09:45 〜 10:00
[S23-04] [招待講演]2024年8月8日日向灘の地震(Mw7.0)に伴う南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)
1.はじめに
2024年8月8日16時42分に日向灘で気象庁M7.1が発生し、気象庁は同日17時00分に「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表した。同日17時30分に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」(以下、評価検討会)が開催され、評価の結果、同日19時15分に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された。中央防災会議(2013)が定めた「科学的に想定される最大規模の南海トラフ地震の想定震源域」と想定震源域の海溝軸外側50km程度までの領域を併せた「監視領域」の中でMw7.0 が発生したと評価されたからである。
2.中央防災会議の南海トラフ地震対策
南海トラフでは過去に繰り返しM8を超える巨大地震が発生し多くの被害がもたらされてきた。既往最大の地震は、1707年宝永地震(M8.6)であるが、理論上は、2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)のような超巨大地震が発生する可能性が否定できない。中央防災会議はもし最大クラス(揺れに対してはM9.0、津波についてはM9.1)の地震が発生したときの被害を想定し、対応策を示している。国の報告では、現在の地震学の実力では、防災対応に資するような地震予知はできず、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災応急対策は改める必要があるとされた(中央防災会議・防災対策実行会議・南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ、2017)。一方、現在の科学的知見を防災対応に活かしていくという視点は引き続き重要であるとされたことも踏まえて、2019年5月の中央防災会議において「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づく「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」が変更され、気象庁は南海トラフ地震臨時情報等を発表することとなった。
3.情報の発表
南海トラフ沿いでプレートの固着状態に通常とは異なる変化が観測されたときには、気象庁は南海トラフ地震臨時情報を発表する。臨時情報には、(1)調査中、(2)調査終了、(3)巨大地震注意、(4)巨大地震警戒 の4つがある。本年8月8日には、まず(1)が出て、調査の結果(3)が出た。どのような事象が観測されたら情報を発表するかの基準は「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」で予め定められ、例えば、気象庁のウエッブページ等で公表されている(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/nteq/info_criterion.html)。今回は、まず、監視領域内(図1の黄枠内)で気象庁M6.8以上 の地震が発生したため「調査中」を発表し、調査の結果は、「巨大地震注意」の発表条件である「監視領域内において、Mw7.0以上の地震が発生したと評価した場合(巨大地震警戒に該当する場合は除く)」に相当した。
4.おわりに
今回の情報は、予め定められた手続き通りに発表された。しかし、この情報の意味を社会が正しく理解して、適切な防災行動がとられたかについては、今後の調査と議論を待たなければならない。2019年に本情報の仕組みが制定されて初めて出された効果についての検証を続ける必要がある。
2024年8月8日16時42分に日向灘で気象庁M7.1が発生し、気象庁は同日17時00分に「南海トラフ地震臨時情報(調査中)」を発表した。同日17時30分に「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」(以下、評価検討会)が開催され、評価の結果、同日19時15分に「南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)」が発表された。中央防災会議(2013)が定めた「科学的に想定される最大規模の南海トラフ地震の想定震源域」と想定震源域の海溝軸外側50km程度までの領域を併せた「監視領域」の中でMw7.0 が発生したと評価されたからである。
2.中央防災会議の南海トラフ地震対策
南海トラフでは過去に繰り返しM8を超える巨大地震が発生し多くの被害がもたらされてきた。既往最大の地震は、1707年宝永地震(M8.6)であるが、理論上は、2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)のような超巨大地震が発生する可能性が否定できない。中央防災会議はもし最大クラス(揺れに対してはM9.0、津波についてはM9.1)の地震が発生したときの被害を想定し、対応策を示している。国の報告では、現在の地震学の実力では、防災対応に資するような地震予知はできず、大規模地震対策特別措置法に基づく地震防災応急対策は改める必要があるとされた(中央防災会議・防災対策実行会議・南海トラフ沿いの地震観測・評価に基づく防災対応検討ワーキンググループ、2017)。一方、現在の科学的知見を防災対応に活かしていくという視点は引き続き重要であるとされたことも踏まえて、2019年5月の中央防災会議において「南海トラフ地震に係る地震防災対策の推進に関する特別措置法」に基づく「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」が変更され、気象庁は南海トラフ地震臨時情報等を発表することとなった。
3.情報の発表
南海トラフ沿いでプレートの固着状態に通常とは異なる変化が観測されたときには、気象庁は南海トラフ地震臨時情報を発表する。臨時情報には、(1)調査中、(2)調査終了、(3)巨大地震注意、(4)巨大地震警戒 の4つがある。本年8月8日には、まず(1)が出て、調査の結果(3)が出た。どのような事象が観測されたら情報を発表するかの基準は「南海トラフ地震防災対策推進基本計画」で予め定められ、例えば、気象庁のウエッブページ等で公表されている(https://www.data.jma.go.jp/eqev/data/nteq/info_criterion.html)。今回は、まず、監視領域内(図1の黄枠内)で気象庁M6.8以上 の地震が発生したため「調査中」を発表し、調査の結果は、「巨大地震注意」の発表条件である「監視領域内において、Mw7.0以上の地震が発生したと評価した場合(巨大地震警戒に該当する場合は除く)」に相当した。
4.おわりに
今回の情報は、予め定められた手続き通りに発表された。しかし、この情報の意味を社会が正しく理解して、適切な防災行動がとられたかについては、今後の調査と議論を待たなければならない。2019年に本情報の仕組みが制定されて初めて出された効果についての検証を続ける必要がある。