津波波形も妥当に再現することができた.修正された断層モデルの地震モーメントは修正前と比較して約16%大きくなった.
本研究の成果により,津波の非線形特性を考慮せずに検潮記録を用いた線形インバージョンを実施すると,推定される地震規模が過小評価される可能性があることがわかった.前述したように,検潮記録を用いた線形インバージョンに基づき様々な地震の震源過程が推定されている.しかしながら,そのように推定された震源過程は津波の非線形特性に起因する不確実性が内在している可能性があり,規模が過少に評価されている可能性があるため,今後再調査する必要がある.また,本研究で開発した2003年十勝沖地震の断層モデルを用いて地震時地殻変動を推定し,それと観測量を比較した結果,地殻変動量の再現性は不十分であることがわかった.本発表時には,検潮記録から2003年十勝沖地震の震源過程をどこまで高精度に推定することができるのかについても議論する.
本研究では2003年に発生した十勝沖地震・津波を対象としてケーススタディを実施した.まず従来の手法に基づき,検潮記録を用いた線形インバージョンを津波の非線形特性を考慮せずに行い,断層モデルを構築した.この断層モデルを用いて,津波の伝播計算を線形長波方程式および非線形長波方程式を用いて行い,推定波形を各検潮所地点で比較したところ,一部の検潮所地点では第一波目の津波の水位が非線形特性により低下することがわかった.したがって,非線形特性を考慮せずに線形インバージョンを行うと,地震規模が過少に評価されることがわかった.また,非線形特性のうち,津波の移流効果が最も大きく推定水位の低下に影響していることがわかった.
上述した結果を踏まえ,津波の移流効果を線形近似して線形インバージョンに取り込む手法を開発し,線形インバージョンで構築された断層モデルを津波の移流効果を反映させた断層モデルに修正することに成功した.修正された断層モデルを用いた津波の予測を非線形長波方程式に基づき行い,観測された津波波形の再現性がより向上することを確認した.さらに,インバージョンには使用していない沖合で観測された津波波形も妥当に再現することができた.修正された断層モデルの地震モーメントは修正前と比較して約16%大きくなった.
本研究の成果により,津波の非線形特性を考慮せずに検潮記録を用いた線形インバージョンを実施すると,推定される地震規模が過小評価される可能性があることがわかった.前述したように,検潮記録を用いた線形インバージョンに基づき様々な地震の震源過程が推定されている.しかしながら,そのように推定された震源過程は津波の非線形特性に起因する不確実性が内在している可能性があり,規模が過少に評価されている可能性があるため,今後再調査する必要がある.また,本研究で開発した2003年十勝沖地震の断層モデルを用いて地震時地殻変動を推定し,それと観測量を比較した結果,地殻変動量の再現性は不十分であることがわかった.本発表時には,検潮記録から2003年十勝沖地震の震源過程をどこまで高精度に推定することができるのかについても議論する.