日本地震学会2024年度秋季大会

講演情報

ポスター会場(1日目)

緊急セッション » S23. 2024年8月8日 日向灘の地震とその影響

[S23P] PM-P

2024年10月21日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (2階メインホール)

[S23P-05] 2024年8月8日に日向灘で発生した地震に伴う地殻変動

*矢来 博司1、宗包 浩志1、姫松 裕志1、小沢 慎三郎1 (1. 国土地理院)

はじめに
 2024年8月8日に日向灘でM7.1の地震が発生した。この地震に伴う地殻変動が電子基準点等のGNSS観測により観測された。本講演ではGNSS観測で得られた地震時および地震後の地殻変動と、地殻変動に基づき推定された震源断層モデルおよび余効すべりモデルについて報告する。

地震時の地殻変動と震源断層モデル
 地震に伴う地殻変動が電子基準点等により観測された。水平変動では震央に向かうように東~南東方向の変動、上下変動では震源域に近い場所で沈降が見られた。震央に最も近い宮崎観測点で東南東方向に約14cmの変動、約8cmの沈降が観測された。
 地震時の地殻変動に基づき、震源断層モデルを推定した。推定は矩形一様すべりの断層(矩形断層モデル)と、プレート境界面でのすべり分布(すべり分布モデル)の2種類のモデルで行った。
 矩形断層モデルでは、MCMC法で各パラメータを推定した。断層の長さと幅を1:1に近づくように拘束した。推定された断層面は、震源分布と概ね整合している。また、Hirose et al.(2008)のフィリピン海プレート境界面とも良く整合している。推定された断層長(幅)は約25km、すべり量は約2mで、剛性率を40GPaと仮定するとMw7.1と求まった。
 すべり分布モデルでは、プレート境界面を5km四方の小断層に分割し、すべり方向とすべり量を推定した。矩形断層モデルと同様に震央付近ですべりが推定され、最大すべり量は約2mとなった。
 この付近では1996年10月と12月にM6.6の地震が発生している。Yagi et al.(1999)による地震波形から推定されたすべり分布と比較すると、今回の地震に伴うすべりは1996年の2つの地震のすべり域と隣接している。

余効変動と余効すべり
 今回の地震後、震源域周辺で余効変動と考えられる東~東南東方向の地殻変動が観測されている。変動の大きさは、地震後の1か月間で最大2cm程度に達している。変動は地震後からゆっくりと進行し、時間経過と共に鈍化してきている。余効変動が見られる観測点は震源域周辺に限られ、時間が経過しても変動範囲には大きな変化は見られていない。
 余効変動が全てプレート境界面でのすべりに起因すると仮定して、余効すべり分布の推定を行った。地震時変位を推定して時系列データから除去し、時系列上に余効変動のみが残る形にして時間依存インバージョンで解析を行った。解析の結果、本震震央付近にすべりが推定された。8月末までの最大すべり量は約12cm、主要なすべり域のMwは6.7となった。モーメントの時間変化を見ると、地震直後に急激に増加した後、やや緩やかになりつつ、8月末の時点では継続している。
 この付近では1~2年程度の間隔で長期的SSEが発生している。また、1996年の10月と12月の地震後には顕著な余効変動が観測され、余効すべりが推定されている(例えばYarai and Ozawa, 2013)。これらと今回推定された余効すべりの位置関係を比較すると、1996年の地震後の余効すべりは、震央よりも深い側にすべりの中心が位置し、すべりの大きい領域が長期的SSEのすべり域と重なるのに対し、今回の地震後の余効すべりは8月末までの時点では震央よりも浅い側にすべりの中心が位置し、長期的SSEのすべり域でのすべりは顕著ではない。但し、今後、長期的SSEの領域でのすべりが大きくなる可能性もあり、継続的なモニタリングが必要と考えられる。