[PF031] 習熟度の低い学習者の内発的動機づけと学習への取り組みを高める研究
キーワード:内発的動機づけ
背景と目的
自己決定理論(self-determination theory,Deci & Ryan, 1985, 2002,以降SDTと略記)では内発的動機づけを高める要因として,3つの心理欲求(「自律性の欲求」(the need for autonomy),「有能性の欲求」(the need for competence),「関係性の欲求」(the need for relatedness))を提示している。SDTを英語教育に応用することで,心理欲求の充足によって学習者の内発的動機づけを高める教育実践が可能になる。本論では,SDTの応用研究の一環として,習熟度の低い学習者の内発的動機づけと英語学習への取り組みをSDTに基づいた教育実践によって高める試みを行う。
方法
【調査協力者】調査協力者は工学系の学部に所属する日本人大学生2年生45名(男子43名,女子2名)である。英語の習熟度は,ACEプレイスメントテストでM = 150.09である。この習熟度の学生は,英検3級程度の学力が身についておらず,TOEICスコアでは340点程度である(英語運用能力評価協会,2006)。つまり,調査協力者は中学生3年生程度の学習内容が身についておらず,英語での相互コミュニケーションは不可能な状態である。TOEICの理工農学系の大学1年生の平均点は402点である(国際ビジネスコミュニケーション協会,2012)ことからも,調査協力者の習熟度が大学1年生としては低い水準にあると言えよう。
【手続き】調査は大学の共通教育の英語科目の授業の一環として行った。15週の授業の内,1週目,8週目,15週目の計3回で質問紙調査を行った。
【授業内容】授業は週に1回90分のペースで,スピーキングを中心とした科目であった。その授業の中に,3欲求を満たす仕組みを組み込んだ。SDTでは内発的動機づけを高めるにはすべての欲求を満たす必要性を示しているが,本論の調査協力者は習熟度が極めて低いため,英語学習の成功経験をほとんど持っておらず,学習への自信を失っている点を考慮し,有能性の欲求の充足に重点を置きながら,3欲求を満たす試みを行った。
【測定】3つの心理欲求,及び内発的動機づけの測定には田中(2014)の質問紙を用いた。内発的動機づけは特性レベルを5項目,英語授業レベルを4項目,3欲求は各4項目,取り組みについては,「英語の授業では,集中して取り組んでいる」などの3項目を用いて測定を行った。
結果
記述統計量,及び1要因分散分析の結果,調査協力者の3つの心理欲求は介入によって5%水準で有意に上昇していた。次に,内発的動機づけに関して,特性レベルについてはほぼ現状維持であったが,英語授業レベルの平均値は大きく上昇し,5%水準で有意であった(F (1.69, 74.43) = 19.64, p = .00, partialη2 = .31)。同様に,取り組みに関しても5%水準で有意な上昇がみられた(F (2, 88) = 20.66, p = .00, partialη2 = .32)。
自己決定理論(self-determination theory,Deci & Ryan, 1985, 2002,以降SDTと略記)では内発的動機づけを高める要因として,3つの心理欲求(「自律性の欲求」(the need for autonomy),「有能性の欲求」(the need for competence),「関係性の欲求」(the need for relatedness))を提示している。SDTを英語教育に応用することで,心理欲求の充足によって学習者の内発的動機づけを高める教育実践が可能になる。本論では,SDTの応用研究の一環として,習熟度の低い学習者の内発的動機づけと英語学習への取り組みをSDTに基づいた教育実践によって高める試みを行う。
方法
【調査協力者】調査協力者は工学系の学部に所属する日本人大学生2年生45名(男子43名,女子2名)である。英語の習熟度は,ACEプレイスメントテストでM = 150.09である。この習熟度の学生は,英検3級程度の学力が身についておらず,TOEICスコアでは340点程度である(英語運用能力評価協会,2006)。つまり,調査協力者は中学生3年生程度の学習内容が身についておらず,英語での相互コミュニケーションは不可能な状態である。TOEICの理工農学系の大学1年生の平均点は402点である(国際ビジネスコミュニケーション協会,2012)ことからも,調査協力者の習熟度が大学1年生としては低い水準にあると言えよう。
【手続き】調査は大学の共通教育の英語科目の授業の一環として行った。15週の授業の内,1週目,8週目,15週目の計3回で質問紙調査を行った。
【授業内容】授業は週に1回90分のペースで,スピーキングを中心とした科目であった。その授業の中に,3欲求を満たす仕組みを組み込んだ。SDTでは内発的動機づけを高めるにはすべての欲求を満たす必要性を示しているが,本論の調査協力者は習熟度が極めて低いため,英語学習の成功経験をほとんど持っておらず,学習への自信を失っている点を考慮し,有能性の欲求の充足に重点を置きながら,3欲求を満たす試みを行った。
【測定】3つの心理欲求,及び内発的動機づけの測定には田中(2014)の質問紙を用いた。内発的動機づけは特性レベルを5項目,英語授業レベルを4項目,3欲求は各4項目,取り組みについては,「英語の授業では,集中して取り組んでいる」などの3項目を用いて測定を行った。
結果
記述統計量,及び1要因分散分析の結果,調査協力者の3つの心理欲求は介入によって5%水準で有意に上昇していた。次に,内発的動機づけに関して,特性レベルについてはほぼ現状維持であったが,英語授業レベルの平均値は大きく上昇し,5%水準で有意であった(F (1.69, 74.43) = 19.64, p = .00, partialη2 = .31)。同様に,取り組みに関しても5%水準で有意な上昇がみられた(F (2, 88) = 20.66, p = .00, partialη2 = .32)。