[PE18] 学習における動機づけの増減に関する素人理論IX
動機づけ増減認識のタイプと動機づけ変数
キーワード:素人理論, 認識, 動機づけ
前件(押尾他, 2018)では,動機づけの増減認識の変数を用いてクラスター分析を行い,4タイプの傾向を見出した。本件では,前件で提案された4タイプごとに,既存の動機づけ理論の変数の得点分布が異なるのかを明確にする。
方 法
参加者と分析手続き
前件(加藤他, 2018; 押尾他, 2018)と同様の大学生98名であった。各タイプの特徴を明確にするために,既存の動機づけ理論の各変数の得点を各タイプで分散分析を行った。各タイプ・得点ごとのTable 2に示す。
結 果
まず達成動機について,成功願望では各タイプで差がみられなかった。次に,失敗回避ではヒラヒラ型(d = 0.37)およびズンズン型(d = 0.41)の方がギチギチ型よりも,その得点が高かった。
次に達成目標について,習得接近目標ではヒラヒラ型の方がビクビク型よりも得点が高かった(d = 0.33)。習得回避目標も,習得接近目標と同じく,ヒラヒラ型の方がビクビク型よりも得点が高かった(d = 0.33)。遂行接近目標では各タイプで差がみられなかった。遂行回避目標では,ズンズン型の方がビクビク型よりも得点が高かった(d = 0.31)。
最後に自律的学習動機について,内的調整ではズンズン型よりもギチギチ型の方が得点が高かった(d = 0.41)。同一化的調整ではヒラヒラ型の方がギチギチ型よりも,その得点が高かった(d = 0.32)。取り入れ的調整と外的調整では各タイプで差がみられなかった。
考 察
まず,増減認識の傾向も類似していたヒラヒラ型とズンズン型であるが,本研究で取り上げた動機づけ変数では直接の差はみられなかった。両群ともに,動機づけの増減が学習者自身の都合や気分に起因することが共通しているために,本研究で取り上げた動機づけ変数では差がみられなかったと考えられる。
また,ギチギチ型とビクビク型との間にも差がみられなかった。どちらの群も動機づけ増加認識の得点が低かった。既存の動機づけ理論は,ある動機づけが高いことでどのような学習行動が起こりうるか予測している。そのため,両群では減少認識にその特徴の差異がみられるが,既存の動機づけ理論ではその差が示されなかった可能性がある。
総合考察
本研究は動機づけの増減認識の各変数と既存の動機づけ変数との間の関係性を明確にしようとした。各認識と動機づけの変数との相関関係では,動機づけの増減に関する認識の質とその量ごとにどのような動機づけが高い,あるいは低い傾向にあるのかといった知見を示した。また,学習者はどのような認識を高くもつのか,そして,そのタイプによって動機づけ変数が異なるのかを明確にした。これにより,動機づけの増減に関する認識の特徴について新たな知見を示したと考える。
ただし,サンプルサイズが小さかったことに起因する問題が挙げられる。まず,確認的因子分析やカテゴリー分析の結果をもとに考察したが,その結果が適切な解によるものか指摘されるだろう。また,カテゴリー分析は恣意的であるために,近年では潜在混合分布モデルの適用が望ましいとされている。この点についてもサンプルサイズが小さいことには適切な解が求められなくなる可能性があるために,追加の調査が必要であろう。
方 法
参加者と分析手続き
前件(加藤他, 2018; 押尾他, 2018)と同様の大学生98名であった。各タイプの特徴を明確にするために,既存の動機づけ理論の各変数の得点を各タイプで分散分析を行った。各タイプ・得点ごとのTable 2に示す。
結 果
まず達成動機について,成功願望では各タイプで差がみられなかった。次に,失敗回避ではヒラヒラ型(d = 0.37)およびズンズン型(d = 0.41)の方がギチギチ型よりも,その得点が高かった。
次に達成目標について,習得接近目標ではヒラヒラ型の方がビクビク型よりも得点が高かった(d = 0.33)。習得回避目標も,習得接近目標と同じく,ヒラヒラ型の方がビクビク型よりも得点が高かった(d = 0.33)。遂行接近目標では各タイプで差がみられなかった。遂行回避目標では,ズンズン型の方がビクビク型よりも得点が高かった(d = 0.31)。
最後に自律的学習動機について,内的調整ではズンズン型よりもギチギチ型の方が得点が高かった(d = 0.41)。同一化的調整ではヒラヒラ型の方がギチギチ型よりも,その得点が高かった(d = 0.32)。取り入れ的調整と外的調整では各タイプで差がみられなかった。
考 察
まず,増減認識の傾向も類似していたヒラヒラ型とズンズン型であるが,本研究で取り上げた動機づけ変数では直接の差はみられなかった。両群ともに,動機づけの増減が学習者自身の都合や気分に起因することが共通しているために,本研究で取り上げた動機づけ変数では差がみられなかったと考えられる。
また,ギチギチ型とビクビク型との間にも差がみられなかった。どちらの群も動機づけ増加認識の得点が低かった。既存の動機づけ理論は,ある動機づけが高いことでどのような学習行動が起こりうるか予測している。そのため,両群では減少認識にその特徴の差異がみられるが,既存の動機づけ理論ではその差が示されなかった可能性がある。
総合考察
本研究は動機づけの増減認識の各変数と既存の動機づけ変数との間の関係性を明確にしようとした。各認識と動機づけの変数との相関関係では,動機づけの増減に関する認識の質とその量ごとにどのような動機づけが高い,あるいは低い傾向にあるのかといった知見を示した。また,学習者はどのような認識を高くもつのか,そして,そのタイプによって動機づけ変数が異なるのかを明確にした。これにより,動機づけの増減に関する認識の特徴について新たな知見を示したと考える。
ただし,サンプルサイズが小さかったことに起因する問題が挙げられる。まず,確認的因子分析やカテゴリー分析の結果をもとに考察したが,その結果が適切な解によるものか指摘されるだろう。また,カテゴリー分析は恣意的であるために,近年では潜在混合分布モデルの適用が望ましいとされている。この点についてもサンプルサイズが小さいことには適切な解が求められなくなる可能性があるために,追加の調査が必要であろう。