10:00 AM - 10:15 AM
[S22-23] Viscoelastic relaxation and afterslip contribution to the postseismic crustal deformation after the 2024 Noto Peninsula earthquake
大規模な地震の後には、余効変動と呼ばれる地殻変動がしばしば観測される(e.g., Ohzono et al., 2012; Moore et al., 2017)。余効変動は断層上で発生するアフタースリップ、下部地殻やマントルの粘弾性媒質の粘性的な応答である粘弾性緩和など、時間・空間スケールの異なる要因がその原因である。つまり、大地震後の余効変動の原因を理解することは、断層の摩擦特性や震源域下の粘弾性構造を解明するために極めて重要である。
本研究では、2024年1月1日に能登半島で発生したMj 7.6の地震後の余効変動に着目した。国土地理院GEONET観測点のデータおよびSoftBank株式会社(以下SoftBank)が運用する民間の独自のGNSSデータから地震・人為的オフセットの除去および定常的変動の除去を行い、2024年6月1日までの余効変動変位を推定した。推定された余効変動変位は、震源域の北東に延びる佐渡島において主に北西方向へ約1 cmの変位を示した。
得られた佐渡島における北西向き変位の成因を調べるために、半解析的境界要素法(Barbot & Fialko, 2010)を用いて、地震時の断層すべりによる応力擾乱から期待されるマクスウェル粘弾性緩和のシミュレーションを行った。断層モデルとしては国土地理院がWebで公開しているものを用いた。粘性構造については、上部地殻、下部地殻、マントルからなる一次元の成層モデルを仮定した。その結果、佐渡島における粘弾性緩和変位は主に北東方向の変位を示し、観測で得られている北西方向への変位とはその方向自体が異なる。粘性構造のうち、下部地殻の粘性率をより低く設定した場合の検証も行ったが、一次元の成層モデルにおける粘弾性緩和では観測データが示す北西方向への変位を再現できなかった。
この乖離を説明するために、佐渡島西岸沖におけるアフタースリップを考慮したモデルを検討した。断層幾何としてFujii & Satake (2024)によるNT2を仮定し、その上でのアフタースリップを推定した結果、佐渡島中央域で主に北西方向への変位が得られ、本震の粘弾性緩和を想定した場合よりも観測データをより良く説明する。さらにアフタースリップの断層パラメータを拘束するために、断層パラメータのうちすべり角・走向・断層幅を試行錯誤的に変えて検証した。その結果、従来のすべり角=78°よりも小さい60°の場合に佐渡島全体にわたる地殻変動をより説明できる。しかし、すべり角と走向の間にはトレードオフがあるため、正確な断層パラメータを決めるためには海域における余震のメカニズム解など、他の観測データと比較する必要がある。
佐渡島西沖でのアフタースリップの発生は、地震時電離圏擾乱の測定結果(Heki, 2024)や直江津観測された津波の大きい波高(Fujii & Satake, 2024)との関連性を想起させる。特にHeki (2024)で示された地震後約8分後に発生したとされる最大余震の震源は、本研究でアフタースリップの発生が示唆された場所と重なる。GNSSデータから得られた佐渡島の余効変動変位の時間発展を見ると、地震後3か月間で大きく減衰する。以上を踏まえると、Heki (2024)で示された地震後約8分後に発生したとされる最大余震の震源周辺において、地震後3か月程度でアフタースリップが進展したと考えられる。発表では、より広域の地殻変動場を含めて、詳細な議論を行う。
謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社および ALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。
本研究では、2024年1月1日に能登半島で発生したMj 7.6の地震後の余効変動に着目した。国土地理院GEONET観測点のデータおよびSoftBank株式会社(以下SoftBank)が運用する民間の独自のGNSSデータから地震・人為的オフセットの除去および定常的変動の除去を行い、2024年6月1日までの余効変動変位を推定した。推定された余効変動変位は、震源域の北東に延びる佐渡島において主に北西方向へ約1 cmの変位を示した。
得られた佐渡島における北西向き変位の成因を調べるために、半解析的境界要素法(Barbot & Fialko, 2010)を用いて、地震時の断層すべりによる応力擾乱から期待されるマクスウェル粘弾性緩和のシミュレーションを行った。断層モデルとしては国土地理院がWebで公開しているものを用いた。粘性構造については、上部地殻、下部地殻、マントルからなる一次元の成層モデルを仮定した。その結果、佐渡島における粘弾性緩和変位は主に北東方向の変位を示し、観測で得られている北西方向への変位とはその方向自体が異なる。粘性構造のうち、下部地殻の粘性率をより低く設定した場合の検証も行ったが、一次元の成層モデルにおける粘弾性緩和では観測データが示す北西方向への変位を再現できなかった。
この乖離を説明するために、佐渡島西岸沖におけるアフタースリップを考慮したモデルを検討した。断層幾何としてFujii & Satake (2024)によるNT2を仮定し、その上でのアフタースリップを推定した結果、佐渡島中央域で主に北西方向への変位が得られ、本震の粘弾性緩和を想定した場合よりも観測データをより良く説明する。さらにアフタースリップの断層パラメータを拘束するために、断層パラメータのうちすべり角・走向・断層幅を試行錯誤的に変えて検証した。その結果、従来のすべり角=78°よりも小さい60°の場合に佐渡島全体にわたる地殻変動をより説明できる。しかし、すべり角と走向の間にはトレードオフがあるため、正確な断層パラメータを決めるためには海域における余震のメカニズム解など、他の観測データと比較する必要がある。
佐渡島西沖でのアフタースリップの発生は、地震時電離圏擾乱の測定結果(Heki, 2024)や直江津観測された津波の大きい波高(Fujii & Satake, 2024)との関連性を想起させる。特にHeki (2024)で示された地震後約8分後に発生したとされる最大余震の震源は、本研究でアフタースリップの発生が示唆された場所と重なる。GNSSデータから得られた佐渡島の余効変動変位の時間発展を見ると、地震後3か月間で大きく減衰する。以上を踏まえると、Heki (2024)で示された地震後約8分後に発生したとされる最大余震の震源周辺において、地震後3か月程度でアフタースリップが進展したと考えられる。発表では、より広域の地殻変動場を含めて、詳細な議論を行う。
謝辞:本研究で使用したソフトバンクの独自基準点の後処理解析用データは、「ソフトバンク独自基準点データの宇宙地球科学用途利活用コンソーシアム」の枠組みを通じて、ソフトバンク株式会社および ALES株式会社より提供を受けたものを使用しました。