[PD021] 働く女性の職場ストレスの構造とキャリア動機に関する研究
キーワード:働く女性, 職場ストレス, キャリア動機
1.背景と目的
近年,急激なグローバル化や,世界経済の不安定さの中で日本企業が置かれている状況は厳しい。中でも,少子高齢化の影響もあり,男女を問わず優秀人材の確保は大きな課題であるが,特に女性の活用は進んでいない。そこで,本研究では,働く女性の職場ストレスの構造とキャリア動機の関係を明らかにすることを目的とした。
2.研究
2.1. 方法
日本国内で就業中の成人に対し,職場ストレスとキャリア動機に関する項目58項目(全体に対する質問43項目,既婚者に対する質問9項目,子供のある人に対する質問6項目)の質問紙を作成し,REASによるオンライン調査を実施した。235名(男性83名,女性152名,平均年齢38.95歳(SD=9.55歳)から有効回答を得た。
3. 結果
因子分析(最尤法,プロマックス回転)の結果,4因子が抽出され,「仕事の専門性」(α=.96),「職場の男女差」(α=.93),「職場の人間関係」(α=.88),「ソーシャルスキル」(α=.71)と命名した。
性別と年代別に2要因分散分析を行った結果,交互作用が有意傾向であった(F(3,227)=2.30, p<.10)。単純主効果は40代と50代以上で,女性のほうが男性より有意に高かった(F(1,227)=10.69, p<.01) (F(1,227)=5.81, p<.05)。また,性別と事業所規模別では,事業所規模が1000名以上の大規模事業所で,男性のほうが女性より有意に高かった(F(1,229)=4.49, p<.05)。女性の雇用形態別では,「職場の人間関係」と「ソーシャルスキル」に有意差があった。HSD法による多重比較の結果「職場の人間関係」は,正規雇用のほうが非正規雇用より高く(F(2,149)=2.99, p<.05),パート・アルバイトが非正規雇用よりも高かった。「ソーシャルスキル」は,正規雇用,非正規雇用のほうがパート・アルバイトより有意に高かった(F(2,149)=4.36, p<.05)。また女性の学歴別では,「職場の人間関係」において,大学・大学院卒のほうが短大・専門学校卒より有意に高い傾向があった(F(2,149)=2.99, p<.10)。
4.考察
働く女性の職場ストレスとキャリア動機には,仕事の専門性が関係しており,仕事の専門職化が女性のキャリア動機を上げる可能性が示された。また,40代と50代以上の女性は,男性よりも職場で男女の差を感じていることがわかった。加えて1000人以上の大規模事業所より規模の小さいほうがキャリア展望を持ちやすいことから働きやすい組織構造が見えてくると考えられる。さらに,パート・アルバイトの満足度が高いことから,女性が男性と対等にキャリアアップを目指す働き方の中にも,この要素を取り入れることで女性の活躍の場が広がる可能性があることが示唆された。
少子高齢化が進み全員参加の労働が求められる中,20年前に実施された若林ら(1991)の研究を支持する内容が多かったことから,女性の働き方には課題を残していることがわかる。
今後,働く女性のキャリア動機を高める方法の検討が課題である。
引用文献
若林満・金井篤子・佐野幸子(1991). 働く女性のキャリア発達とストレスに関する研究, Bulletin of the Education, Nagoya University vol.38, 203-220.
内閣府(2013).仕事と生活の調和の実現にむけて
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/
近年,急激なグローバル化や,世界経済の不安定さの中で日本企業が置かれている状況は厳しい。中でも,少子高齢化の影響もあり,男女を問わず優秀人材の確保は大きな課題であるが,特に女性の活用は進んでいない。そこで,本研究では,働く女性の職場ストレスの構造とキャリア動機の関係を明らかにすることを目的とした。
2.研究
2.1. 方法
日本国内で就業中の成人に対し,職場ストレスとキャリア動機に関する項目58項目(全体に対する質問43項目,既婚者に対する質問9項目,子供のある人に対する質問6項目)の質問紙を作成し,REASによるオンライン調査を実施した。235名(男性83名,女性152名,平均年齢38.95歳(SD=9.55歳)から有効回答を得た。
3. 結果
因子分析(最尤法,プロマックス回転)の結果,4因子が抽出され,「仕事の専門性」(α=.96),「職場の男女差」(α=.93),「職場の人間関係」(α=.88),「ソーシャルスキル」(α=.71)と命名した。
性別と年代別に2要因分散分析を行った結果,交互作用が有意傾向であった(F(3,227)=2.30, p<.10)。単純主効果は40代と50代以上で,女性のほうが男性より有意に高かった(F(1,227)=10.69, p<.01) (F(1,227)=5.81, p<.05)。また,性別と事業所規模別では,事業所規模が1000名以上の大規模事業所で,男性のほうが女性より有意に高かった(F(1,229)=4.49, p<.05)。女性の雇用形態別では,「職場の人間関係」と「ソーシャルスキル」に有意差があった。HSD法による多重比較の結果「職場の人間関係」は,正規雇用のほうが非正規雇用より高く(F(2,149)=2.99, p<.05),パート・アルバイトが非正規雇用よりも高かった。「ソーシャルスキル」は,正規雇用,非正規雇用のほうがパート・アルバイトより有意に高かった(F(2,149)=4.36, p<.05)。また女性の学歴別では,「職場の人間関係」において,大学・大学院卒のほうが短大・専門学校卒より有意に高い傾向があった(F(2,149)=2.99, p<.10)。
4.考察
働く女性の職場ストレスとキャリア動機には,仕事の専門性が関係しており,仕事の専門職化が女性のキャリア動機を上げる可能性が示された。また,40代と50代以上の女性は,男性よりも職場で男女の差を感じていることがわかった。加えて1000人以上の大規模事業所より規模の小さいほうがキャリア展望を持ちやすいことから働きやすい組織構造が見えてくると考えられる。さらに,パート・アルバイトの満足度が高いことから,女性が男性と対等にキャリアアップを目指す働き方の中にも,この要素を取り入れることで女性の活躍の場が広がる可能性があることが示唆された。
少子高齢化が進み全員参加の労働が求められる中,20年前に実施された若林ら(1991)の研究を支持する内容が多かったことから,女性の働き方には課題を残していることがわかる。
今後,働く女性のキャリア動機を高める方法の検討が課題である。
引用文献
若林満・金井篤子・佐野幸子(1991). 働く女性のキャリア発達とストレスに関する研究, Bulletin of the Education, Nagoya University vol.38, 203-220.
内閣府(2013).仕事と生活の調和の実現にむけて
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/