11:15 〜 11:30
[S17-03] ABICを用いた津波インバージョン:2024年能登半島地震の初期海面変位推定
観測された津波波形記録からその波源を推定する津波インバージョン解析は、津波の励起源となった断層のすべり分布や初期海面変位を明らかにするためにこれまでも多く行われてきた(e.g., Satake, 1987; Aida, 1972)。またその際、平滑化やダンピング等の拘束条件と共に最小二乗法を用いることが一般的である(e.g., Baba et al., 2005; Saito et al., 2010)。
Yabuki and Matsu’ura (1992)は、インバージョン解析にABIC(Akaike’s Bayesian Information Criterion; Akaike, 1980)を導入することで拘束条件の重みを客観的に決定できることを示した。津波インバージョン解析においても、断層のすべり分布を求める研究においてはABICを用いて拘束条件の重みを決定している例があるものの(e.g., Gusman et al., 2010; Kubota et al., 2018)、初期海面変位を求める場合には、拘束条件の重みはL-curveもしくはtrade-off curveによって試行錯誤的に決定されている(e.g., Hossen et al., 2015; Sandanbata et al., 2022)。本研究では、新たに津波初期海面変位の推定においてABICを導入する。
ABICを用いたインバージョンでは、観測記録の共分散行列をどのように与えるかが重要である(e.g., Fukahata, 2009)。Yagi and Fukahata (2008; 2011)は、地震波を用いたインバージョン解析において、グリーン関数のモデリング誤差および観測記録に対するフィルタ処理によって共分散成分を考慮する必要が生じることを明らかにした。津波の場合、その伝播過程は海底地形によって決まるため、グリーン関数のモデリング誤差は地震波の場合と比べて小さいと考えられる。そのため本研究では、フィルター処理のみを考慮した共分散行列を用いてABICの計算を行った。
提案手法の検証として、2024年能登半島地震に伴って発生した津波について波源推定を行った。津波記録としてはNOWPHAS、IOC/UNESCOおよび国土地理院の検潮記録を使用し、各記録に対して600-3600秒のバンドパスフィルタを適用した。また、拘束条件として(1)平滑化および(2)平滑化+ダンピングの2種類を用いた。
インバージョンの結果として、能登半島北東沖および半島北西岸において約1.5 mと約0.5 mの隆起がそれぞれ推定された。北東沖の隆起はこの地震に伴う津波の主要な波源であり先行研究の結果とも整合的である(e.g., Fujii and Satake, 2024)。InSAR解析の結果から半島北西には約4 mの隆起が確認されており(e.g., 国土地理院, 2024)、北西岸の津波波源は陸上で観測された隆起と連続していると考えられる。また、どちらの拘束条件を用いても得られる初期海面変位はおおむね一致していた。その原因として、平滑化とダンピングにトレードオフの関係があり、ダンピングを拘束条件として導入した場合、それによって平滑化の重みが小さくなったためと考えられる。
Yabuki and Matsu’ura (1992)は、インバージョン解析にABIC(Akaike’s Bayesian Information Criterion; Akaike, 1980)を導入することで拘束条件の重みを客観的に決定できることを示した。津波インバージョン解析においても、断層のすべり分布を求める研究においてはABICを用いて拘束条件の重みを決定している例があるものの(e.g., Gusman et al., 2010; Kubota et al., 2018)、初期海面変位を求める場合には、拘束条件の重みはL-curveもしくはtrade-off curveによって試行錯誤的に決定されている(e.g., Hossen et al., 2015; Sandanbata et al., 2022)。本研究では、新たに津波初期海面変位の推定においてABICを導入する。
ABICを用いたインバージョンでは、観測記録の共分散行列をどのように与えるかが重要である(e.g., Fukahata, 2009)。Yagi and Fukahata (2008; 2011)は、地震波を用いたインバージョン解析において、グリーン関数のモデリング誤差および観測記録に対するフィルタ処理によって共分散成分を考慮する必要が生じることを明らかにした。津波の場合、その伝播過程は海底地形によって決まるため、グリーン関数のモデリング誤差は地震波の場合と比べて小さいと考えられる。そのため本研究では、フィルター処理のみを考慮した共分散行列を用いてABICの計算を行った。
提案手法の検証として、2024年能登半島地震に伴って発生した津波について波源推定を行った。津波記録としてはNOWPHAS、IOC/UNESCOおよび国土地理院の検潮記録を使用し、各記録に対して600-3600秒のバンドパスフィルタを適用した。また、拘束条件として(1)平滑化および(2)平滑化+ダンピングの2種類を用いた。
インバージョンの結果として、能登半島北東沖および半島北西岸において約1.5 mと約0.5 mの隆起がそれぞれ推定された。北東沖の隆起はこの地震に伴う津波の主要な波源であり先行研究の結果とも整合的である(e.g., Fujii and Satake, 2024)。InSAR解析の結果から半島北西には約4 mの隆起が確認されており(e.g., 国土地理院, 2024)、北西岸の津波波源は陸上で観測された隆起と連続していると考えられる。また、どちらの拘束条件を用いても得られる初期海面変位はおおむね一致していた。その原因として、平滑化とダンピングにトレードオフの関係があり、ダンピングを拘束条件として導入した場合、それによって平滑化の重みが小さくなったためと考えられる。