[S23P-04] Source process of the 2024 Hyuga-nada earthquake deduced from strong motion records
2024年8月8日、日向灘において気象庁マグニチュード7.1の地震が発生した。この地震は北東-南西に走向を持つ逆断層型の地震(F-netモーメントテンソル(MT)解、防災科研)である。震源の深さが31.22 km(気象庁)とプレート境界の深さと整合的なであることと低角逆断層のメカニズムであることを考慮すると、プレート境界面上で発生した地震であると考えられる。本研究では、この地震の震源過程を推定するため強震波形を用いた震源インバージョン解析を行った。
本解析においては、K-NET観測点10点の地表記録とKiK-net観測点5点の地中記録の計15観測点を利用した。観測された加速度波形は積分した後0.05–0.5 Hzのバンドパスフィルタを適用し、5 Hzにダウンサンプリングした。解析に用いるタイムウィンドウはS波走時の0.5秒前から25秒間とした。震源断層は42 km×33 kmの矩形断層とし,破壊開始点は気象庁震源(北緯31.7382度、東経131.7232度、深さ31.22 km)とした。走向、傾斜はF-net MT解のうち低角逆断層の節面に従いそれぞれ219度、19度とした。
本研究ではマルチタイムウィンドウ法(Olson and Apsel, 1982; Hartzell and Heaton, 1983)により震源過程の推定を行った。本手法においては、断層すべりを時空間方向に離散化し、断層面上で直交する二つのすべり方向成分に分解することで、時空間の断層すべり分布とすべり方向を線形の逆問題として解く。空間方向には、震源断層面を3 km×3 kmの小断層に格子状に分割することで離散化した。時間方向には、1.2秒幅のスムーズドランプ関数を0.6秒おきに8個並べることで、各小断層に5.4秒間すべりを許した。各小断層において破壊を開始可能な時刻は、破壊開始点から2.8 km/sで同心円状に仮想の破壊フロントが進展した場合の破壊フロントの到達時刻とした。すなわち、各小断層における破壊は仮想破壊フロントの到達時刻から5.4秒間に限定される。
本研究では、一次元地震波速度構造を仮定して、離散化波数積分法(Bouchon, 1981)と反射・透過係数行列法(Kennett and Kerry, 1979)により理論的に計算されるグリーン関数を用いた。小断層内部における破壊伝播の効果を考慮するために、各小断層内に25個の点震源を等間隔で配置した上で、それぞれの点震源についてグリーン関数を計算し、一定の重みにおいて合成したものを各小断層のグリーン関数とした。ここでは藤原・他(2009)による三次元地下構造モデルの各観測点直下の地下構造を観測点ごとに一次元速度構造として設定した。KiK-net観測点については速度検層による速度構造も考慮している。
インバージョンにおいては、時空間的な断層すべり分布と各小断層のグリーン関数から合成される理論波形と観測波形の残差が最小になるように、線形の最小二乗法を解く。ここでは、非負の拘束条件を適用した最小二乗法(Lawson and Hanson, 1974)を用いた。そのため、すべり角はF-net MT解のすべり角である96度から±45度の41度から131度の間に限定された。また、時空間のスムージングを導入し(Sekiguchi et al., 2000)、その強さは赤池ベイズ情報量規準(Akaike, 1980)が最小になるように決定した。
震源インバージョン解析の結果、破壊開始点から南西に約10 kmの位置において最大3.7m程度の大すべり領域が推定された。また、2024年8月8日に発生した気象庁マグニチュード2.5以上の余震は断層浅部と北東部に多く位置しており、本震の主すべり領域とは重ならないことを確認した。破壊伝播に着目すると、主破壊は南西に向かってユニラテラルに伝播し、12秒程度で収束していた。このユニラテラルな破壊伝播という特徴は観測波形にも表れている。具体的に、破壊が進展した南西方向にあるMYZH14、MYZ016、MYZ018では他の観測点に比べてみかけの震源時間が比較的短く、これはディレクティビティ効果を反映していると考えられる。
本解析においては、K-NET観測点10点の地表記録とKiK-net観測点5点の地中記録の計15観測点を利用した。観測された加速度波形は積分した後0.05–0.5 Hzのバンドパスフィルタを適用し、5 Hzにダウンサンプリングした。解析に用いるタイムウィンドウはS波走時の0.5秒前から25秒間とした。震源断層は42 km×33 kmの矩形断層とし,破壊開始点は気象庁震源(北緯31.7382度、東経131.7232度、深さ31.22 km)とした。走向、傾斜はF-net MT解のうち低角逆断層の節面に従いそれぞれ219度、19度とした。
本研究ではマルチタイムウィンドウ法(Olson and Apsel, 1982; Hartzell and Heaton, 1983)により震源過程の推定を行った。本手法においては、断層すべりを時空間方向に離散化し、断層面上で直交する二つのすべり方向成分に分解することで、時空間の断層すべり分布とすべり方向を線形の逆問題として解く。空間方向には、震源断層面を3 km×3 kmの小断層に格子状に分割することで離散化した。時間方向には、1.2秒幅のスムーズドランプ関数を0.6秒おきに8個並べることで、各小断層に5.4秒間すべりを許した。各小断層において破壊を開始可能な時刻は、破壊開始点から2.8 km/sで同心円状に仮想の破壊フロントが進展した場合の破壊フロントの到達時刻とした。すなわち、各小断層における破壊は仮想破壊フロントの到達時刻から5.4秒間に限定される。
本研究では、一次元地震波速度構造を仮定して、離散化波数積分法(Bouchon, 1981)と反射・透過係数行列法(Kennett and Kerry, 1979)により理論的に計算されるグリーン関数を用いた。小断層内部における破壊伝播の効果を考慮するために、各小断層内に25個の点震源を等間隔で配置した上で、それぞれの点震源についてグリーン関数を計算し、一定の重みにおいて合成したものを各小断層のグリーン関数とした。ここでは藤原・他(2009)による三次元地下構造モデルの各観測点直下の地下構造を観測点ごとに一次元速度構造として設定した。KiK-net観測点については速度検層による速度構造も考慮している。
インバージョンにおいては、時空間的な断層すべり分布と各小断層のグリーン関数から合成される理論波形と観測波形の残差が最小になるように、線形の最小二乗法を解く。ここでは、非負の拘束条件を適用した最小二乗法(Lawson and Hanson, 1974)を用いた。そのため、すべり角はF-net MT解のすべり角である96度から±45度の41度から131度の間に限定された。また、時空間のスムージングを導入し(Sekiguchi et al., 2000)、その強さは赤池ベイズ情報量規準(Akaike, 1980)が最小になるように決定した。
震源インバージョン解析の結果、破壊開始点から南西に約10 kmの位置において最大3.7m程度の大すべり領域が推定された。また、2024年8月8日に発生した気象庁マグニチュード2.5以上の余震は断層浅部と北東部に多く位置しており、本震の主すべり領域とは重ならないことを確認した。破壊伝播に着目すると、主破壊は南西に向かってユニラテラルに伝播し、12秒程度で収束していた。このユニラテラルな破壊伝播という特徴は観測波形にも表れている。具体的に、破壊が進展した南西方向にあるMYZH14、MYZ016、MYZ018では他の観測点に比べてみかけの震源時間が比較的短く、これはディレクティビティ効果を反映していると考えられる。