[S22P-09] Source Model of the 2024 Noto Peninsula Earthquake by Envelope Inversion Using Synthetic Seismograms Generated from GIT and cGAN
1.はじめに
周期1秒以下の短周期成分を対象とした震源モデルの推定として,時刻歴波形の包絡形状を用いたエンベロープインバージョン (Kakehi and Irikura, 1996; Nakahara, 1998) や,経験的グリーン関数を用いた強震動生成域 (Strong Motion Generation Areas; SMGA) の推定 (Miyake et al., 2003) が行われている。短周期領域を対象とした震源インバージョンにおける困難さのひとつは,小断層から観測点への要素地震波の計算である。筆者らはスペクトルインバージョン (GIT) と機械学習の一種である条件付き敵対的生成ネットワーク (cGAN) を組み合わせ,Mw,距離,観測点を入力としてばらつきをもったSite-Specificな加速度時刻歴波形群を出力する手法を開発している(Yamaguchi et al., 2024)。本検討ではこの手法をさらに拡張し,Radial, Transverse, Verticalの3成分を出力できるようにした(山口・他,本大会)。この出力波形を要素地震として用いたエンベロープインバージョンから2024年能登半島地震の周期1秒以下の短周期放出領域を推定した。
2.小断層から観測点への要素地震波
GITに用いたデータセットは既報(友澤・他, JpGU2024)と同様である。本検討では水平動と上下動を同時にインバージョンし,観測点ごとの水平動と上下動の経験的サイト特性を推定した。経時特性モデルの構築は山口・他(本大会)で述べる。各小断層から各観測点への要素地震波はMw 5.0,応力降下量3.1 MPaを仮定して作成した。この要素地震波のフーリエ振幅スペクトルにはGITに基づく観測点ごとの経験的特性が反映されており,経時特性にはcGANに基づく経験的特性が反映されている。要素地震波の不確実性を考慮するため,ある小断層から観測点への要素地震波は時間方向にもばらつきを考慮する。また,経時特性モデルに与える乱数を変えて10ケースの要素地震波群を作成し,要素地震波の不確実性が推定される震源モデルに与える影響を検討する。
3.エンベロープインバージョン
断層破壊過程の推定は,波形インバージョンで用いられるマルチタイムウィンドウ法(Hartzell and Heaton, 1983)を用いた。ただし,波形インバージョンでは速度波形を用いて破壊過程を推定するのに対し,本検討ではSS-GMGで生成した加速度波形の2乗振幅から求めた加速度エンベロープを用いた。そのため,各小断層からの波形がランダムに足し合わされると考えられる周期1秒以下が検討対象となる。観測波形のエンベロープと計算波形のエンベロープの誤差を最小にするように非負拘束最小二乗法を用いてMw 5.0の要素地震のモーメントに対する各小断層のモーメント解放の時空間分布を推定した。時間方向には1秒間隔で25個のタイムウィンドウのインパルスを仮定した。時空間の平滑化のために離散ラプラシアンが最小になる条件を加え,平滑化の度合いはABICで決定したが,より適した平滑化強度の探索は今後の課題である。破壊フロントが広がる速度はグリッドサーチにより3.0 km/sとした。10ケースそれぞれの最終すべり量分布には類似した傾向がみられ,複数の短周期成分を放出した領域がある。得られた震源モデルを用いて評価した加速度波形,エンベロープ,フーリエスペクトルの比較を行い,多くの観測点で観測記録を概ね再現した。
謝辞
防災科学技術研究所K-NET,KiK-netの観測記録とF-netのメカニズム解を活用させていただきました。記して感謝します。
周期1秒以下の短周期成分を対象とした震源モデルの推定として,時刻歴波形の包絡形状を用いたエンベロープインバージョン (Kakehi and Irikura, 1996; Nakahara, 1998) や,経験的グリーン関数を用いた強震動生成域 (Strong Motion Generation Areas; SMGA) の推定 (Miyake et al., 2003) が行われている。短周期領域を対象とした震源インバージョンにおける困難さのひとつは,小断層から観測点への要素地震波の計算である。筆者らはスペクトルインバージョン (GIT) と機械学習の一種である条件付き敵対的生成ネットワーク (cGAN) を組み合わせ,Mw,距離,観測点を入力としてばらつきをもったSite-Specificな加速度時刻歴波形群を出力する手法を開発している(Yamaguchi et al., 2024)。本検討ではこの手法をさらに拡張し,Radial, Transverse, Verticalの3成分を出力できるようにした(山口・他,本大会)。この出力波形を要素地震として用いたエンベロープインバージョンから2024年能登半島地震の周期1秒以下の短周期放出領域を推定した。
2.小断層から観測点への要素地震波
GITに用いたデータセットは既報(友澤・他, JpGU2024)と同様である。本検討では水平動と上下動を同時にインバージョンし,観測点ごとの水平動と上下動の経験的サイト特性を推定した。経時特性モデルの構築は山口・他(本大会)で述べる。各小断層から各観測点への要素地震波はMw 5.0,応力降下量3.1 MPaを仮定して作成した。この要素地震波のフーリエ振幅スペクトルにはGITに基づく観測点ごとの経験的特性が反映されており,経時特性にはcGANに基づく経験的特性が反映されている。要素地震波の不確実性を考慮するため,ある小断層から観測点への要素地震波は時間方向にもばらつきを考慮する。また,経時特性モデルに与える乱数を変えて10ケースの要素地震波群を作成し,要素地震波の不確実性が推定される震源モデルに与える影響を検討する。
3.エンベロープインバージョン
断層破壊過程の推定は,波形インバージョンで用いられるマルチタイムウィンドウ法(Hartzell and Heaton, 1983)を用いた。ただし,波形インバージョンでは速度波形を用いて破壊過程を推定するのに対し,本検討ではSS-GMGで生成した加速度波形の2乗振幅から求めた加速度エンベロープを用いた。そのため,各小断層からの波形がランダムに足し合わされると考えられる周期1秒以下が検討対象となる。観測波形のエンベロープと計算波形のエンベロープの誤差を最小にするように非負拘束最小二乗法を用いてMw 5.0の要素地震のモーメントに対する各小断層のモーメント解放の時空間分布を推定した。時間方向には1秒間隔で25個のタイムウィンドウのインパルスを仮定した。時空間の平滑化のために離散ラプラシアンが最小になる条件を加え,平滑化の度合いはABICで決定したが,より適した平滑化強度の探索は今後の課題である。破壊フロントが広がる速度はグリッドサーチにより3.0 km/sとした。10ケースそれぞれの最終すべり量分布には類似した傾向がみられ,複数の短周期成分を放出した領域がある。得られた震源モデルを用いて評価した加速度波形,エンベロープ,フーリエスペクトルの比較を行い,多くの観測点で観測記録を概ね再現した。
謝辞
防災科学技術研究所K-NET,KiK-netの観測記録とF-netのメカニズム解を活用させていただきました。記して感謝します。