1:30 PM - 1:45 PM
[S22-07] Strong Ground Motions and Source Rupture Process of the 2024 Noto Peninsula Earthquake (M7.6)
2020年12月頃より群発地震活動が継続していた能登半島北部(e.g., Amezawa et al., 2023)において、2024年1月1日16時10分頃発生したMJMA 7.6 の地震(令和6年能登半島地震)では、震度7を観測した輪島市門前町走出や志賀町香能をはじめ、能登半島のほぼ全域で震度6弱以上の高震度の強震動が観測されたほか、新潟県佐渡や下越から福井県嶺北にかけての広い範囲で震度5強が観測された。
能登半島各地で観測された強震記録をみると、16時10分9秒頃(気象庁によるM5.9地震の発生時刻)より珠洲市付近から伝播している波や、16時20分22秒頃(気象庁によるM7.6地震の発生時刻)より再び珠洲市付近から伝播している波のほかに、16時20分30秒以降に、輪島市付近から能登半島の東西に伝播する振幅の大きな波など、複数の特徴的な波が認められる。これらの波は、震源断層で時空間的に各々のタイミングで破壊した大きなすべりから生じたS波及びその後続動と考えられる。
我々は、これらの観測波形の特徴を説明できるような震源破壊過程モデルの推定を目指して、本震直後より解析を継続してきた。本発表では、推定した震源破壊過程の特徴と強震動の関係について報告する。本発表での震源破壊過程の推定では、16時10分9秒に開始した破壊からを一連の破壊として解析する。震源破壊過程の推定には、能登半島のほか、震源域を取り囲むように富山県、佐渡島、舳倉島など震源域を取り囲む各地の強震計や震度計で記録された波形のうち、0.03~0.4 Hzの帯域のS波部分を使用した。断層モデルは、余震分布や既往の海底活断層形状などの情報を参考に、複数の震源断層からなるモデルを設定した。能登半島北東部の珠洲市直下には時間差(約13秒)をおいて破壊する2枚の断層面を異なる深さに仮定した。このうち、最初に破壊する断層面は2023年5月5日のM6.5の地震と共通の断層と考えられ、気象庁による16時10分9秒頃の地震の破壊開始点は、2023年5月5日のM6.5の地震時の大きなすべりの南西端に位置する。遅れて破壊するもう1枚の断層は、NT5断層に対応する断層面と考えている。このほか、能登半島西岸付近から富山トラフ付近にかけて震源断層モデルを仮定した。Green関数は、全国一次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)より各観測点直下の構造を抽出して、離散化波数法(Bouchon, 1981)と透過・反射係数行列法(Kennett and Kerry, 1979)で計算した。
以下、推定された震源破壊過程の特徴と観測地震動の対応を時刻を追って簡単に説明する。1) 16時10分9秒に、珠洲市直下の1枚目の断層面で破壊が開始し、主として南西方向へ破壊が拡がる。2) 約13秒後、珠洲市直下の2枚目の断層面で新たな破壊が開始し、こちらは主として北東へ破壊伝播する。3) 最初の破壊開始の約20秒後、能登半島北西端部のやや浅部で、4 m以上の大きなすべりが生じた。能登半島西部での地震動にはこのすべりの寄与が支配的である。また、輪島付近での隆起にもこの能登半島北西部での大きなすべりが関係しており、強震記録を積分して得た変位波形の様子から、主たる隆起の開始から終了に要した時間は約5秒である。4) 次に、2番目の破壊開始の約15秒後(最初の破壊開始の約25~30秒後)頃より、珠洲市北東沖の海底下で4 m以上の大きなすべりが生じた。佐渡島での地震動には主としてこのすべりが寄与している。富山平野周辺などの地震動は、能登半島と珠洲市北東沖の両者からの地震波の寄与が複雑に重なっている。
このように、複数の震源断層が短い時間差をおいて、連動しながら複雑に破壊が進行したことが、珠洲市などで継続時間の長い強震動となった一因と考えられる。各機関による緊急海底地震観測などによる詳細な余震分布などの情報も報告されつつあり、今後、断層面の位置や深さ方向の傾斜変化等についても検討し、震源破壊過程モデルの改良を継続する予定である。
謝辞: 国立研究開発法人防災科学技術研究所及び気象庁の強震記録を使用しました。記して感謝いたします。
能登半島各地で観測された強震記録をみると、16時10分9秒頃(気象庁によるM5.9地震の発生時刻)より珠洲市付近から伝播している波や、16時20分22秒頃(気象庁によるM7.6地震の発生時刻)より再び珠洲市付近から伝播している波のほかに、16時20分30秒以降に、輪島市付近から能登半島の東西に伝播する振幅の大きな波など、複数の特徴的な波が認められる。これらの波は、震源断層で時空間的に各々のタイミングで破壊した大きなすべりから生じたS波及びその後続動と考えられる。
我々は、これらの観測波形の特徴を説明できるような震源破壊過程モデルの推定を目指して、本震直後より解析を継続してきた。本発表では、推定した震源破壊過程の特徴と強震動の関係について報告する。本発表での震源破壊過程の推定では、16時10分9秒に開始した破壊からを一連の破壊として解析する。震源破壊過程の推定には、能登半島のほか、震源域を取り囲むように富山県、佐渡島、舳倉島など震源域を取り囲む各地の強震計や震度計で記録された波形のうち、0.03~0.4 Hzの帯域のS波部分を使用した。断層モデルは、余震分布や既往の海底活断層形状などの情報を参考に、複数の震源断層からなるモデルを設定した。能登半島北東部の珠洲市直下には時間差(約13秒)をおいて破壊する2枚の断層面を異なる深さに仮定した。このうち、最初に破壊する断層面は2023年5月5日のM6.5の地震と共通の断層と考えられ、気象庁による16時10分9秒頃の地震の破壊開始点は、2023年5月5日のM6.5の地震時の大きなすべりの南西端に位置する。遅れて破壊するもう1枚の断層は、NT5断層に対応する断層面と考えている。このほか、能登半島西岸付近から富山トラフ付近にかけて震源断層モデルを仮定した。Green関数は、全国一次地下構造モデル(Koketsu et al., 2012)より各観測点直下の構造を抽出して、離散化波数法(Bouchon, 1981)と透過・反射係数行列法(Kennett and Kerry, 1979)で計算した。
以下、推定された震源破壊過程の特徴と観測地震動の対応を時刻を追って簡単に説明する。1) 16時10分9秒に、珠洲市直下の1枚目の断層面で破壊が開始し、主として南西方向へ破壊が拡がる。2) 約13秒後、珠洲市直下の2枚目の断層面で新たな破壊が開始し、こちらは主として北東へ破壊伝播する。3) 最初の破壊開始の約20秒後、能登半島北西端部のやや浅部で、4 m以上の大きなすべりが生じた。能登半島西部での地震動にはこのすべりの寄与が支配的である。また、輪島付近での隆起にもこの能登半島北西部での大きなすべりが関係しており、強震記録を積分して得た変位波形の様子から、主たる隆起の開始から終了に要した時間は約5秒である。4) 次に、2番目の破壊開始の約15秒後(最初の破壊開始の約25~30秒後)頃より、珠洲市北東沖の海底下で4 m以上の大きなすべりが生じた。佐渡島での地震動には主としてこのすべりが寄与している。富山平野周辺などの地震動は、能登半島と珠洲市北東沖の両者からの地震波の寄与が複雑に重なっている。
このように、複数の震源断層が短い時間差をおいて、連動しながら複雑に破壊が進行したことが、珠洲市などで継続時間の長い強震動となった一因と考えられる。各機関による緊急海底地震観測などによる詳細な余震分布などの情報も報告されつつあり、今後、断層面の位置や深さ方向の傾斜変化等についても検討し、震源破壊過程モデルの改良を継続する予定である。
謝辞: 国立研究開発法人防災科学技術研究所及び気象庁の強震記録を使用しました。記して感謝いたします。