[S17P-06] Probabilistic Tsunami Hazard Assessment along Kuril and Japan trenches: Probability Setting Method and Hazard Assessment Results
はじめに 千島海溝沿いおよび日本海溝沿いでは、1952年十勝沖地震 (M8.2) 、1963年択捉島沖地震 (M8.1) 、1968年十勝沖地震 (M7.9) 、2003年十勝沖地震 (M8.0) 、2011年東北地方太平洋沖地震 (M9.0) 等の地震が発生し、津波の被害が生じている。土肥・他 (2024,JpGU) では、千島海溝沿いおよび日本海溝沿いの地震活動の長期評価 (地震調査委員会, 2017, 2019) に記載されている地震規模及び地震グループを対象として日本海溝と千島海溝の2海域統合確率論的津波ハザード評価 (PTHA) を報告した。これに引き続き、土肥・他 (2024, 本学会) では、長期評価で評価対象としていない地震規模及び地震グループも考慮した2海域統合の確率論的津波ハザード評価 (PTHA) を報告している。本発表では、土肥・他 (2024, 本学会) で使用している地震発生確率の設定、ハザードカーブの計算、及び確率論的な統合の考え方とその結果について報告する。PTHAで考慮した地震の波源断層モデル群の構築及び津波伝播遡上計算については、張・他 (2024, 本学会) を参照されたい。
地震発生確率の設定 次の基本原則に基づいて地震発生確率を与えた。(1) : 長期評価で発生確率が評価されている場合は、その確率モデルを用いる。(2) : 長期評価で評価対象とされていない場合は「背景的な地震活動から対象地震規模の年頻度を算定し定常ポアソンモデルで算定する」という確率モデル (背景GR+ポアソンモデル) を用いる。(3) : 長期評価で評価された地震規模を上回る場合は長期評価の確率モデルを外挿し、長期評価で評価された地震規模を下回る場合は背景GR+ポアソンモデルを用いる。(4) : ある地震 (グループ) に発生確率が与えられている場合、評価対象とする地震規模範囲に対して、その発生確率をb値=0.9のGR則的な傾斜配分を行う。(5) : 背景GR+ポアソンモデルで発生確率を与える場合、評価対象とする地震規模範囲に対して、b値=0.9のGR則的な傾斜配分を行う。ただし、一部の地震グループについては、例外的に次のように地震発生確率を与えた。(1) の例外: 長期評価で明記された確率モデルと異なる確率モデルを使用する (プレート間巨大地震 (色丹島沖及び択捉島沖) など) 。(2)の例外 : 類似の超巨大地震に対して長期評価された平均発生間隔を流用して評価する (日本海溝沿いの超巨大地震 (その他) (=東北地方太平洋沖型でない超巨大地震) ) 。
確率論的統合 個々の波源断層モデルから求めた津波に対して、計算誤差等による不確定性を確率モデルによって表現したうえで、各々を確率論的に統合した。確率論的な統合においては、(1) : 海域 (日本海溝沿いと千島海溝沿いの両海域) 、(2) : 地震グループ (位置・形状・地震規模が異なる震源域の集合) 、(3) : 震源域 (地震規模・位置・形状が特定された巨視的波源断層モデル) 、(4) : 波源断層モデル (地震規模・位置・形状に加えすべり不均質も特定された微視的波源断層モデル) の階層ごとにルールを設けて確率を統合した。具体的には、次のような考え方で統合した。(1) : 異なる海域の地震は互いに独立。(2) : 1つの海域内で異なる地震グループは互いに独立。(3) : 1つの地震グループ内で異なる震源域は原則として互いに独立。ただし、長期評価で発生確率が評価され、最新の活動時期が分かっており、特定の地域で繰り返し発生の可能性があると評価された地震グループは例外的に互いに排反。(4) : 1つの震源域内で異なる波源断層モデルは互いに排反。
確率論的津波ハザード評価結果 現時点でのハザード評価結果の一例として、今後30年間で海岸の最大水位上昇量が3mを超える30年超過確率分布を求めた。北海道に着目すると、概ね襟裳岬以東の太平洋沿岸で30年超過確率が他の地域よりも相対的に高く推定された。関東~東北地方に着目すると、太平洋沿岸で30年超過確率が相対的に高く推定された。
今後の予定 今回の評価結果は、日本海溝沿い及び千島海溝沿いの地震のみを対象とした津波ハザード評価結果である。今後、相模トラフ、南海トラフなどの他の海域での地震の影響を考慮して統合し、より実際に即した津波ハザード評価を実施する予定である。なお、本研究は防災科研の研究プロジェクト「自然災害のハザード・リスクに関する研究開発」の一環として実施している。
地震発生確率の設定 次の基本原則に基づいて地震発生確率を与えた。(1) : 長期評価で発生確率が評価されている場合は、その確率モデルを用いる。(2) : 長期評価で評価対象とされていない場合は「背景的な地震活動から対象地震規模の年頻度を算定し定常ポアソンモデルで算定する」という確率モデル (背景GR+ポアソンモデル) を用いる。(3) : 長期評価で評価された地震規模を上回る場合は長期評価の確率モデルを外挿し、長期評価で評価された地震規模を下回る場合は背景GR+ポアソンモデルを用いる。(4) : ある地震 (グループ) に発生確率が与えられている場合、評価対象とする地震規模範囲に対して、その発生確率をb値=0.9のGR則的な傾斜配分を行う。(5) : 背景GR+ポアソンモデルで発生確率を与える場合、評価対象とする地震規模範囲に対して、b値=0.9のGR則的な傾斜配分を行う。ただし、一部の地震グループについては、例外的に次のように地震発生確率を与えた。(1) の例外: 長期評価で明記された確率モデルと異なる確率モデルを使用する (プレート間巨大地震 (色丹島沖及び択捉島沖) など) 。(2)の例外 : 類似の超巨大地震に対して長期評価された平均発生間隔を流用して評価する (日本海溝沿いの超巨大地震 (その他) (=東北地方太平洋沖型でない超巨大地震) ) 。
確率論的統合 個々の波源断層モデルから求めた津波に対して、計算誤差等による不確定性を確率モデルによって表現したうえで、各々を確率論的に統合した。確率論的な統合においては、(1) : 海域 (日本海溝沿いと千島海溝沿いの両海域) 、(2) : 地震グループ (位置・形状・地震規模が異なる震源域の集合) 、(3) : 震源域 (地震規模・位置・形状が特定された巨視的波源断層モデル) 、(4) : 波源断層モデル (地震規模・位置・形状に加えすべり不均質も特定された微視的波源断層モデル) の階層ごとにルールを設けて確率を統合した。具体的には、次のような考え方で統合した。(1) : 異なる海域の地震は互いに独立。(2) : 1つの海域内で異なる地震グループは互いに独立。(3) : 1つの地震グループ内で異なる震源域は原則として互いに独立。ただし、長期評価で発生確率が評価され、最新の活動時期が分かっており、特定の地域で繰り返し発生の可能性があると評価された地震グループは例外的に互いに排反。(4) : 1つの震源域内で異なる波源断層モデルは互いに排反。
確率論的津波ハザード評価結果 現時点でのハザード評価結果の一例として、今後30年間で海岸の最大水位上昇量が3mを超える30年超過確率分布を求めた。北海道に着目すると、概ね襟裳岬以東の太平洋沿岸で30年超過確率が他の地域よりも相対的に高く推定された。関東~東北地方に着目すると、太平洋沿岸で30年超過確率が相対的に高く推定された。
今後の予定 今回の評価結果は、日本海溝沿い及び千島海溝沿いの地震のみを対象とした津波ハザード評価結果である。今後、相模トラフ、南海トラフなどの他の海域での地震の影響を考慮して統合し、より実際に即した津波ハザード評価を実施する予定である。なお、本研究は防災科研の研究プロジェクト「自然災害のハザード・リスクに関する研究開発」の一環として実施している。