日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

C会場

特別セッション » S21. 情報科学との融合による地震研究の加速

[S21] AM-2

2024年10月22日(火) 10:45 〜 12:15 C会場 (3階中会議室302)

座長:縣 亮一郎(海洋研究開発機構)、矢野 恵佑(統計数理研究所)

11:15 〜 11:45

[S21-08] [招待講演]機械学習と数理モデル:順問題と逆問題のデータ駆動型解法

*武石 直也1 (1. 東京大学)

科学研究の様々な分野で登場する微分方程式などの数理モデルに関連する諸問題に機械学習を応用することで、計算の効率化や、より複雑な設定への対応ができると期待されている。本講演では、そのような機械学習手法の基本的概念と最新の進展を紹介する。

まず、数理モデルの解を求める問題(いわゆる順問題)に対する機械学習の手法を取り上げる。physics-informed neural networksやdeep Galerkin methodといった、数理モデルによって損失関数を定義する手法の基本的な考え方を説明する。また、PDEなどの解をデータとして学習するneural operatorsと呼ばれるモデルについて論じる。これらの方法は、深層ニューラルネットワークの表現力を活用し、高次元の微分方程式の解を効率的に表現できると期待されている。

次に、観測データから数理モデルのパラメタを推論する問題(いわゆる逆問題)に対する機械学習の手法を扱う。特に、数理モデルの尤度関数を計算できない場合にパラメタの確率推論を行うという問題設定を扱う。これはlikelihood-free inferenceやsimulation-based inferenceとして知られる問題設定であり、近年特に深層学習による解法が注目を集めている。本講演ではその主要な方法を紹介し、推論の信頼性の問題など実践上の課題を議論する。このようなデータ駆動型の逆問題解法により、複雑な事後分布を表現したり、推論時に最適化やモンテカルロ法を実行せずに高速に計算したりできると期待されている。

最後に、科学的な数理モデルと機械学習のモデルを直接組み合わせるハイブリッドモデリングの研究動向を紹介する。ハイブリッドモデリングは、数理モデルと現実との乖離を機械学習によってうめて、より精緻な予測やシミュレーションを実現し得る方法である。