日本教育心理学会第56回総会

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ポスター発表 PD

(5階ラウンジ)

2014年11月8日(土) 10:00 〜 12:00 5階ラウンジ (5階)

[PD049] 5因子性格特性とプロアクティヴ・コーピングの関連

谷伊織1, 川島一晃2, 天谷祐子3 (1.東海学園大学, 2.三重大学, 3.名古屋市立大学)

キーワード:ビッグファイブ, プロアクティブコーピング

性格特性の5因子モデルはパーソナリティ特性を包括的に表現するモデルとして多くの領域で用いられており、各国で行われている大規模縦断研究などを通してその研究知見は蓄積されつつある。その結果、パーソナリティ変数は実にさまざまな結果変数を長期にわたって安定して予測することが示されるようになり、その成果よりさまざまな不適応や問題行動を予防したり、早期介入することが期待されるようになった(高橋・山形・星野, 2011)。特に、メンタルヘルスの領域においては様々な精神的健康の問題と関連することが示されているため、心理的な健康の増進のために一定の役割を果たすことが可能であると考えられる。
パーソナリティ特性がメンタルヘルスの問題と関連する一つの要因であることに対し、メンタルへルスの問題を低減させるために重要な概念がコーピングであろう。例えば、あるパーソナリティ特性が抑うつを高めるのであれば、その特性が高い者のコーピングスキルを高めることによって早期支援や介入を行うことが期待できるだろう。また、そもそもパーソナリティ特性がコーピングスキルと関連していることも考えられる。
さて、近年のコーピング研究の中で、Schwarzer(2000)によって「挑戦的な目標や個人的成長を促進させるための資源の構築に関する努力」と定義されたプロアクティヴ・コーピングが注目されている。このプロアクティヴ・コーピングは、困難を成長に結びつける点で、有意義な日常に反映される具体的な対処行動と捉えられている。あるパーソナリティ特性が長期的な観点からメンタルヘルスの問題と関わっているのであれば、リスクが高い者は日常に用いることができるコーピングスキルを高めることが有益であり、その観点において、プロアクティヴ・コーピングは効果が高いと考えられる。そこで、本研究においては5因子パーソナリティ特性とプロアクティヴ・コーピングの関連について検討する。
方法
調査協力者 東海地方の大学生808名(男性373名・女性433名・不明7名)を対象として、質問紙調査を行った。調査は講義時間を利用し、一斉に実施した
尺度 ①Proactive Coping Inventory日本語版(PCI-J)(Takeuchi & Greenglass, 2004):52項目、②Big Five尺度(和田, 1996):60項目。
結果
各尺度について、尺度得点を算出し、尺度間の相関係数を算出した(table 1)。その結果、能動的コーピングは、「神経症傾向」との間に負の相関が見られ、それ以外との間には正の相関が認められた。内省的コーピングは、「外向性」「経験への開放性」「勤勉性」「協調性」との間に正の相関、計画的コーピングは「外向性」「経験への開放性」「勤勉性」「協調性」と正の相関、予防的コーピングは、各性格特性との間に正の相関、行動面のサポート模索は、「外向性」「神経症傾向」「勤勉性」「協調性」との間に正の相関、情緒面のサポート模索は、「外向性」「勤勉性」「協調性」と正の相関が認められた。
考察
5因子パーソナリティ特性とプロアクティヴ・コーピングの間には各因子において特徴的な相関関係が認められた。特に、「外向性」「経験への開放性」「勤勉性」との間には比較的高い相関関係が見られ、これらの性格特性が高いことがプロアクティブな対処行動を促進している可能性が示唆された。